“バーチャルYouTuber界の歌姫”富士葵、カバーアルバムで発揮した実力と歌声の可能性

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2019年04月17日 11:41  リアルサウンド

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 “バーチャルYouTuber界の歌姫”・富士葵が、カバーアルバム『声 〜Cover ch.〜』を4月15日に配信リリース。同作はバーチャルYouTuber(以下:VTuber)として初めてiTunesリアルタイム総合アルバムランキング1位を獲得するなど、その人気ぶりを証明する作品となっている。


(関連:VTuber界の歌姫 富士葵は“新しいアイドルの形”? デビューシングル『はじまりの音』から考察


 VTuberの昨年のユーザー人口は7,000人を突破しており、今や人気コンテンツの1つ。その中で富士葵は“キミの心の応援団長”をコンセプトに活動し、2017年にスタートさせた自身のYouTubeチャンネル「Aoi ch.」は登録者数が現在20万人、カバーソングなどを中心に動画を配信し、総再生回数は3,000万回を突破するほどのVTuberだ。


 彼女の魅力の1つは明るく気さくなキャラクター。ゲーム実況では「ハゲ頭の上でスノボーするゲーム」を絶叫しながら実況したり、幻のVTuber・ゲゲギギの動画ではホラー要素含んだ内容を淡々と語る動画など、シュールな内容も多い。その絶妙な外し具合が面白く、チャンネル開設以降、視聴者を楽しませ続けている。


 そんな彼女を一躍人気者にしたのはキャラクターに加え、歌だ。これまで自身のチャンネルに数多くカバー動画を投稿しているが、どれも原曲に大きなアレンジは加えず、自分の歌声で真っ向勝負している。伸びやかで透き通るような歌声は、どこか青春や哀愁を感じさせる心地良い世界観を創り上げ、聴くものを感動させる力がある。昨年11月7日にリリースしたメジャーデビューシングル『はじまりの音』は、オリコン・iTunes共にデイリーチャートTOP10入りを果たした。歌声はもちろん、普段の明るくユーモアあふれるキャラクターと、真剣に歌に向き合う姿のギャップも魅力的なのだろう。


 そして今作『声 〜Cover ch.〜』には、葵の“歌ってみた”動画の楽曲から収録して欲しい曲に加え、新たにカバーレコーディングして欲しい楽曲もリクエスト投票で選出し、収録された。先行配信されている「糸」(中島みゆき)、「シャルル」(バルーン)を含む全12曲は、ロック、ポップス、アニソンなど幅広いジャンルから選出されている。


 「糸」は、これまでもあらゆるアーティストがカバーしており、富士葵も自身のYouTubeチャンネルで「どういう歌い方も皆さんしちゃってるなーみたいな感じで、どこを目指そうか物凄く考えた」と明かしていた。1番は声を張らずに、2番はオケに流れるように自分のボリュームを上げるイメージで歌い、同じメロディが続くサビは変化をもたせられるようにこだわったという。その歌声は優しく、彼女のボーカルの良さがしっかりと伝わる楽曲となっている。一方、バルーン=須田景凪による「シャルル」は、“歌ってみた”でも人気の1曲。もともとボーカロイド向けに作られた曲のためテンポが早く、音程は比較的単調だ。富士葵も、あえて波をつけないように歌ったと語っていて、難しい曲を自分のものにしている。このように1曲ずつ異なるテクニックを駆使し、“どう歌うか”を真剣に考えていることがこの2曲からも分かる。


 収録曲に目を向けると、1曲目の「NIPPON」は、椎名林檎が『FIFAワールドカップブラジル大会』のNHKサッカー関連のテーマ曲として書き下ろした、いわばサッカー日本代表の“応援ソング”。富士葵のコンセプトにもぴったりで、アルバム冒頭からテンションを高めてスタートを切る。続く「First Love」(宇多田ヒカル)は、低音から裏声、優しくもパワフルで、英語の発音も難しい楽曲だが、原曲の世界観を壊さずに歌い切る富士葵の歌声に、改めて実力を感じる。さらにそれを感じたのが「月光」(鬼束ちひろ)。優しくもパワフルな序盤から、終盤に向かって神々しさすら感じる歌声は、まさに自分の魂を削りながら歌っているよう。表現力の豊かさが感じられる1曲に仕上がっている。


 このほかにも、90年代J-POPのスタンダードナンバー・Le Couple「ひだまりの詩」や、奥華子「変わらないもの」、RADWIMPS「なんでもないや」など、彼女らしい心に響く楽曲の数々が収録されている。アルバムを通して聴くと、幅広いジャンルを歌いこなす歌唱力や表現力のみならず、彼女の歌には“心”があり、原曲とアーティストに尊敬を持って歌っていることが改めて伝わってくる。


 アーティストとしての新たなチャレンジであり、ファンへのプレゼントでもある今作は、富士葵の歌声の可能性の広がりを感じさせるアルバムとなった。(本 手)


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