悪天候で前代未聞の大混乱。トップ争いのNSXがまさかの同士討ちで2台脱落し、ARTAが逆転勝利【スーパーGT500クラス決勝】

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2019年04月14日 18:11  AUTOSPORT web

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3番手スタートのRAYBRIG山本尚貴が2台のGT-Rをオーバーテイクしてトップを奪ったが……ホンダ陣営のまさかの同士討ちで表彰台独占が幻に。
いよいよ2019年シーズンの幕開けとなった岡山国際サーキットでのスーパーGT開幕戦は、大雨の悪天候で視界不良や路面に川が流れる状況でマルチクラッシュも発生。最終的に2度の赤旗中断経て31周時点で悪天候により、打ち切りのレースとなった。レース打ち切り時点ではGT500クラスはKEIHIN NSX-GTの塚越広大/ベルトラン・バゲット組が首位で終えるも、ペナルティ裁定により2番手だったARTA NSX-GTが今季初優勝を手にしている。

 全長わずか3.703kmのコースでレコードタイムを約1秒半も短縮する驚愕のポールタイムが生まれた土曜予選から一転、日曜の岡山サーキットは前日からの予報どおり早朝からの曇り空。ときおりパラパラと小雨も舞い、午前8時20分スタートのFIA-F4決勝もまだドライ路面ながらウエット宣言でのレースに。そして11時すぎからはついに横殴りの降雨となり、トラックは完全に濡れた状態となった。

 正午時点の雨雲レーダーでは14時30分の決勝前に雨は止み、その後はドライ方向になることも予測されたが、直前には予報が転じ雨が続くとの判断が多数を占め、さらにレースコントロールからはセーフティカー(SC)スタートの判断が下された。

 フロントロウを独占したニッサンGT-Rの2台、23号車MOTUL AUTECH GT-Rはロニー・クインタレッリ、12号車カルソニック IMPUL GT-Rは佐々木大樹がスタートドライバーを担当。以下、RAYBRIG、KEIHIN、ARTAと3台が連なるNSX-GT勢はチャンピオン山本尚貴に塚越広大、伊沢拓也の日本人トリオを送り込み、一方のレクサス最上位7番手のKeePer TOM'S LC500、8番手CRAFTSPORT MOTUL GT-Rはそれぞれニック・キャシディ、フレデリック・マコウィッキィの海外ドライバーが担当。この上位勢がコンディション変化の大きそうな序盤の混乱をどう切り抜けていくかが焦点となった。

 SCアウトとなったのは3周終了時点。2019年最初のポジション争い、4周目の1コーナーに向け主導権を握ったのはポールシッターの23号車、その背後ではわずかに膨らんだ2番手カルソニックに3番手のRAYBRIGが襲いかかり、バックストレートでロックオン。ヘアピンへのブレーキングでインを差し早々に2番手へと躍り出る。しかし同じ頃、1コーナーを通過したGT300の隊列でアクシデントが発生し再びのSC導入となり、レースは再びの仕切り直しに。

 リスタートが切られた11周目には先ほどの再現を狙ったRAYBRIG山本がMOTUL GT-Rクインタレッリに仕掛け、1コーナーアウトからきれいに並びかかりパッシング。さらにバックストレートでは3番手KEIHIN NSX-GTも続き、ヘアピンで簡単に前に出る。ミッドシップのNSXはタイヤの温まりが速いか、ウエットでライバルを圧倒する速さを見せ、早くもワンツー体制を形成。

 3番手にドロップダウンした23号車はミシュランタイヤのウォームアップ特性がライバル勢と異なるか、最終コーナー手前のスロットルオンで大きくテールスライド。すると続く12周目には4番手のカルソニックがペースダウンし、5番手のARTA NSX-GTに先行を許す苦しい展開となってしまう。

 なんとかこらえながらタイヤ発動を早めたい23号車だったが、13周目には2コーナー先のモスSでGT300のGT-Rが複数台絡むマルチクラッシュが発生。スポンジバリアも吹き飛びマシンが大破する状況により、ここでレースコントロールにより赤旗中断の判断が下される。

■まさかのホンダNSX2台のトップ争い同士討ち。3メーカーとも後味の悪い開幕戦に


 ホームストレート上にクラス別で隊列を作ったマシンたちは、ドライバーレスキューやトラック修復作業の間は待機となり、スタート再開は約45分後の15時45分に。

 ここでもSCが隊列を率いての再開でコース上の安全やマシンの作動確認をしつつ周回を重ねるが、ここでKeePer TOM'S LC500がスピンを喫してしまったようで、クラス最後尾に下がってしまう。

 19周目を消化したところで2度目のレース再開となり、先頭を行く2台のNSX-GTがダッシュを決め、4番手のARTA伊沢拓也もバックストレートでMOTUL GT-Rに並びかけ、そのまま3番手に浮上しホンダが1-2-3フォーメーションを築いていく。

 3ラップほどを経過したところでミシュランタイヤも発動を迎えたか、23号車は先頭と同じく1分31秒台を回復。7番手の同じくミシュランを履くマコヴィッキィもペースを取り戻し、前を行くもう1台のGT-R、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rに迫っていく。

 すると24周目の1コーナーでNSX-GT同士でまさかのアクシデントが発生。テール・トゥ・ノーズに迫っていた2番手、KEIHIN塚越広大が首位のRAYBRIG山本尚貴に挑もうかというブレーキングゾーンでわずかにラインが交錯し、背後のKEIHINが止まりきれずRAYBRIGのリヤに追突。チャンピオンナンバー1のマシンがそのままアウト側のグラベルへとはじき出される事態に。

 このアクシデントが起きた同一周回ではGT300でもコースオフやクラッシュが発生する大荒れの様相となり、この日4度目のSC導入。その後、ホームストレートでのリグループを経て32周目まで走行を続けたものの、雨量の増加も激しく16時30分を前に再びのレッドフラッグとなった。

 1コーナーでのトップ争い2台のバトルは接触検証中のまま、監督ミーティングの末にGTアソシエーションの坂東正明代表からレースの打ち切りが発表され、ハーフポイントでリザルトが成立。周回数は31周を終えていたが、レース中断による終了は規定で赤旗1周前の順位が採用される30周時点の結果となった。

 その後、17号車KEIHINへのペナルティもドライブスルー相当と確定し、レース結果の34秒加算で14位に後退。優勝はARTA NSX-GTに。MOTUL AUTECH GT-R、カルソニック IMPUL GT-Rのトップ3の結果となった。

 ホンダ陣営としては表彰台独占が確実だった展開だけに、ARTAの優勝にも悲喜交々。2位、3位を獲得したニッサンGT-R陣営としてもウエットではホンダNSXに太刀打ちできずに悔しい展開となり、レクサス陣営としても最上位は19号車WedsSport ADVAN LC500の7位と、LC500には苦しいシーズンの幕開けとなった。前代未聞の打ち切りレースとなっただけでなく、内容的にも3メーカーとも後味の悪い開幕戦となってしまった。

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