Appleの新サービスたちに勝算はあるのか? 競合多い『AppleTV+』などを改めて分析

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2019年04月01日 09:41  リアルサウンド

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 Apple社が日本時間の3月26日に開催した『Apple Event』にて、『AppleTV+』『Apple News+』『Apple Arcade』『Apple Card』と4つの新サービスを発表した。


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 これまで自社のイベント・発表会では必ず新たなハードのお披露目を中心にプレゼンテーションしてきたAppleだが、今回はイベントに先駆けて新たなiPad AirやiPad mini、iMac、Airpodsといった新ハードをアナウンスし、イベント本番ではサービスの発表に終始した。これまでのハード中心だったアップルからの方針転換ともいえる内容について、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。


「Appleは長年ハードの会社というイメージが定着してきました。ですので、サービスをメインで発表会をするということは、これまでになかった流れですし、社内でもサブスクリプションサービスが重要だという考え方に変わってきているということでしょう。これはハードの売り上げを無視するといったことより、消費者の消費行動がサービス軸に移り変わってきていることが大きく影響していると思います。物を買って消費するよりも、サブスクリプションを経由してコンテンツを楽しむことが当たり前になった現在に合わせた戦略転換といえます」


 そのうえで、ジェイ氏はインパクトの大きかったサービスに『AppleTV+』を挙げた。


「スティーブン・スピルバーグやJ・J・エイブラムスの協力を得てプレゼンテーションした『AppleTV+』は、一番インパクトがありましたね。この領域はNetflixやHulu、Amazon Prime、YouTube Premiumなど、競争とイノベーションが起きているところですし、ここに挑むのは大きな挑戦です。勝つためには、コンテンツ力・制作力がなにより重要になるでしょうし、Appleはこれに成功すれば、クリエイティブカンパニーとしてもう一段上の領域に到達するでしょう」


 競合も多い定額制映像配信サービスの領域において、Appleに勝算はあるのか? 同氏は、以下のようなポイントを挙げた。


「『AppleTV+』は、現在NetflixやHulu、Amazonといったリビングで見る映像配信サービスに満足していない人たちや、YouTubeで動画を見ているティーンエイジャーに対し、初めて納得できるプレミアムコンテンツを提供することが狙いなのかもしれません。利用者を増やす方法として、Apple Musicを普及させた時と同じように、デバイスにあらかじめ紐づけたり、Apple Musicとバンドル契約をさせるなどの方法を取ることが考えられます。現在ハードとして価格帯が下げられなくなってしまったiPhoneですが、映像配信サービスはオリジナルコンテンツを見るライフスタイルという価値を加えることができます。アップルのサービスが“生活の中で必要不可欠なもの”になれば、ハード部門のビジネスにも繋がるでしょう」


 続けて、『Apple News+』『Apple Arcade』にはある共通点が存在すると話す。


「『Apple News+』も『Apple Arcade』も、自分たちが選んでいるということを強調しているように感じました。『Apple News+』では、アルゴリズムでユーザーに適した記事を提供する他のニュースアプリやSNSと違って、人間がキュレーションして“編集”を行うことの重要性を語っていましたし、『Apple Arcade』はゲームプラットフォームでありながらAppStoreのような無数の配信ではなく、Appleが選んだゲームのみが遊び放題の対象です。


 受け取り方によっては横暴な振る舞いと思う人も多いかもしれませんが、ここまでプラットフォームとしての力を持ったからこそのことですし、ここまでくるとダウンロード数で勝負してきた今までのアプリ開発のやり方とは異なり、“『Appleのビジョンとうまくパートナーが組める人”はどんどん強くなっていく』ような状態が今後は生まれてくるかもしれません」


 Appleにとっても大きな転換点といえる今回の発表イベント。ここで打ち出された新サービスが、市場をどこまでかき乱すのかにも注目だ。


(中村拓海)


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