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MIYAVIやTKらのサポートドラマー boboが語る、スタイルの確立と大きな転換期

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2019年04月12日 10:31  リアルサウンド

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リアルサウンド

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 超強烈な個性を放つアーティストの側には、必ずboboの存在あり。MIYAVIやTK from 凛として時雨、くるりやフジファブリックなど、それぞれ異なるベクトルの個性を持ったアーティストたちと関わってきたboboのドラマーとしての遍歴は、相当に興味深い。そして、その背景として大きくあるのは、やはり自らがメンバーである54-71の存在だ。先日再結成を発表したNUMBER GIRLと同時代に活躍したオルタナティブなバンドであり、boboの3点のみを使ったセットから叩き出されるストイックなグルーヴのインパクトは今も消えない。あのバンドで培った「音で語る」という哲学が、現在幅広いサポートで活躍するboboの礎になっていると言っても過言ではないだろう。これまでのキャリアを振り返ってもらうとともに、トラック全盛の時代における生ドラムの可能性についても聞いた。(金子厚武)


(関連:えつこ&ささみおが語る、サポートコーラスへの思い「川谷絵音くんの現場が今の私を作ってくれた」


■「54-71に入って、それまでの人生でやってきたことがひっくり返った」
ーーboboさんといえば、やはり54-71時代の3点のみを使ったストイックなプレイスタイルが強烈な印象でした。あのスタイルはどのように形作られたものだったのでしょうか?


bobo:あれは完全にバンドのリーダーだった川口(賢太郎)くんの意向ですね。僕は途中でバンドに加入して、最初は普通に叩いてたんですけど、だんだん川口くんの常軌を逸したストイックさが出てきたんですよ。「そのおかず、そこでやんなきゃいけないの?」みたいなことを言われて、「うーん」ってなってたら、「それじゃなきゃダメなの?」「いや、そういうわけじゃないけど」「それじゃなきゃダメじゃないことを何でやってんの?」ってどんどん言われて、もうぐうの音も出なかったです。そう言われちゃうと、何やっても説得力ない気がするし、タム回しとか全部白々しく感じちゃって、やることがなくなっていって……。


ーードラム自体は小学生の頃からやっていたそうですが、それまではどんなプレイスタイルだったんですか?


bobo:高校生の頃はメタルが好きだったんですけど、大学生になると先輩からロック50年史みたいなのを教えられて、ジャズもフュージョンもラテンもファンクも、何でも聴くようになって。「何でもできるのがかっこいい」と思ってたんですよ。「俺はあれもできる、これもできる」みたいな感じで、おかずもいろいろ覚えて、そこに自分のアイデンティティを置いてたんですけど……ところがですよ(笑)。54-71に入って、それまでの人生でやってきたことがひっくり返っちゃったんです。


ーー「おかずを入れる意味とは?」を突き付けられたわけですもんね。


bobo:それまではサビに行くときはシンバルを打ってたわけです。たぶん渋谷にいるドラマー100人に聞いたら、100人シンバル打ちますよ。でも、「何で打ってるのか?」って聞かれたら、せいぜい「頭にアクセントをつけるため」くらいで、ほとんどの人が「そういうもんだから」って感じだと思うんですよね。でも、川口くんは「何で打たなきゃいけないの?」、「それがないとサビに行けないの?」って言うわけです。で、話し合った中で、「ブレイクをしよう」ってことになったんですよ。サビの前で全員止まって、サビでまた全員入る。これを一回やってみたら、世界中のどんなおかずよりも効果的だと思ったんですよね。それから54-71の曲はほとんどがサビ前で止まってます。


ーードラムを叩くことの意味を根本から問うような体験だったというか。


bobo:一つひとつの音に意味を持たせるって考えると、必然的に音数は少なくなりました。ただ、それができたのはバンドのおかげというか、その考えのもとで曲が成り立っているバンドだからできたんです。世間一般にある曲で、おかずも入れないし、シンバルも叩かないってなったら、ただの何もやらないドラムですから(笑)。でも、54-71はその責任をドラムだけに負わせてなかったんですよ。展開って、大体ドラマーの仕事なんです。「フィルで盛り上げてよ」とか「変わり目に向かって、どんどんハット開いてよ」とか、“変わるぞ感を出す”のはドラマーに求められるんですよね。


ーー確かに。でも、54-71はそうじゃなかった。


bobo:今世界を支配してる音楽って、ほぼおかずがないですからね。そもそも生ドラムがほとんどないですが。「ドラムで何とかする」って考えじゃなくて、展開を作るのは曲であり、うわものであり、それに合わせてドラムも変わる。まあ、それは結果的にそうなってるだけですけど、54-71でやったことが今も自分の糧になってるのは間違いないです。


ーー非常に極端なバンドだった54-71から、サポートを広くやるようになったのは、どんな転機があったのでしょうか?


