ホストに月200万円使う女は、どんな接客を受けるのか? 究極の接客「本営」の実態

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2019年03月23日 20:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

Photo by mrhayata from flickr

 ホストにハマりすぎている女たち――通称“ホス狂い”。「ホストに多額のカネを貢ぐ女」というイメージだけが横行する中、外の世界からはわからない彼女たちの悲喜劇がある。「ホストにハマらなかったら、今頃家が建っていた」という、新宿・歌舞伎町では名の知れたアラサー元風俗嬢ライター・せりなが、ホス狂いの姿を活写する。

 以前の記事で月200万円使うホス狂いの話をした。実はホス狂いの世界では、石を投げれば3ケタ万円プレイヤーにあたるとも言われているので、さほど珍しい話でもなかったりする。

 しかし、ホストクラブへ行かない人にとっては驚きがあったようだ。

「そんなに大金を使ったら、お店ではどんな接客をしてもらえるんですか?」

 こうした質問をいくつかいただいた。盲点であった。確かに、200万円も使っていれば、蝶よ花よの接客フルコースを受けられるような気がする。なんにせよ、エグゼクティブな扱いの一つくらいありそうだ。

 しかし、現実はそうではない。むしろ大金を使うほど担当ホストは売れっ子になる。そして新規客の接客に忙しくなり、自分はほったらかし……なんていうことも珍しくはない。接客フルコースどころか、新人ホストの会話の練習台にされたりする。ホス狂い界隈で有名な女の子は、SNSでそれを「どれだけ都合よくなれるか選手権」と自虐的に語っていた。

 しかし、自虐ができるのは、その状況をある程度、受け入れているということでもある。なぜ、お金をたくさん払っているのに「都合よく」されることを受け入れるのか。理由は簡単である。

 「お店の中」で接客されているうちは、まだまだホス狂い検定3級なのだ。大金を注ぎ込んだホストの接客の本領は「お店の外」でこそ発揮される。つまり、「お店の外で丁重に接してもらえれば、お店で都合よく扱われても受け入れられる」というわけだ。今回は事例を紹介しながら「ホストの究極の接客」について説明しよう。
というか、テーマの開示が遅すぎである。ホス狂いはオタク気質なので前置きが長い。

 友人アミ(仮名)は、私のSMクラブ時代の同僚で、ほどほどにホスト遊びを楽しむ若い女の子“だった”。いつしか彼女も、ばっちりハマる担当と出会い、いつの間にかホス狂いへの階段をかけ上がっていた。階段の登り方は、これまでの連載で語ってきたので割愛する。興味のある人はぜひバックナンバーを読んでほしい。

 そして、彼女が毎月50万円ほどを使う立派なホス狂いになったとき、あるひとつの「変化」が訪れた。そう、店外デートが増えたのである。字面でだいたいのニュアンスはわかると思うが、一応、定義をしておく。「店外デート」とはホストクラブ以外の場所、例えばディズニーランドなど、店が介在しない場所へ一緒に外出することを指す。

 ホストの接客形態には、ほかにもいくつか種類がある。例えば、「同伴」。店へ行く前に一緒に食事などをともにする営業方法である。あるいは、「アフター」。これは、店の営業終了後、一緒に過ごす営業方法だ。しかしこれは両方とも「お店に行くこと」とセットになっている。とにもかくにも、諭吉を握りしめて、お店に行くことが前提だ。

 しかし、「店外デート」では閉店の鐘は鳴らない。シンデレラの魔法は解けないのである。少なくとも、その日のうちは。ほかのホストも、ほかのお客もいない。二人っきりの時間を過ごすことができるのだ。もっと身もふたもない言い方をすると、ホストのプライベート時間を独占できる。このように、店での接客は前哨戦に過ぎず、「ホストの究極の接客」は、この「店外デート」から本番開始と言っても過言ではない。

 ホス狂い一般論を確認したところで、アミの話に戻ろう。店外デートが増えてしばらくたった頃、アミに次の「変化」が訪れた。「店外デート」が「お泊まり旅行」へとレベルアップしたのだ。もちろん、その頃には担当ホストへ使う金額もレベルアップしている。ちなみに、店外デートや旅行に関しては、ホストが全額払っていたそうだ。

 意外に思う読者も多いかもしれない。しかし、ある優秀なホストはこういっていた。

「客が店に払った金額の10%以上をリターンせよ。それが優秀なホストだ」

 通常、ホストの給料は指名客が使った金額の50%弱である。例えば、客が200万円使ったとすれば、ホストの給料は100万円ということになる。そして、優秀なホストは、200万円のうちの10%――つまり、20万円をお客への旅行やプレゼントに費やす。楽天ポイントよりも、はるかにお得な還元率だ。

 ホストに使うお金があれば、自分で旅行も行けるしプレゼントも買えるのでは。そういう指摘が聞こえてきそ……あーあー聞こえない、聞こえない。私たちは「プレゼントをもらう」という「体験」にお金を払っているのだ。たとえそれが、元は自分のお金であっても。

 ぴんとこない人もいるかもしれないが、要は、こういうことである。私たちは、ブランドバックがほしいんじゃなくて、ブランドバックを好きな人にもらうという体験を味わいたいのだ。だからこそ、旅行に行った次の日に、またホストクラブでシャンパンを開ける。「お金を使ったお礼」の「旅行のお礼」に「店に行く」のだ。ホス狂いにはホス狂いなりの論理があって、彼女たちの筋はしっかりと通っている。まるで永久機関である。

