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ネイリストに増える外国人「根性で資格取得」 苦労人に教えてもらった「日本のネイル」の魅力

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2019年03月24日 07:00  ウィズニュース

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写真取材させていただいた張さん。中国出身のネイリストです。
取材させていただいた張さん。中国出身のネイリストです。

 「日本の○○がすごい」という話題は尽きませんが、今にわかに注目されているのが「ネイル」です。実は、海外から日本のネイリストの資格をとる人が年々増えています。そこで中国から来日し「根性で」資格を取ったネイリストの1日に密着。真っ赤なマニキュアを塗られる男性に驚き、後輩への思いやりを忘れない気持ちに感動……。「日本のネイル」の魅力を、あらためて体験してきました。

【図解】海外からも注目「日本のネイル」 ネイリストに密着してみたら…

ネイリストに1日密着してみた
 突然ですが、あなたにとってネイルアートってどんな存在ですか? 最近は爪の保護のために男性の方も、爪の手入れをされている方もいるかもしれません。ただやはり、ネイルと聞くと女性の自己表現のひとつというイメージが強いです。

 お化粧、髪形、ファッション……どれも気にし始めたらキリがないほど、奥深い美の世界。ですが、ネイルはメンテナンスの必要性の高さから、更にハードルが高く感じられます。皿の大きさの割りにこぢんまりとした料理が載ってるレストランみたいな感じで、敷居が高いのです……。

 2015年時点で、ネイルサロンなどネイルサービスを行う施設は、全国で約2万4千店舗。NPO法人日本ネイリスト協会が発行している「ネイル白書2016-17」によると、2009年からの6年間で9千店ほど増え、約1.6倍に。着々と市場規模を広げています。

 これだけ浸透しているネイルとは、一体どんな世界なのでしょうか。

 筆者はもうすぐ30代。若さで解決できないことが増えるからこそ、普段の生活にプラスα、繊細なことをやってみたくなる年頃。せっかくなので、取材してみることにしました。

中国出身のネイリスト、張さん
 取材を快諾してくださったのが 2010年からお店を銀座に構えるラフィーネ銀座店さんです。そこで5年ほど働いている張宇さん(36)に密着させていただくことになりました。

 朝10時、待ち合わせの場所に張さんは笑顔で現れました。

ーー今日は1日よろしくお願いします

 「よろしくお願いします。日本語がうまくないところもあるので、ご迷惑をおかけしたらごめんなさい」


 聞けば張さんは中国出身。日本に来たのは2008年。ゲームクリエイターの夫が「日本で勉強したい」といい、一緒に来日したそうです。

 早速気になってしまうのが張さんの手元。すてきなネイルアートが施してありますが、まさか、これって自分でやってるんですか?

 「器用な人は自分でやれちゃうんですけど、さすがに私は左手ではできないです……」

 確かに左手でアートを施すのはは難しそう。お店の同僚の方にやってもらっているらしいです。というか、左手でもできちゃう人、すごくないですか……。

需要がある「日本の」ネイル
 東銀座駅からほど近い「ラフィーネ銀座店」。白を基調とした店内は、かわいらしい装飾とネイルアートのサンプルがずらりと並んでいます。

 このお店の店長である崔粉姫さんも中国出身。このお店には日本人のネイリストのほか、張さんのように中国出身の方や韓国出身のスタッフもいます。とってもグローバルなお店。でもどうして、日本で「ネイルアート」なのでしょうか。

 「日本のネイルは海外でも人気があるんですよ」と張さん。

ーーネイルアートは世界共通ですよね。でも、”日本の”って国で違いがあるんですか?

 「デザインやアートは海外でも技術は高いです。でも、アートがものすごく施されたネイルを普段からしたいですか?」

ーーう〜ん……。成人式とか結婚式とか、イベントのときだったらいいけど、仕事柄あまり派手なのはしたくないかも……

 「そうですよね。日本のネイルって、アートやデザインだけじゃないんです」

ーーどういうことでしょうか?

 「爪のケアです。ネイルって『爪に悪い』というイメージもありますが、爪が薄い人にとっては保護になりますし、アート前の下準備など含め、定期的にちゃんとケアしていくことで爪の健康にもつながるんです。日本のネイルはそんな『爪の健康』を大事にしていると感じます」

ーー確かに、ものすごいアートをしてもらうより、ケアをちゃんとしてもらった方がうれしいです

 「あとは、お店でのサービスですね。お客様にくつろいでもらえるような雰囲気づくりです。お飲み物や膝掛けをお出したり、お客様の個性に合わせたデザインを提案するためにそれぞれにカルテを作ったりしています」

ーーお客さんの生活に寄り添ったサービス、それが日本のネイルなのですね

ネイリストには家族の”物理的”な協力が必要?
 張さんによるとネイル業界は人手不足で、人材を育成することも重視されています。ここでも、国際化の流れを受けています。

 ネイリスト技能検定試験を主催する公益財団法人日本ネイリスト検定試験センターによると、外国語で試験を受ける人の数は増加傾向。英語、北京語で受験できる3級に、韓国語を追加したり、2級でも外国語受験を開始したりなど、門戸を広げています。

 ネイリストを育てるスクールも併設するラフィーネ銀座店では、この日、3人の中国出身の生徒さんが勉強に来ていました。それぞれ、技能検定試験での資格取得を目指しているそうです。

 実は張さんはこのスクール出身。試験に合格し、いまは生徒さんたちに教える立場です。中国語を織り交ぜながら、生徒さんにアドバイスしていきます。

 生徒さんは3人と聞いていましたが、この日参加しているのは4人。気になったのが、真っ赤なマニキュアを塗ってもらっている男性です。「あなたも生徒さんですか?」と聞くと、「いいえ、違います」。張さんに「彼は生徒の夫です」と教えてもらいました。

ーーパートナーに練習相手になってもらってるんですね

 「そうです。日々の練習はもちろん、試験にもパートナーにモデルとして一緒に来てもらう人は多いですね」

ーー試験も! 張さんもそうだったんですか?

