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弁護士“余剰”加速、半数が年所得400万円以下…現行司法試験組は“豚バッジ”とバカにされ

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2019年03月24日 08:11  Business Journal

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Business Journal

写真「gettyimages」より
「gettyimages」より

 今期の冬ドラマは、いわゆる“弁護士もの”が豊富だった。『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)、『グッドワイフ』(TBS系)、『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)と毛色は違うものの、弁護士をメインに据えたストーリーが展開され、毎回ドラマのなかの弁護士たちは難易度や専門性の高い事件を鮮やかに解決し、華々しく活躍しているように見えた。しかし、現実はかけ離れている上に「貧困化」の危機も迫っているという。


●弁護士の半数が年間所得400万円以下?


「今、弁護士の1年当たりの所得の中央値は実に約400万円です。弁護士の半数が平均的サラリーマンを大きく下回る収入で働いていることになります」


 そう語るのは、弁護士の実態を取材したルポ『弁護士の格差』(朝日新書)を上梓したフリージャーナリストの秋山謙一郎氏だ。400万円という数字は、2014年に国税庁が発表した「所得種類別、所得金額」を分析して算出したものだという。


 実際、日本弁護士連合会(日弁連)が発行する『弁護士白書2015年版』の所得に関するアンケートによると、回答者3128人中666人が「年間所得200万円以上500万円未満」と回答している。さらに、「年間所得額200万円未満」が466人、「0円以下」は79人と、弁護士の厳しい現実は数字にも表れている。


「弁護士が高収入職業の代表格だったのは、せいぜい1990年代のバブル崩壊前後まで。2000年代に入ると所得は減り続けています。弁護士が“稼げるエリート”である時代は終わりを告げ、ともすればブラック企業並みの低所得になる可能性がある職業になっているのです」(秋山氏)


 弁護士のワーキングプア化が進んだ原因は、1999年の司法制度改革にある。


「99年から始まった司法制度改革によって、法曹人口拡充のための司法試験合格者の増員や日本版ロースクールである法科大学院の設置が行われました。この改革により、弁護士の数を爆発的に増やすことになったのです」(同)


 日弁連によると、50年に5827人だった弁護士人口は、以降ゆるやかな右肩上がりを続けていたが、99年の司法制度改革を境に急上昇。改革から20年もたたないうちに2倍以上になり、2018年3月現在、弁護士数は男女合わせて4万人を超える。


「年々増え続ける弁護士ですが、その市場は横ばい。今後、爆発的に需要が増える兆しも今のところありません。ベテランも若手も関係なくパイの奪い合いになっています。さらに、『弁護士白書2016年版』によると、弁護士人口は23年には約4万4000人、38年には約5万8000人と増加し続け、6万人を超えると予想されている。さらなる供給過多に陥ることは目に見えています」(同)


 弁護士が増えすぎた結果、なかには仕事を取れずに低所得を余儀なくされる人も出てきているのだ。


●弁護士余剰で就職すら難しい時代に


 弁護士余りの時代では、低所得どころか就職もままならない弁護士も出てきているという。


「“イソ弁”(居候弁護士)と呼ばれる、一般企業でいうところの正社員扱いで弁護士事務所に勤めるという雇用形態が少なくなり、完全歩合制で法律事務所の軒先を借りているだけの“ノキ弁”や、司法修習修了後に即独立する“ソクドク”などの非正規雇用が増えているんです」(同)


 ソクドクになるのは法律事務所に就職できなかった人だけではない。法律事務所の過酷な労働環境に耐えかねて退職、結果的に独立・開業するしかないケースもあるようだ。


「たとえば、朝7時から夜23時まで書面づくりに追われて心身のバランスを崩した新人弁護士や、徹底したマニュアル化によってひたすら弁護士の職印を押すだけという業務内容に絶望してソクドクになった人など、事情はさまざまでした」(同)


 いずれにせよ、司法修習終了後、法律事務所に就職、イソ弁として経験を積んで活躍……という弁護士の定番ルートをたどれない人が増えてきているのだ。


●深刻な新旧格差…“金バッジ”と“豚バッジ”


 さらに、弁護士間の格差は新人とベテランの間に生じる「司法制度格差」抜きには語れない。この格差を生んだのもまた、99年の司法制度改革だ。


「改革によって弁護士界に旧司法試験(旧司)組と新司法試験(新司)組という2つのバッジが生まれてしまった。ある警察官などは、留置場に接見に来た弁護士が旧司だと下手な対応ができない“金バッジ”、新司は怖くないから“豚バッジ”と区分けしていると聞きます」(同)


 一昔前は“新司”というだけで旧司組の弁護士にバカにされたり、顧客から敬遠されたりすることもあったという。いわゆる“新司組”が弁護士界で軽視されてしまうのは、なぜなのか。


「かつての旧司法試験は、合格率がおおむね3%といわれた難関でした。一方、制度改革後の新司法試験は、ここ数年の合格率がおおむね23%台。この合格率の開きから“新司”は実力が劣るとみなされ、現場で辛酸をなめることが少なくなかったと聞きます」(同)


 弁護士になれば社会的地位と高い収入を得られ、華々しい生活が待っているかと思いきや、その現実は想像以上に厳しいようだ。それにもかかわらず、弁護士になるまでの労力やコストは高止まりしている。


 弁護士になるには、平均しておよそ500万〜600万円ほど必要だといわれている。法科大学院に入学すれば学費が年間で120万円前後かかり、2年次、3年次となれば、それがかけ算式で増え、合計で平均200万〜300万円ほどが必要だ。司法試験予備試験や司法試験自体にも受験手数料がかかる上に、予備試験対策の予備校に通う場合も、また費用がかかる。


 コストがかかる上に仕事は奪い合い、加えて収入は安定せず……。“新司組”への風当たりは弁護士界ではキツい。そのため、職業として見た弁護士は、今や誰の目から見てもコストパフォーマンスの悪いものとなっているようだ。


「取材中、多く耳にしたのは、これ以上弁護士の低所得化が進めば、そのツケは司法サービスの受け手である市民に回ってくると懸念する声です。難易度の高い事件や専門性の高い事件ともなれば、ごく一般の人にとって、その弁護士費用の負担は大きなものとなります。採算度外視で法律家の矜持にかけて手弁当に近い価格で引き受ける志のある弁護士など、これからはいなくなるかもしれません」(同)


 弁護士余剰の問題は、我々にとっても他人事ではないのだ。
(文=ジョージ山田/清談社)


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