「祖母の介護をしたい」入社直前の内定辞退はあり? 会社は渋い顔

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2019年03月25日 10:21  弁護士ドットコム

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入社する直前に内定辞退をしても問題ありませんかーー。このような相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者は、採用時期は「4月」ということで、昨年受けた面接において口頭で「内定」を告げられました。ところが祖母を介護しなければならなくなり、3月1日に内定を辞退したいと会社側に伝えたそうです。



会社からは人手が足りないなどとして、「代わりが見つかるまで働いてほしい」と言われ、困っている様子です。新たな代わりの人が見つかるまで、内定先の会社に入社し働かなければいけないのでしょうか。労働問題に詳しい田村優介弁護士に聞きました。



●「2週間前」までの通知を

ーーまず「内定」とはどのような状態のことでしょうか



「『内定』とは将来のある時期(新卒大学生であれば翌年4月1日)から働くことを予定した『労働契約』が成立した状態と解されています。



相談者のケースでは、内定通知書等の書面がなく、口頭のみで内定が決まっていたようですが、契約は口頭でも成立しますので、既に労働契約が成立している状態ということができます」



ーー今回の相談者は内定辞退をすることができるのでしょうか



「『内定』を含む労働契約について、労働者がこの解約の申し入れをすることは自由にできます。会社の承諾は必要ありません。『退職』は労働者の権利といっていいでしょう。



民法は『当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合、契約は申入れの日から2週間を経過することによって終了する』と定めています(627条1項)。



ですから、実際に働き始める予定の日の遅くとも2週間前までに内定辞退する旨を会社に通知すればよいでしょう。相談者のケースでは入社する必要はありません」



●損害賠償請求は原則として認められない

ーー会社が損害賠償を請求し、それが認められることはありませんか



「先ほど述べたとおり、退職は労働者の権利ですので、退職を申し入れたことによって、会社の損害賠償請求が認められることは原則としてないと言ってよいです。



ただし、『権利の行使は信義に従い誠実に行わなければならない』(民法1条2項)ことから、『内定辞退の申入れが、著しく信義則上の義務に違反する態様で行われた場合(労働者は、)債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負う』と述べた裁判例もないわけではありません(東京地裁平成24年12月28日)。



ただしこの裁判例は、結論としては労働者の損害賠償責任を否定しているものです」



ーーどのようなケースを考えればいいでしょうか



「例えば、入社予定日のかなり前から入社ができないことが明らかになっていたにも関わらず、あえて入社予定日の2週間前まで連絡をしなかった、といったようなケースであれば、損害賠償請求が認められる可能性がないわけではないと考えられます。



事情が変わったなどの場合には、早めに相談や連絡を心がけておくのがよいでしょう」



(弁護士ドットコムニュース)




【取材協力弁護士】
田村 優介(たむら・ゆうすけ)弁護士
ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団。残業代請求、不当解雇、パワハラなど、労働問題を多く手がける。共著「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」など。
事務所名:城北法律事務所
事務所URL:http://www.jyohoku-law.com/


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