bobo:54-71をやりながら、呼んでもらったらちょいちょいサポートはしてたんですけど、くるりに参加したのは大きかったですね。川口くんと出会って、それまでの考えを180度変えられて、その後に(岸田)繁と出会って、また180度変えられましたから(笑)。54-71のときはビートの縦をストイックに意識してたから、そういう縦のラインとか、ショットの鋭さに関しては、「一級品です」って言ってくれたんですけど、「でも、僕はさらに違うboboくんを求めてます」って言われて、「何やねん?」と思いつつ(笑)。


ーー(笑)。


bobo:そこで繁に求められたのは、54-71が最初から最後まで一定のテンションなのに対して、くるりの曲たちはすごくいろんな表情を持ってるから、その曲ごとの表情を表現してほしいってことだったんです。それって一見真逆のようだけど、「この曲に必要なこと以外はしないでくれ」っていう意味では、実は川口くんが言ってたことと一緒だったんですよね。ただ、くるりではおかずも求められたし、AメロからBメロに変わるときに、「ちょっと変わった景色にしてほしい」みたいなことを言われたんですよ。54-71だと「そんな曖昧さはいらない」だったけど、くるりは「そのちょっとの違いを死ぬ気でやってほしい」と。傍から見たら曖昧に見えるかもしれないけど、繁の表現したい「ちょっとの違い」には、曖昧さの欠片もなかったんですよね。


■「どうしても隠せない個性みたいなものが“自分らしさ”」
ーーそんな中、54-71が実質的な活動休止状態になっていく一方で、サポートとしての活動に魅力を見出していったわけですか?


bobo:54-71は解散したわけではなかったので、当時また新しいバンドを組んで始める気は一切なかったんですよね。それとは別に、同じメンバーとずっと一緒にやってた分、いろんな人とやるのが新鮮だったし、楽しくなってきたんです。


ーー関わるアーティストによって求められることは様々だと思うのですが、boboさんがサポートをする上での基本姿勢として大事にしているのはどんなことですか?


bobo:僕の基本姿勢は「望まれたことを全部やる」って感じですね。僕がこうしたいああしたいという前に、望まれたことに対して最大限応えて、喜んでもらうっていう、それだけです。音楽性にしても人間性にしても、出そうとして出すもんじゃなくて、出ちゃうものだと思うんですよ。よく「個性が大事」みたいなことって、音楽に限らず、SNSとか見てるといっぱい出てきますけど、「“自分らしさを探す”って何やねん?」って思うんです。求められたことに対して最大限応えて、それでも滲み出ちゃう、どうしても隠せない個性みたいな、それが“自分らしさ”ってことなのかなって。


ーーなるほど。


bobo:昔は「合う/合わない」とかってないと思ってたんですよ。「頑張ればどうにかなる」って。ただ、54-71とくるりをやって、「合う/合わない」しかなかった。でも、それって軽はずみに言っちゃいけなくて、音楽と正面から向き合って、初めて言えることなんです。望まれたことを最大限やってるのに出てしまう、隠しきれない自分の持ってるものに「合う/合わない」はあるけど、うわべの「合う/合わない」は絶対言っちゃいけない。「それは俺のスタイルじゃない」みたいな、そんな浅い話ではなくて、求められたものに対して200パーセント応えるっていう大前提があって、初めて「合う/合わない」が出てくる。それは54-71とくるりという2つのバンドを通じて学んだことですね。


ーー近年では、MIYAVIさんとTK from 凛として時雨さんの作品やライブには欠かさず参加していますよね。


bobo:MIYAVIもTKも……頭ぶっ飛んでる。めちゃくちゃ頭ぶっ飛んでるやつに捕まる率が高いんでしょうね(笑)。川口くんにしろ、繁にしろ、それぞれ追い求めてるベクトルは違いますけど、全員ネジ飛んでますよ。


ーーでも、54-71やくるりを通じて、ドラムを叩くことの意味や必然性を考え続けたからこそ、自分の音を強烈に突き詰めているアーティストたちから声がかかるのかなって。


bobo:ネジ飛び耐性がついてるんでしょう(笑)。MIYAVIなんて、今でこそコーラスとかDJとかも入ってますけど、最初の頃はホント2人だけでしたからね。でも、MIYAVIと僕はベクトルが逆に向いてるんで、それがよかったんだと思います。もし僕がスティック回したり、立ち上がったり、派手な格好するタイプだったら、絶対ダメだったと思うし、人間性的に真逆だったからスポッとハマったんでしょうね。僕は自分自身が客を煽ったりするのがホント嫌なんですよ。「俺はここにいるよ!」みたいなのって、苦手意識どころの騒ぎじゃない。注目されるのはとても好きなんです。でも、自分からっていうのは……そこは54-71で染みついたものなんでしょうね。


ーーあくまで音のみで勝負するというか。


bobo:「語ってんなよ」っていうのはずっと思ってて、54-71のときも、「この曲はこういう曲で」とか、そういうのは一切やめようって言ってました。「説明しなきゃ伝わらねえことやってるのか?」っていう。聴いてくれた人が感じたものが答えであって、「この音で何を表現してる」って口にすることのダサさ、浅はかさ、薄っぺらさといったらないなって。何かを思って作ること自体は大いに結構なんです。ヴィヴァルディの「春」にしろ、ベートーヴェンの「運命」にしろ、自分の中で死ぬほど想いを膨らませて、そうやって曲を作ることを否定するつもりは一切ないです。ただ、それを説明するのは違う。本当に思って作れば、そこに説得力が出るんであって、迷いなく、「これしかない」ってものを出せば、そこに込められた意志に人は感動するはずですからね。


