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カセットテープ、絶滅するにはまだ早い?国内唯一のメーカーに聞いてみた 録音時間「46分」の秘密も判明

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2019年04月10日 07:00  ウィズニュース

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写真カセットテープは絶滅危惧種?
カセットテープは絶滅危惧種?

「テレビを叩く」や「チャンネルを回す」などといった最近やらなくなった動作をまとめた「絶滅危惧動作図鑑」。昨年末にこの図鑑の存在を取り上げたところ、カセットテープを巻く動作について、予想外の反応がありました。その中で、「絶滅するにはまだ早い」とツイートしたのが、国内で唯一カセットテープを製造・販売しているマクセルさんのツイッターアカウント。もしかしたら、怒っているのかな……。そんな思いもよぎりつつ、せっかく反応いただいたので、この言葉の奥にどんな意味が込められているのか、取材してみました。(朝日新聞記者・吉田貴司)

【画像特集】昔見かけた懐かしいテープからレアものまで! マクセルのカセット図鑑 

取締役と公式アカウントの「中の人」が登場
話を聞いたのは、乘松(のりまつ)幸示取締役とマクセル公式ツイッター「中の人」の2人です。

取材の冒頭は、乘松取締役の張り詰めた一言からでした。

乘松取締役:色々と取材でお聞きしたいことがあると思いますが、その前にまず言っておきたいことがあります。

「……はい」。このとき、記事に関するご意見を受ける覚悟を決めました。

乘松取締役:マクセルはカセットテープだけつくっているわけではありません。オゾン除菌消臭器やEMS運動器、理美容製品などさまざまな新しい商品がたくさんあります。こちらも是非、お伝えください。

取材場所は、マクセルの代々木事業所の会議室。そこには、美容家電やモバイルバッテリー、EMS運動器などカセットテープとは縁遠い商品が並んでいました。記事とは無関係と分かりほっとしたところで、取材開始。カセットテープに関して気さくに話してくださり、だんだん話も弾んでいきました。

今でも年約1000万巻を販売 でもなんで、録音時間「46分」?
まずは、カセットテープの歴史について。

カセットテープの規格がつくられたのは1962年です。その後、開発したフィリップス社が基本特許を無償公開したことから、爆発的に世に出回るようになりました。マクセルは1966年から製造を開始。日本でのカセットテープ販売のピークは1989年で、年間約5億巻を売り上げたといいます。

その後は、他の記録メディアの台頭によって販売数が減少。しかし、現在でも根強い人気があり、業界全体で年間約1000万巻が販売されています。海外では、カセットテープに録音した音源を販売する有名アーティストも増加しており、ミュージックテープの生産本数は増えているというデータもあるそうです。

ちなみに、現在マクセルが販売するカセットテープの中では「10分テープ」が63%で最も多く、続いて60分テープ(15%)、90分テープ(10%)と続きます。なぜ、10分テープが売り上げの大半を占めるのでしょうか?

乘松取締役:このテープのパッケージに「カラオケ用」と書いてあるのがポイントです。10分テープはご年配の方のカラオケの練習やお稽古ごとなどによく使われています。

−−そもそも、テープの時間ってなぜいろんな種類があるんですか? 単純に長い時間録音できる方がお得な気がするのですが……。

乘松取締役:一番最初のカセットは60分です。そこに46分というテープがでてきた。なぜ中途半端なものをつくったのかと思われるかもしれませんが、これはレコードの両面の時間にあわせたものなのです。その後、CDの記録時間にあわせて74分や90分、カラオケがブームになると、曲単位の10分のテープを製造するようになりました。

−−時代のニーズに合わせたものなんですね

乘松取締役:昔は120分や150分テープというものもありました。これはクラシックを聴く方に大変好評でした。

時間の長さとともに気になったのがカセットテープの種類でした。取材すると「ハイポジ」「メタル」といったテープがあるようで、会社の先輩も当たり前のように知っていました。が、まったくわからなかったので、質問しました。

乘松取締役:ノーマルやハイポジ、メタルというのは、磁気テープの保磁力(磁気を保つ力)の違いです。この保持力が高いと、よりノイズが少なく音がよくなります。ハイポジはガンマ酸化鉄(磁性体)にコバルトをつけることで、保磁力が高まる。メタルは金属鉄を使うのでより高まるのです。ちなみに、ノーマル→ハイポジ→メタルとグレードが高くなるにつれて、テープの色が黒くなる傾向があります。

