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顧客行動を可視化し店舗の最適化を図る 東京シャツのデータから得た気づきと改善施策

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2019年03月25日 08:02  MarkeZine

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写真東京シャツ株式会社 経営企画室 課長 松中秀人氏
東京シャツ株式会社 経営企画室 課長 松中秀人氏
 創業70年の歴史を誇る東京シャツ。全国に約190の実店舗と5つのEC店舗を持つシャツ専門チェーンだ。東京シャツでは昨年、人工知能を活用した店舗解析サービスである「ABEJA Insight for Retail」を導入した。顧客行動データの活用について、経営企画室 課長の松中秀人氏に尋ねた。


 東京シャツでは、2018年の11月に ABEJAが提供する店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を導入。TOKYO SHIRTSウィング新橋店、BRICK HOUSE by Tokyo Shirts亀有アリオモール店、BRICK HOUSE by Tokyo Shirts錦糸町アルカキット店、BRICK HOUSE シャツ工房 五反田レミィ店の4店舗から運用を開始し、顧客行動データを活用した店舗運営の最適化に取り組んでいる。「ABEJA Insight for Retail」の導入に至った背景と、データを活用した仮説検証、課題解決の具体的なアクションについて、東京シャツの松中秀人氏に話を伺った。


■市場と購買行動の変化に対応するために


――「ABEJA Insight for Retail」導入の背景や課題感とは?


松中氏:小売業界はPOSシステムが浸透していまして、情報・データが蓄積されるというのは早かったんですね。ただ、顕在化したデータしか貯まらず、潜在的なデータが得られないというのが現状でした。



東京シャツ株式会社 経営企画室 課長 松中秀人氏


松中氏:マーケットが縮小していく中で、売り上げを確保していくためには他社のシェアをとっていかなければなりません。前年比でいくらという指標だけで物事を語るのは難しい時代になってきています。また、ECが当たり前になる中で、実店舗のあり方も定義し直さないとなりません。そのような状況下で、変わり続ける購買行動を追うためにも「ABEJA Insight for Retail」を導入しました。


■ダッシュボードのわかりやすさが決め手


――他の来店社分析ツールは検討されたのでしょうか?


松中氏:来店カウンターなども検討はしていましたが、データのクレンジングに手間がかかるという懸念がありました。カメラによる人的なリサーチも、誰が見て、どう分析するかという問題があります。「ABEJA Insight for Retail」のダッシュボードの仕組みを見て、これなら効率的に必要な情報がひと目でわかるなと感じられました。ABEJAさんはAI(人工知能)領域の会社ということもあり、将来の拡張性という点でも魅力的でした。



AIを活用した店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」管理画面イメージ


――ABEJAのことは以前から知っていたのでしょうか?


松中氏:いえ。社長の鈴木(弘之氏)が新幹線でたまたま読んだ『Wedge』でABEJAさんが紹介されており、興味を持ったのがきっかけです。私のほうでも店舗分析ツールを探していたタイミングでもあり、こちらからお問い合わせしました。


■購買行動データの具体的な活用


――具体的には購買行動データをどういった形で活用されているのでしょうか?


松中氏:新橋の店舗は、ECサイトとの連動を考えたコンセプトショップです。加えて、お客様の動きをデジタルで解析し、店舗施策の効果を検証するというミッションが課せられています。まず、買上客数と入店客数、それに対する買上率を測定しました。それだけでも、これまで見えていなかった事実が見えるようになりました。これまで客数と言うと、レジ通過客数でしかなかったからです。測定と分析の結果、ピークタイムの買上率は約10%だということがわかったのですが、これが果たして高いのか低いのかというところから判断しなければなりませんでした。



新橋店の時間帯別買上率の推移


松中氏:ABEJAさんに聞いたところ、アパレル業界で高いところだと15%くらいの水準とのことでした。我々はシャツの専業で、お客様は明確な購入目的を持って来店されているので他のアパレル店よりも買上率は高くあるべきだと危機感を覚えました。


――買上率に課題があることがわかったわけですね。改善のためのどのようなことに取り組まれたのでしょうか?


松中氏:棚ごとにどれだけ手を伸ばしたかも測ることができていますので、その棚に置いてある商品の販売実績と比べればその棚の買上率が出てくる。それを最適化することで全体の買上率を上げられるのではないかというアプローチをしています。


■好不調の原因と対策


――他の導入店舗では、どのような気付きがあったのでしょうか?


