【明野ボーイズ】源田壮亮を輩出した中学硬式チームの選手育成論

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2019年04月02日 12:12  ベースボールキング

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この3年間で3人のプロ選手を輩出し、注目度が高まっている大分明野ボーイズ。昨年のドラフトでは阪神ドラフト2位で小幡竜平(延岡学園)、同ソフトバンク育成4位で中村宜聖(西日本短大付)が同時に指名され、出身チームである大分明野ボーイズは大いに沸いた。そして、出世頭は2017年のパ・リーグ新人王。昨年のベストナイン&ゴールデングラブに輝き10年ぶりのリーグ優勝に貢献した源田壮亮(埼玉西武)である。

2004年のチーム立ち上げ以降、全国大会への出場は2016、17年春夏の計4回。4回中3度はベスト8以上だ。九州大会優勝1回、ホークスカップ優勝1回。この春に就任3シーズン目を迎える小間充監督は、源田や小幡らプロ入りした選手たちの中学生時代に携わってはいないが、その指導方針は創設以来守られてきた球団理念に沿うものだった。
「高校に上がるための準備が第一。そのためには技術面はもちろん、生活態度を整え、チームワーク、人間関係の大切さを知る必要があります。選手に関しては複数ポジションをこなせるような状態で上に送り出してあげたい。中学の段階でひとつのポジションに固定するのは早すぎます」

小間監督は高校時代に大分の古豪・津久見でプレーし、控え投手として2年夏の甲子園を経験している。その後、社会人野球の大分鉄道管理局でも投手として活躍し、オリックスの福良淳一前監督ともプレー。2度の日本選手権出場を果たした。さらに現役を引退後は地元の学童少年野球チームでも監督も歴任。小間監督の指導スタンスはこうしたキャリアの中で培われ、磨き上げられてきたものだ。
「やらされるのではないということを、まずは植え付けなきゃいけません。“やらされる”練習では、子供たちが自分の力で伸びていこうとしなくなるのです。ウチは週3回の練習なので他の4日間の中でどれだけ自分自身を追い込むことができるか。ここはあくまで週4日のうちにやってきたことを発揮する場に過ぎないのです」

小間監督が高校生となる以前に、津久見は2度の甲子園制覇を経験している。当時のチームを率いた小嶋仁八郎監督(故人)の指導が、まさに選手たちが自分自身の力で成長できるように促すスタイルを取っていた。現在では当たり前の指導をすでに40年以上も前に先取っていたのだから、全国の頂点にも立つわけだ。
練習のない週4日の中で課していることといえば、腹筋、背筋、腕立て、体幹のサーキットメニューぐらい。ランメニューに関しては “電柱間インターバル”を行なうなど、各自がメリハリをつけて取り組んでほしいという。





小間監督のスタイルの最大の特徴は「平等に育てる」。全員で、優先すべきことにコツコツと取り組む。決して無理はさせない。中学生はあくまで高校の準備段階にいるのであって、通過点の段階ですべてを発揮させてはいけないというスタンスだ。「選手を固定して使うやり方は、中学生の段階でやるべきではない。だから今の子供たちには『高校3年になってレギュラーをとれよ』と言っています。高1でレギュラーをとらなくていいし、とろうともするなと。どんなに技術に長けていても、高校1年生と3年生では体力的にも全然違いますよね。1年からレギュラーをとるために必死になればなるほど、無理が生じるわけです。
高校の監督はボーイズ出身というだけで使いたがるものです。ただ、通過点にいる間は焦る必要はありません。トータルで自分の野球人生を考えればいいのです。試合に出たい気持ちはよくわかるし、大会が近くなると子供たちは『痛くないです』と言いますよ。だからキャッチボールを注意深く見て、異変があればすぐに対応しないと」

また、守備位置を固定せずに複数ポジションでの練習を続けることにも意味はある。専門外のポジションを経験することで、ポジションごとの痛みや苦しみがわかる。そこを理解できれば味方がエラーをした時も『今のは仕方ないね』と自然とカバーできるようになる。そうやっていくうちにチーム力が上がり、勝利に繋がることも少なくない。

昨シーズンに3年連続の全国出場を逃したことで、小間監督がもっとも痛感したのはまさにそのことだった。(取材/写真:加来慶祐)

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