 というか、水商売の世界は、だいたいがこの論理で回っている。「究極の接客」とは、接客を意識させないことに尽きる。お礼、お礼、アンドお礼の世界だ。そして、私はそういう水商売の在り方を好ましく思っている。もちろん、ホス狂いの世界もだ。ここで忘れてはならないのは、ホストもまた水商売の世界の住人であり、その世界のルールを彼らは熟知している。ついでにいえば、ホストはそのルールに自ら進んで乗ろうとするホス狂いの気持ちなど、元より承知の上なのだ。ウォール街の住人も、リターンが期待できなければ、そもそも投資をしない。それと同じことだ。南無三。

 話を戻そう。アミと担当ホストの旅行先は箱根。伊豆。那須。伊香保。温泉街ばかりなのは、おそらくアミの担当の趣味だろう。そういう「お金を使ったお礼」が月1回くらいのペースで実施される。アマゾンだってしょっちゅう感謝祭をするので、それと同じ道理かもしれない。

 そんなこんなで、毎月の旅行が当たり前になった頃、アミに次の「変化」が訪れた。ある日担当からこう告げられたという。

「何もしてあげられないかもしれないけれど、付き合おう」

 ホストの本気接客の極み「本営」のスタートである。本営とは、「本命(彼女)営業」の略である。アミが担当ホストにとって「本当に本命かどうか」は問題を大変ややこしくするので、いまは置いておく。またどこかで機会があれば、書こうと思う。

「担当ホストと一緒に住むことになった」

 アミからそう聞かされたのは「本営」が始まってから3カ月後のことだった。そのころアミは毎月150〜200万円を安定して担当へと使うようになっていた。

 余談ではあるが、とある売れっ子ホストが「同時に3人までとは同棲できる」と豪語していた。普通に聞くと意味がわからないが、つまり、各家に週2日ずつ帰るのだそうだ。お客と過ごす時間を全て仕事と換算するのであれば24時間365日仕事をしているようなものである。リゲインもびっくりだ。

 アミが担当と週何日一緒にいたのかは定かではないが、ともかくアミは「同棲彼女」になった。旅行の頻度は減ったけれど、担当ホストの実家へも何度か行ったそうだ。同棲しているから、たとえお店で放置されても何の不満もない。そう彼女は語っていた。むしろ、「彼女」だからこそ、お店では多くを求めない。冒頭で語った「どれだけ都合よくなれるか選手権」はこうして毎夜開催される。

 そうしてホス狂い同士が戦っている間、担当ホストも、安心してまだ店外デートをしていない新規のお客に集中できるというわけだ。誰が考えたかは知らないが、よくできたシステムである。皮肉ではない。

 それからまたしばらくして、アミと担当ホストは「別れた」。一緒に暮らしているうちにお互いに不満が溜まっていたそうだ。つい先日アミに会ったが、今彼女はまた違うホストとの「店外デート」を楽しんでいる。

 このアミのエピソード。私の知っている「本営」のなかでは、始まりから終わりまで、割とオーソドックスな流れを踏んでいる。知り合って仲良くなり、二人きりで会う回数が増え、交際が始まる。一緒に住んで、いつか別れる。普通の恋人同士のような、接客だ。

 穿った見方をしなくとも、一般的な感覚で見れば、「はいはい、ただの営業営業」で片が付くエピソードだろう。でも、私はそう見たくはない。多くのホス狂いは「本営」つまり「営業」であるということなんてわかっている。ホス狂いは、そんなことは百も承知の上で「本気」でホストに狂うのだ。

 この「本営」の終わりだが、みなさんが想像するように、金の切れ目が縁の切れ目を地でいく世界なのかといわれれば、実はそうでもない。別れたからといって、エースではなくなったからといって、二度と顔も合わさないわけではないのだ。たまに連絡を取り合うこともあって、お互いの近況を確かめ合ったりする。どうだ元気にしているか? とお互いの体調を気にかけたりもする。たまに飲みに行って、今の「本営彼氏」について相談したり。もちろん、そこにシャンパンやら大金は介在しない。

 これを見て、なにかに似ていると思わないだろうか? そう、普通の別れたカップルと何も変わらないのである。なんなら、割と円満に関係を終了したカップルだ。ホストとホス狂いだって、実は堅気の彼氏・彼女の関係となんら変わりはしないのだ。少なくとも、私はそこに大きな違いを見いだせない。いや、わざわざ見いだす気もない。

せりな
新宿・歌舞伎町の元風俗嬢ライター。『マツコが日本の風俗を紐解く』(日本テレビ系)で、 現役時代のプレイ動画を「徹底した商業主義に支配された風俗嬢」 と勝手に流されたが、 ホストに貢いでいたのであながち間違いではない。その他、デリヘル経営に携わるなど、業界では知られた存在。 現在も夜な夜な歌舞伎町の飲み屋に出没している。
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【バックナンバー】
第1回:歌舞伎町の元風俗嬢が語る、愛しき“ホス狂い”たち――「滑稽だけど大真面目」な素顔
第2回:担当ホストに月200万円……OLから風俗嬢になった女が駆け上がった「ホス狂い」の階段
第3回:容姿や年齢より「使った金額」! ホス狂いたちが繰り広げる、担当ホストのエースをめぐる闘争
第4回:Twitterで「担当ホストの本命彼女」を暴露!! ホス狂い界隈を絶望させた“ある女の復讐劇”

このニュースに関するつぶやき

  • カネがある人は愉しめばよいよ。そしたらまた頑張って働けるだろ?ホステス狂いも同じだけど、遊びは遊びだから遊びを本気にしたらダメだよね。
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