ーーTKさんの表現もまさにそうだというか、音で語っている人だと思います。


bobo:TKはいつも「馬鹿じゃないの?」って思うくらいのデモ音源を作ってくるんです。この間「どうやってんの?」って聞いたら、「一つひとつ打ってる。すぐできるよ」って言ってたけど、どんだけ時間割いてたんだって。TKが「こんな曲作った」って俺たちに渡してる形を、一回世の中に聴かせたいですよ。実際スタジオに入ってからは、できないことは省きますから(笑)。でも、TKが実際の僕のドラムを聴くことで新たにいろいろ浮かぶらしくて、そこでやりとりがあって、また積み重ねていくんです。そこは信頼してもらっているので、とても楽しくやらせてもらってますね。


ーー他に最近のサポート仕事の中で印象的だったことを挙げてもらえますか?


bobo:最近、世武(裕子)とも絡んでて、あいつもめちゃくちゃ頭ぶっ飛んでますね。今度パリコレに世武と一緒に行くんですよ(取材当時2月18日)。ISSEY MIYAKEのショーで生演奏するんです。半分パッド、半分生ドラムの予定なんですけど、個人的な今年のテーマが「電子に触ろう」なんですよ。昔買ったLogic(Pro X)を引っ張り出して、今年一からやってるんですけど、さっぱりわかんない。でも、みんな優しくて、現場でよく教えてもらってるので、だてにいろんな場所に行ってないなって(笑)。だから今、また大きな転換期に差し掛かってる気がするんですよね。まず54-71があって、くるりを始めて、そこからMIYAVIやTKが始まった2〜3年があって、また今そういう時期なのかなって。


■「すべては出会い。僕は運がよかった」
ーー途中で「今の世界の音楽には生ドラムがほとんどない」という話もありましたが、実際に打ち込みのトラックの割合が増す中、ドラマーとしてはどんなことを思いますか?


bobo:今はもう瀬戸際だと思います。まあ、日本はまだそこまで瀬戸際感はないですけどね。一番観客が入るフェスが『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』だから、まだバンドが強いし、その分ドラマーもたくさんいて、ドラム飲み会もアホみたいに人がいるんですよ(笑)。ただ、世界が求めてるのはトラックであって、フレーズ、音色、ダイナミズムに関して、生ドラムは求められていない。でも、その瞬間、その場所で人間が起こす爆発力っていうのは、絶対伝わると思います。DTMだって、DJ連中が魂込めて作ってるから、当然説得力がある。ただ、今この瞬間、ここで生まれてるっていう爆発力、ビッグバンの始まりみたいなその瞬間は、絶対に人間の方が強い。逆に、生に残されている可能性はそのぐらいなのかもしれない。


ーー実際に、音源は打ち込みで作られていても、ライブだと生ドラムっていうパターンも少なくないですしね。


bobo:お客さんはビートの出どころが見たいんじゃないですかね。あとは今曲を作ってるDJたちも、生ドラムの音楽を聴いて育ってきたからっていうのはあると思います。音源でも生ドラムが活きるとしたら、本当にリアルタイムで全員が混ざったときでしょうね。まずドラムを録って、後から他の楽器を乗っけるんだと、機械と何ら変わらないけど、その場でそこにいる人たちと作ったものには強度があるはず。あとは「拙いものがいい」っていうアドバンテージくらい……でも、それももうトラックで出せちゃうしね。


ーーつい先日、田島貴男さんに取材をしたんですけど、ORIGINAL LOVEの新作『bless You!』も1970年代以前のレコードを意識した一発録り主体の作品で、やはりそこはひとつの可能性なのかなと。


bobo:そうやってカウンターが出てくるんでしょうね。まあ、生楽器がなくなることはないと思うんですよ。オリンピックに人が集まる以上、その場の体験を求める人はいなくならないと思いますから。ただ、そういったことについて、音楽に関わる人たちがもう一回しっかりと話し合った方がいいんじゃないかとは思います。


ーーboboさん個人にとっても、ドラムという楽器のあり方としても、今まさに転換期と言えるのかもしれないですね。


bobo:そんな気がします。今関わってるやつらもみんな新しいフェーズに入ってる感じがするんですよ。特に、海外ベースの活動が増えつつある。僕も去年、一昨年と15カ国くらいに行ってて、日本人と一緒に世界に行けるっていうのは幸せなことだし、ありがたいことだなって。そこに関しては、すべては出会いだと思います。僕は運がよかったなって。“しごかれる運”がよかったのかもしれないです(笑)。(取材・文=金子厚武)


■bobo
54-71のドラム。MIYAVIやTK from 凛として時雨、くるり、フジファブリックなどのサポートドラマーとしても活躍中。Twitter:@bobo_drums


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