「自白を得る拷問」人質司法からの脱却を 弁護士と法学者1000人が声明

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2019年04月11日 13:01  弁護士ドットコム

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日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告人の逮捕を受け、「冤罪弁護士」として知られる今村核弁護士が、4月10日、東京・丸の内の外国特派員協会で会見した。ゴーン氏の逮捕により海外で高まった日本の「人質司法」への批判の声を「刑事司法改革につなげたい」と述べた。


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また、人質司法の解消を訴える声明(「『人質司法』からの脱却を求める法律家の声明」)に、4月8日までに1010人の弁護士や法学者が賛同したことも明らかにした。声明では、日本の取り調べや身体拘束が「自白を得る拷問のようだ」として、司法制度の改善を求めている。



●裁判官と検事「一体の伝統は続いている」

出席した記者からは、裁判所が勾留を認めやすいことや、自白調書を採用しがちな傾向について質問が出た。



今村弁護士は、戦前の司法省が裁判官と検察官両方の人事評価をしていたことや、戦後も検察官が裁判官室に出入りして裁判記録を借りるような慣行を紹介した上で、「法廷では弁護士だけが客のような扱いを受けている。判検(裁判官と検察官)一体の伝統は続いていると言わざるをえない」とした。



また「ある検察幹部は『記事は書かせるものだ』と言っていた。マスコミを広報誌にしようとしており、メディアの責任も重い」と指摘した。



●声明「否認していると年単位で拘束される」

声明は、ゴーン被告人の逮捕や勾留を巡り海外から日本の刑事司法への批判が高まる中で、今村弁護士が呼びかけ人となって集めた。



「人質司法」を(1)自白が得られるまで続く身体拘束や、(2)弁護人の立会いが認められない取り調べ(3)虚偽自白を含む自白の強制ーーなどの総称として定義している。



日本では取り調べの受忍義務があるとされる上、起訴前の保釈制度がない点を指摘をし、「長期間の拘束と取り調べで虚偽自白に陥る被疑者は少なくない。虚偽の自白調書で有罪判決を受けることがある」。また、起訴後に否認していると保釈されにくいとも指摘した。



人質司法の具体例として、郵便料金を巡る虚偽公文書作成などの疑いで起訴された元厚生労働省官僚の村木厚子氏の事件や公選法違反を巡る鹿児島・志布志事件を紹介。



「執行猶予付き判決や罰金刑が見込まれる事件」でも、村木氏は166日間、志布志事件では最大395日の身体拘束があった点を紹介し、「否認していると判決前に年単位で身体拘束される」と問題視している。



実際の取り調べや身体拘束については「自白を得る拷問のように扱われている。公正な裁判を受ける権利が保証されえているとは言い難い」とし、日本の刑事司法のあり方が、憲法や国際人権規約に違反している可能性を指摘した上で、「人質司法」からの脱却を訴える。



(弁護士ドットコムニュース)


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