松中氏:亀有は標準的なお店ということで、将来的な横展開のことを考えて導入しました。錦糸町は好調店舗と言われるお店で、五反田は不調店舗と言われるお店です。その2店の分析結果から、好不調の原因がおぼろげに見えてきたところです。


 実は不調店舗の入店率はかなり高く、好調店舗は逆に低かったのです。ただ、最終的な買上率が倍くらい違う。それで最終的な売り上げに差が出ているわけです。不調と言われているお店でも入店率が高いということは、ちゃんとヒットさせることできれば売り上げにつながるポテンシャルを持っている可能性もあります。



好不調店舗の入店率・買上率の比較


松中氏:不調店舗の買上率に影響している要因も調べてみました。すると、在庫単価と取引単価でかなりのギャップがあるということがわかりました。


――実際に買われている商品と店頭に並んでいる商品のラインアップに差があったということでしょうか。


松中氏:ええ。そこでMD、商品構成を変えるといった対策が講じられるようになりました。今まで不調だよねと言われていたお店も結局は他店と売上額の比較でしか見られていなかったわけです。そのお店の潜在的なポテンシャルに目を向けられるようになったわけです。好調だと言われているお店についても入店率を見ると、まだまだ伸ばせる余地があるかもしれません。店舗スタッフの評価の基軸についても、より公平なものが作れるのではないかと思っています。


■仮説からの棚割りの最適化


――買上率上昇へのアプローチの成果は?


松中氏:まだ導入から日が浅く、売り上げへの貢献という意味ではこれからのところが大きいのですが……。新橋のお店では、棚割りの最適化で一定の成果を上げています。3つ並んだ棚のそれぞれの買上率を調べた結果、右側の棚の買上率が高いということがありました。新橋という場所柄、「白いシャツが多いからでは?」という仮説を立て、真ん中の棚に白シャツを持っていきました。すると、買上率が10ポイント近く変わったのです。レジに近い左の棚は元々買上率が3つの中で最も低かったのですが、そこに白シャツを移動させても買上率は改善されました。この結果から、白シャツが売り上げに貢献しているということが客観的事実としてわかりました。



棚割りの変更と買上率の変化


松中氏:そこで、商品構成比率の白シャツの割合を増やすというということになるのですが、こういった取り組みは店舗全体の売り上げがゴールという中で局所最適になりがちです。そのため、全体売り上げが一番高くなったレジに近い左側に白シャツを集めるという形にしました。こういった棚割りの最適化をトライアンドエラーで行っているところです。


■AI×CRMで優良顧客化へのプロセス設計を変える


――今後計画されていることや展望についてお話しください。


松中氏:横展開の前に、導入店舗におけるデータ収集の深さを出していければと考えています。現状は、「ABEJA Insight for Retail」の強みであるAI領域の機能を活用できていません。これから属性推定やリピート検知ということにも取り組んでいきたいと思います。現在、CRM構築にも注力しており、店舗に来店されたお客様とECを訪れた方のデータ統合も行っていきます。弊社の場合、一人のお客様が購買に至るのは年に2回程度です。しかし、店舗やECを訪れているのも2回ということはないんじゃないかなと。


―――店舗とECの両方で来店計測ができ、名寄せしたデータが持てれば、いろいろなアプローチ方法が模索できそうですね。


松中氏:冒頭でもお話したお客様の行動の変化と実店舗のあり方の再定義ということについてですが、それを決めるのはお客様でしかないかなと思っています。店舗に来て実物を見て、ECで買われている方もいるでしょう。いわゆるショールーミング化した店舗のあり方というのもあるかもしれません。そういう場合は、ECで使えるクーポンを配布するとか。逆にECでログインしたが、最終的には店舗で実物を見て購入するといったケースもあるでしょう。顔認証などを用いれば、どこに何回来店していただいているかわかり、優良顧客になっていただくための接客やインセンティブの与え方などのプロセス設計も大分変わってくるでしょう。AIとCRM、そしてデータドリブンマーケティングを回すMAもフル活用することで、どのチャネルを使っても便利に買い物できるのが東京シャツであるという認識を持っていただけるようにしていきたいですね。

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