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新聞紙面に滲み始めた、新聞社のコスト削減と「働き方改革」の苦労

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2019年03月25日 20:11  Business Journal

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Business Journal

写真この「版」の表示を見れば、新聞の「鮮度」がわかる
この「版」の表示を見れば、新聞の「鮮度」がわかる

 合理化や「働き方改革」が重要なのは、どんな業界でも例外ではない。働く時間を減らし、あるいは残業を減らし、長時間労働を減らすことで労働者の働き方を改善する一方、残業代などの人件費支出を減らし、企業の財務面での改善を行うことにもなる。


 それは新聞社でも同じだ。新聞社は夜間や深夜に働く人が多く、記者は裁量労働制であるものの、紙面をつくる整理部門や、記事をチェックする校閲部門、印刷などに従事する社員はそうではなく、深夜手当などが増額される。加えて、帰宅の際のハイヤー代なども、会社が負担する。
 
 しかし新聞の発行部数が大きく減少し、これまでのように多額の人件費をかけることは、難しくなってきているだろう。新聞社では給与やボーナスの削減など、さまざまな緊縮策が取られている。そんななかで、新聞紙面の制作にかけるコストを減らそうとする動きが、最近は目立つ。


●校了が早くなっている


 かつては、新聞のニュース面はなるべく遅い時間のニュースを掲載しようと努力していた。一方で、文化欄や家庭欄は、早い時間に校了し、早い「版」が最終版でも掲載されていた。


 ところが最近は、東京23区に配布される最終版でも、各紙面が早い「版」となっていることが多く見られるようになった。参考までに、東京都調布市にある筆者の自宅では、朝日新聞と日本経済新聞を購読している。朝日の最終版は14版、日経は13版である。また、どちらにもデジタルの契約がある。


 たとえば朝日をみてみると、1面は14版でも、2面(総合面2)は13版、日によっては12版▲(夕刊のない統合版地域に配布される紙面と同じ)ということもある。朝日は、ほとんどの日で2面は大きな記事ひとつ(「時時刻刻」)、「ひと」欄、日によっては「いちからわかる!」で構成されており、最終版でも早い版と同じ内容で問題はないのかもしれないが、かつては新聞自体の版を重ねるごと紙面の版数も重ねられていた。


 ちなみに、朝日の14版校了時刻は深夜1時15分、13版は22時〜24時頃となっている。12版▲の場合は22時頃。電車で帰れる時間だ。


 それ以外の総合面でも14版ではないことが多く、経済面は13版で終わり、国際面の半分とスポーツ面の大半、社会面は14版となっている。


 また、日経の最終版14版を電子版で確認すると、2面は13版であり、ほとんどの面で12版〜13版、商品面は11版の日もある。社会面では2面のうち、1つの面しか13版ではない。日経の「14版」校了時刻も、深夜1時15分。「12版」は22時ころ、「13版」は24時ころだ。


 こうした動きは合理化や働き方改革の一環なのだろうか。両社に問い合わせてみた。


「『12版▲』『13版』等、新聞の『版』につきましては、回答を差し控えさせていただきます。働き方改革につきましては、お客様へより豊かな情報を提供できるよう、働きやすく、働きがいのある会社を目指し、これからも進めてまいります」(朝日)


「紙面の起版については編集方針に関わるものであり、回答は控えさせていただきます」(日経)


 新聞社が労務コストを減らす一方で、働きやすい環境づくりを目指すなかで、このような動きが起こっているのだろうか。


●「版」をめぐる深夜の攻防


 1月1日、年が明けてすぐにNHKが天皇退位にともなう新元号の公表を4月1日に行うと速報した。0時15分から始まるニュース番組開始前、『ゆく年くる年』で全国の年越しの風景が生中継されているときだった。


 その日の朝刊各紙を確認すると、朝日は3面(13版●)でこのニュースが加えられ、日経の13版にはこのニュースは載らない一方、14版では1面に掲載されていた。産経新聞は最終版(15版)の一つ前である14版の1面トップでこのニュースを報じ、マイクロソフトのウィンドウズ更新の必要性などにも触れていた。ちなみにこのニュースは、年明け直後には産経新聞社のニュースサイトに流れていた。そして毎日新聞は最終版1面に掲載することで対処した。


 年が明けてすぐ報じたNHK、詳しい内容を最終版よりも前の版に書き込んだ産経。他の新聞はそれを追いかけて一報を載せるしかなかった。NHKには岩田明子記者、産経には阿比留瑠比記者など、安倍晋三首相と深い関係にある記者がいるため、このようなことが可能になったのかもしれないが、他の新聞は年明けすぐの速報に面食らったのではないだろうか。
 
 新聞制作の合理化が進むと、こういった事態に対処することが難しくなってくる。1面しか速報を掲載する場所がなく、とりあえず第一報を1面に載せる。あるいは他の面をいじって対処する。新年の速報騒動が、新聞の「版」の重要性をわかりやすく示すことになった。


 現実的には、夜中までニュースが動き、紙面に入れなければならないような重要な事態が起きることはあまりない。この大みそか深夜の動きが、例外的だっただけである。


 深夜まで紙面をなんどもつくり直して版を重ねることは、はたして合理的なのか。人件費だけではなく、何度も刷版をつくるのにもコストがかかる。そのコストもばかにはならない。そういった場合、早い時間で校了してそれを最終版としても、よいのではないだろうか。いずれにしても、新聞社が厳しい状況に置かれていることは、紙面を見ても確かだろう。
(文=小林拓矢/フリーライター)


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  • どうがんばったって速報性では他の媒体には勝てっこないんだから、記事の中身で勝負するしかないだろ。 まあそれが出来ないから消滅に向かっているんだろうけどさ。
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