中の人:ここに用意したテープが「メタルヴァーテックス」という1989年に発売したマクセルのメタルテープの最高級モデルです。当時で1巻2000円以上しました。でも、今オークションで未開封品を買おうと思うと……すごいことになっています。

乘松取締役:誤解している人もいるのですが、CDよりカセットテープの方が古いものだから音が悪いという考え方は正しくありません。実際に多くの人がCDよりカセットテープの音が心地よいという経験をしています。人の聴感特性とカセットテープの周波数特性の相性が良いということだと思います。

中の人:ツイッターに寄せられた声を聞くと、高いテープが必ずしも良いという人ばかりでもないようです。音の世界は食の世界と近いのか、好みがわかれるのかもしれません。音質で言ったらメタルよりハイポジの方が好きだ、というような人もいらっしゃいました。

乘松取締役:マクセル、ソニーさん、TDKさんなど、メーカーで音がちょっとずつ違い、それを楽しんでいました。バイアス、イコライザーを調整して自分の好みの音にもできたのです。

中の人:録音した1巻1巻が宝物だったり、マイベストをつくったりする良さがカセットにはありました。今はスマホのおかげで、ストリーミングでたくさんの音楽が聴けますが、記録メディアに携わるメーカーとしては、モノとして残らないのは少し残念です。便利なんだけど、その時代の記録が残らないのはもったいないなと思います。例えば、お父さんが若い頃に聞いたテープが書斎にあって聴いたりしたら、温故知新で古いけれど新しい音楽に出会うきっかけになることもありますよね。

テープの技術、スマホ時代のあなたの手元にも?
記者(29歳)自身はMDやHDDプレイヤーを持ち歩いた世代。しかし、MDはもう聴くことも、手に入れることもほとんどできなくなりました。なぜ、それ以前からあったカセットが生き残り、MDが先に衰退してしまったのでしょうか?

乘松取締役:ハード側の技術が楽という点はあると思います。カセットテープを再生するヘッドが単純で、つくりも簡単なのです。例えば同じテープでもVHSはものすごく難しく、需要がなくなるというよりも、メーカーが採算に合わず、つくれなくなった。新興国でも安く生産することができるので、カセットはよく使われているのです。

−−カセットテープの技術でほかの製品に活用されていることってあるんですか。

乘松取締役:カセットなどの磁気テープをつくる際に使う技術は現在、リチウムイオン電池の電極をつくる際に使われています。リチウムイオン電池関連の製品の一つであるスマートフォンなどの充電用モバイルバッテリーは量販店でのシェアで現在マクセルがトップ。磁気テープをつくっていなかったらこのバッテリーはできませんでした。

最後に一番気になる質問をしました。それは「絶滅危惧種」とされたことについて。国内唯一の製造メーカーに聞くのも失礼な話ですが、ここは直球で聞きました。

−−絶滅危惧といわれてしまうことについて、どう感じましたか?

中の人:落ちていっているというのは確かなこと。「まだあるの?」といじられてオイシイな、と思う部分と「いやいや、まだ滅びないよ」っていう部分と両方あります。いまでもカセットテープを利用してくださるたくさんの方がいらっしゃいますので。

中の人:カセットは今は「B面」といわれるかもしれませんが、「A面」だった時代がありました。昭和も、平成も、そして次の元号の時代でも販売しているでしょう。50年以上生き残っているメディアはある意味すごいと思うんです。最近はファッション雑貨でも80年代をモチーフにしたアイテムが流行していて、カセットテープをデザインしたグッズも多くあるんですよ。

乘松取締役:絶滅危惧と言われれば、確かにそういうものだと思います。あるの?といわれることもありますし。当社のお客様ご相談センターには、「カセットテープの生産をやめないでください」という声がしばしば届きます。だからこそ、多くのお客様のご要望がある限り作り続けたいと思っています。

「カセット愛」から、取材するうちに机の上にもどんどんカセットが広がりました。取材時間を大幅に超えて熱く語っていただき、ありがとうございました。

このニュースに関するつぶやき

  • 仕事の出先で、カセットテープを数十本貰ったよ。もう生産されていない120分テープもあって貴重。すぐ使うわけじゃないけど、もったいなかったから。
    • イイネ!1
    • コメント 2件
  • 昔はパソコンのデータだって、カセットテープに書き込んでいたのだぜ…。
    • イイネ!57
    • コメント 19件

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