『四月一日さん家の』五箇公貴Pが語る、“VTuberドラマ”の可能性 「アニメと人間の中間的な魅力がある」

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2019年04月20日 09:11  リアルサウンド

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 人気バーチャルYouTuber(以下、VTuber)たちが出演するシチュエーションコメディドラマ『ドラマ25 四月一日さん家の』(テレビ東京ほか)が4月19日にスタートする。ときのそら、響木アオ、そして新人VTuberの猿楽町双葉が、東京下町の一軒家に住む「四月一日(わたぬき)三姉妹」役に挑戦する本作。今回は在京キー局として意欲的な取り組みを続けるテレビ東京の五箇公貴プロデューサーに、制作の経緯とその魅力を聞いた。(編集部)


(参考:VTuberドラマ『四月一日さん家の』chelmicoがOP曲担当 動画コンテストの開催も決定!


ーーVTuberでドラマを撮る、という画期的な試みですが、制作のきっかけは何だったんでしょうか。


五箇公貴(以下、五箇):僕は今までテレビ東京で深夜ドラマや映画を制作してきたんですが、評判も良いことが多くなってきた反面、「冒険できていないんじゃないか」と考えていたんです。作家の酒井健作さんと企画会議をしていた時に、酒井さんが『サイキ道』(テレビ朝日系)でMCに電脳少女シロさんを迎えていたので、「VTuberと一緒にできたら面白いんじゃないか」という話になって。そこから色々見ていくうちに、VTuberという存在に可能性を感じて、「この子たちが女優として演じるドラマを作ったら面白いんじゃないか」と考え始めたのがきっかけです。


ーーVTuberのどんなところに可能性を感じましたか?


五箇:アニメのようにコンテを切って、声を吹き込むのではなく、彼女たちが自分自身で発信しているというところが面白いですよね。だからこそ、リアルな女優と同じように、自分以外のものを演じるというのは、構造的にも面白いそうだと思いました。


ーーなるほど。だから彼女たちのモデリングもそのままに、普段の服装ではなくスタイリングを入れて登場させたんですね。


五箇:そうなんです。スタイリングは細田守さんの作品をよく担当されていて、とても信頼している伊賀大介さんにお願いしました。実際に会議室に洋服を持ってきて、ボードに彼女達の顔を貼って「このキャラクターだったらどんな服を着ているだろう」と細かく、監督も含め話し合いました。


ーー確かに服装がリアル寄りな装いになっていました。


五箇:普段、彼女たちが活動している洋服は、少しコスプレっぽかったり、アニメ寄りなものが多いですが、今回はドラマなのでファストファッションに近いものをベースに考えました。例えば、ときのそらが演じる一花は「絶対領域があるニーハイを履いていて、スピリチュアルな部分があるから石っぽいペンダントをしているんじゃないか」とか、響木アオが演じる三樹は「IT系で落合陽一さんが好きだとしたら、割とまじめで、多分下が太いボトムスでモノトーンだよね」とか、猿楽町双葉が演じる二葉は「割とコミュニケーション上手で、アパレル店員だから……」みたいな感じで、伊賀さんがどんどんアイデアを出してくれました。僕らもスタイリングから物語にキャラクターを反映したり、相乗効果がありましたね。


ーー服装はリアルな物をモデリングして取り込まれたんですね。


五箇:そうですね。例えばバンドTシャツを着せたりするのは、動く時にその細かい絵面も動かなきゃいけないのですごく大変で、技術的に実現できていません、ただ、世界観的に、バーチャルだからリアルなものがたくさん出てくる方が、絶対にそのギャップが面白い。だから色々許可を取り、実名を出したりしました。


ーー確かにお話のなかで、現実に存在するものの固有名詞がかなり出てきますね。


五箇:あれがやっぱり面白さかなと思います。


ーー背景やアイテムなどは、全部作り込んでいるんでしょうか?


五箇:作りました。まず、360度のフル3DのCGのセットを作って、彼女たちをそこにログインさせるんです。だから監督はそのログインしたモニターを見ながら、芝居をつけてるんですよ。


ーーリアルなドラマの撮影に近いですね。


五箇:4画面でそれぞれ違うアングルにカメラを置いて、それを見ながら監督が「もうちょっと一花が前に来ないとかぶる」とか、「座る位置がここだと奥すぎるから手前に来て」とか言いながら撮影していました。


ーーそうなると演技経験が必要になってくると思うのですが、彼女たちは事前に演技の練習はされたんでしょうか?


五箇:何回かリハーサルはやりました。3、4話ぐらいまではクランクインの日にセットが間に合わなくて撮影できなかったのでリハーサルをして、3姉妹の空気感を作っていきました。


ーー舞台が限定されたシチュエーションコメディを選んだのは、やはり制作が大変すぎるから、ということもあるのでしょうか。


五箇:それもありますが、より大きいのは「わかりやすいものが1番良い」と考えているからですね。例えばサスペンスで森の中に行ったり、街に行ったりするとその背景を全部描かないといけなくなり、確かにお金もかかるのですが、それ以上に、フル3DCGのアニメと同じことになってしまう。彼女たちは一人称で画面の向こうの人に向かって語りかけるのが通常の活動なので、同じ場所に3人が一緒にいて、そこで物語を展開する多分できると思いました。なので、シチュエーションコメディがいいかなと。あとは、1980年代に放送されていた『やっぱり猫が好き』(フジテレビ系)を2019年にやったら全員バーチャルでしたっていう。ゴールとしてはそういうものを目指しました。


ーーなるほど、アドリブやハプニングも面白さになっていた『やっぱり猫が好き』が念頭にあるんですね。あらためて、VTuberの特性はどういうところだと思いますか?