 「そうですね。いつも夫に手伝ってもらっています」

ーー物理的に家族の協力が必要な仕事なんですね

 「本当にそうです。家族の協力があるからこそ、ネイリストができるんです」


 聞くと、モデル探しに苦労する人も多いそうです。ネイリストはひとりではなれない、周囲の人の協力と応援が必要なんですね。

 先ほど、モデルになっていた男性も、照れながらも「応援したい、ただそれだけの気持ち」と教えてくれました。

せっかくなのでやってもらおう
 張さんはどうして日本でネイリストになろうと思ったのでしょうか。爪がでこぼこしていることが気になって、ネイルから縁遠かった記者にも、「ちゃんとケアして、健康な爪にしていきましょうね」と声をかけてくれる優しい張さん。せっかくなので、ネイルを施してもらいながら、詳しく話を伺いました。

 張さんは中国の河北省出身。北京の近くで、冬は最高気温が零下になるほど寒い地域に住んでいました。中国で大学を出て、不動産関係の会社の秘書として働いていたそうです。

 夫婦ともに日本のアニメが大好き。ゲームクリエイターの夫の留学に際して、もともと興味があったヘアメイクを学ぼうと来日したそうです。最初は石川県にある、日本語学校に通いました。留学前に大学で日本語を勉強しましたが、実際来てみるとわからないことばかりで困ったといいます。

 「ラーメン屋でアルバイトしていたんですが、お客さんの言葉が聞き取れなくて、笑うしかできないんです。『すみません』と謝るばかりで、つらい毎日でした」

 ラーメン屋を経営する日本人夫婦の優しさとお店のまかないに助けられたと振り返ります。

ヘアメイクがだめでも……
 張さんは、約1年日本語学校に通った後、東京のヘアメイクの専門学校に入学しました。ところが、ここでも困ったことが。化粧品でアレルギーが出るようになり、肌が荒れてしまったそうです。

 「これは続けられない」と感じたとき、出会ったのが、ネイルアートでした。

 張さんはもともと勉強が終わったら中国に戻ろうと考えていましたが、この頃には、日本の生活にも慣れ、住み続けたいと思うようになっていたといいます。

 「日本で働きたいと思ったとき、私は日本の大学を出ている訳ではありません。企業の就職試験を受けて、中国人の私を選ぶだろうか、というのはずっと考えていました。技術を身につけられれば、チャンスが増えるはず」

 それから、ネイルアートを学んできました。ラフィーネのスクールから店舗のスタッフになる人はまだ多くないそうで、「頑張りました」と張さんははにかみます。

自分が困ったことを生徒に還元
 日本に来て一番困ったことは、「日本語だった」という張さん。現在は一部が外国語に対応している技能試験も、張さんが受けた当時は日本語のみ。何度も不合格を経験し、苦労したと話します。

 「いくら漢字があるからと言っても、ネイルは専門用語ばかりですからね……」

 そんな経験を糧に、いまはスクールに通う生徒のために日本語の過去問を中国語に翻訳するなどしているそうです。

 店長の崔さんは、張さんを「技術はもちろん、事務もしっかりこなして、人に好かれる」と大絶賛。ネイルを施しながら、張さんが言う「失礼致します」「お待ちください」が、他の日常会話と比べてとてもなめらかで、これまでの張さんの努力に思いを馳せました。

 ネイルケアとアートで2時間半ほど。あたたかい部屋の中で、ゆっくりとした時間が流れます。居心地の良さに、ついうとうとしそうに。お客さんの中には寝ちゃう人もいる、というのも納得です。

 ずっと手入れしていなかった私の爪ですが、きれいなアートを施してもらいました。写真撮影もお手の物。指の関節を曲げた状態で手のひらを上にして、両手のアートを見えるようにします。ネイルをしない私にとって、普段しないポーズです。全部の爪をきれいに写すのって、意外と難しい……。

 あっという間に、18時近く。張さんの勤務が終わる時間が近づいてきました。最後にネイリストに大切なことはなんですか、と聞くと、「興味と根性です」とにやり。

 「少しでも練習を怠るとすぐに技術が落ちてしまいます。やり続ける根性ですね。それに、仕込みなどは結構地味な作業もありますから。それでも、楽しいと思い続けられることです」

 1日を通して、張さんから出てくるのは前向きな言葉ばかり。1人の女性を通して、仕事の大切さを再認識しました。特に日本語で困った経験を生かして、生徒さんたちに還元しているところは尊敬します。張さん、1日ありがとうございました。

取材を終えて
 張さんにネイルを施してもらってから、私のネイル生活は始まりました。ネイルをしている状態で、自分で爪を切ると爪とネイルの間に雑菌が入りやすくなってしまいます。普段爪が短いので、伸びてきたら切りたくてうずうずしてしまうのではないかと思っていたのですが、一定期間過ぎると気にならなくなりました。

 今まででこぼこだった爪の表面がつるつるになって、触っているだけで心地良いです。それに、爪の感覚に注意を払うようになるので、これまでよりモノを丁寧に持つようになって、キーボードもちょっぴり優しく打つようになりました。周囲の人が「おっ、爪いいね」と言ってくれた日は上機嫌です。3週間も経つとネイルが体の一部のように感じるようになっていました。

 ちょっととっつきづらいと思っていたネイルの世界。日本のネイルの側面を知って、「小さなことを丁寧に」と、ちっぽけなことかもしれませんが、そんなことを改めて感じました。

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