五箇:VTuberの特性として、アニメと人間の中間的な魅力があると思います。例えば、同じことをハイスペックの超ゴリゴリのCGでやっても話題にはならないだろうし、ちょっとツッコミどころがあるというか、温かみを感じられるのがいいところで。シチュエーションコメディをアニメでアフレコしていくと、脱線したり、いきなりアドリブを続けたり、変に噛んで笑ったりという、不確定なものは入りにくけれど、VTuberにはそういう遊びがある。見た目は3DCGなのに手法は実写で行うのが独特の面白さだし、アニメほど技術的に綿密にできないところもあるので、そこを逆に面白がってもらえるんじゃないかなと思いました。


ーー1話を拝見したのですが、『フルハウス』のように合間に笑い声が入ってたことも印象的でした。


五箇:そうですね。笑い声は最後まで入れるか迷ったのですが、設定上は三人をお客さんが見ているということで、『フルハウス』も『やっぱり猫が好き』もそうですが、「ここ笑っていいんだ!」というところを与えた方が取っ付きやすいんじゃないかなと。「ここ笑っていいですよ!」というところがないと、すごくハイブローなものに見えてしまい、お客さんが完全に置いてけぼりになるかもしれない。それでは本末転倒だなと思いました。なので、エンターテイメントとして成立する要素として笑い声は必要じゃないかとすごく議論し、最終的に「あの空間は女の子たちだけの空間だから、女の子のお客さんがいる」というところに至りました。


ーーVTuberファンじゃなくても楽しめるように設計されたんですね。


五箇:それが結構大きいです。あとは、アニメっぽいものに対して女性が割と嫌悪感を持つことが多いんじゃないかと思っていて、それを「大丈夫ですよ、女の子が見ても面白いものですよ」という風に伝えたい、ファンじゃない人たちにも見て欲しいという思いはすごくあります。一般化して間口を広げたいですね。この番組を見た開発者やVTuberの人たちが「これが受け入れられたら他のやり方もあるよね」と思ってくれたら、カルチャーとしてさらに広がってどんどん面白くなるだろうなと思っています。


ーーテレビならではの発信の仕方ですね。


五箇:そうですね、VTuberの子たちがYouTubeでドラマをやることはできると思うのですが、ある意味テレビは拡声器なので、彼女や他のVtuberたちがどう広がっていくかを考えた方がいいと考えていました。


ーーだからこそ、今回監督や脚本の方のキャスティングの布陣となったのでしょうか?


五箇:そうですね、リアルな女優さんが演じても成立するように制作できる人たちを集めました。


ーー脚本や監督陣と打ち合わせする上で「これは大事にしよう」という決まりごとはありましたか?


五箇:ルックが3DCGアニメなので、次のカットをネズミに変身させてしまったりと、ファンタジーな内容にもできてしまいます。でもそれをやってしまうとアニメになってしまう。なので、日常的なことの延長線上にあることを話にするべきなんじゃないかということは、すごく議論になりました。最終的に「VTuberドラマ」と謳って、VTuberが女優さんとして別の役を演じ、会話やシチュエーションで起こることや、彼女たちのリアクションの面白さを大事にすべきじゃないかとなり、手堅く真面目に作っています。


ーーそんななかで、猿楽町双葉はオリジナルキャラクターです。


五箇:1人ぐらい新人がいてもいいかなと思ったのと、昔の角川映画みたいに、先に出演が決まってデビューする人がいたらどうなるんだろう? という考えもありました。


ーーなるほど。技術面のスタッフと一緒に作成される上で大変だったことはありますか?


五箇:技術を統括している赤津慧さんというプロデューサーと向井達矢さんという実写専門のチームを僕が全体で統括しているですが、最初監督を含め実写陣とITのチームが文法から言葉から全て違うんですよ。全然話が噛み合わない。ただ、お互いが「これをやらないと進まない」となって、どんどんお互いを理解しようとしてくるんです。最初は「本を一花が持ってきて、見せてから棚にしまう」という動作があったら「これしまっておいてください」と伝えると「しまうというのはどこにしまうんですか?」「本棚のどこですか?」となるんです。つまり、プログラマーチームは座標のグリットを細かく設定してもらわないと戻せない。プログラムを書く数学的な人たちとテレビやドラマ業界の文系の人たちが同じところが作業をするこの感じ、最初はヒリヒリしましたね。


 そのような形でCGチーム、テクノロジーチームの進行具合や容量を考えながら、僕らも脚本を作っていきました。だんだん回ってくるとお互いフォローし合うっていう形になってきて、今までしたことがない体験だったのでそれがすごく良かったです。


ーー業界全体で考えても、非常に新しい取り組みです。。


五箇:そうですね。実写の演出方法を使える、だけどテクノロジーが紐づいているっていう、こんなことは絶対ないので。すごい面白かったですし、そこは1番響いたところですね。


ーー第二弾、三弾と続いていけば今回得られたノウハウを応用して、さらに面白いものが作れる可能性がありますね。


五箇:そうなんです。だから続けていきたいなと思っています。今回の3人じゃなくても、別のキャラクターをオーディションで入れることもできますし、今回できなかった新しい部屋を作ったり、外の公園だけシチュエーション1個増やしたり、増築していくように外側に広げていくと、『四月一日さん家の』の世界も広がっていくんじゃないかと思います。


(平沢花彩)


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