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「キングダム」が“ビジネスの教科書”として人気のワケ

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2019年04月20日 11:30  AERA dot.

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写真三浦崇宏(みうら・たかひろ)/1983年、東京都生まれ。博報堂を経て2017年、独立。ケンドリック・ラマーの国会議事堂前駅の黒塗り広告などで知られるPR/クリエーティブディレクター(撮影/編集部・小柳暁子)
三浦崇宏(みうら・たかひろ)/1983年、東京都生まれ。博報堂を経て2017年、独立。ケンドリック・ラマーの国会議事堂前駅の黒塗り広告などで知られるPR/クリエーティブディレクター(撮影/編集部・小柳暁子)
 古代中国を描く歴史漫画「キングダム」が、ビジネスパーソンに人気だ。多彩な登場人物の誰に共感するか。楽しみも教訓も尽きない。

*  *  *
 天下一の将軍になることを夢見る秦の戦災孤児・信が、後に史上初の中華統一を成し遂げる若き日の始皇帝・エイ政(※エイは瀛からさんずいを除いた字)と偶然めぐりあい、天下統一の夢をともに追い求める──。

 紀元前3世紀の春秋戦国時代の中国を舞台に繰り広げられる壮大な物語『キングダム』(原泰久、集英社)。単行本は53巻まで刊行され累計発行部数が3800万部を突破、現在も「週刊ヤングジャンプ」で連載中の人気漫画だ。今回実写映画化され、4月19日から全国公開される。

【実写化された「キングダム」の場面写真はこちら】

 あまりなじみのない時代設定の歴史ロマン。しかし起業家やビジネスパーソンから熱い支持を集めているという。

「ビジネス的な観点から読まれることはまったく意図していませんでした。嬉しい誤算です」

 3代目の担当編集者である「ヤングジャンプ」編集部の大沢太郎さん(35)はこう語る。

「原さんとしては、ご自身が子どもの頃に読んでいたような王道のアクション漫画という認識だったと思います」

 作者の原泰久さん(43)は理系の大学院卒。システムエンジニアとして会社勤めをし、30歳でデビューした異色の経歴を持つ。社会人経験という下地に、『史記』を読み込み人物ごとにばらばらなエピソードをエクセルで年表にまとめるなど物語全体を俯瞰する目、キャラクターとシンクロさせる力が合わさってキングダムの世界が成立したと大沢さんは考えている。

「ある取材で『原さんはキングダムのキャラクターだと誰ですか』と聞かれて『みんな僕の一部です』とおっしゃっていました。なるほど、だからキャラクター全員が魅力的なんだと思いました」

 特に起業家に支持されている理由を、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授(46)はこう語る。

「ビジネスの最前線とキングダムの不確実性の世界観がマッチしているからです」

 信の戦う目的は、元々は将軍という職業になることだったが、エイ政と出会ってから、彼の「中華を統一して平和な世界を作りたい」というビジョンに共感し、自分のビジョンも変わっていく。これも起業家と同じだと言う。

「徐々に部下が増え会社が大きくなっていくと、組織をまとめるために大義が必要になってきます。大義のない会社は伸びないんです」

 自分たちがやっていることの社会的意義が腑に落ちれば、フォロワーはついてきてくれる。

「信はCEOとかCOO。エイ政がオーナーなんですよね。そこが共感しあうとうまくいく。そのプロセスがすごくリアル」

 キングダムには、戦国時代を彩った将軍、軍師、王や文官、宮女から庶民まで、多数のキャラクターが登場する。

「登場するキャラクターの個性が際立っており役割も違うので、この人は自分に近いという人、あるいはこうなりたいという人がどこかにいるんです」

 イノベーター型として入山さんが挙げるのが桓騎(かんき)だ。

「イノベーションはアイデアだけならいいんですが、それを実行するのはとても勇気がいります。秦の将軍なのに魏の旗を掲げて韓の陣営に突撃する桓騎は、平然とそれをやってしまう。嫌なやつかもしれないがすごい、というスティーブ・ジョブズ型。王翦(おうせん)もイノベーターですね」

 魏の大将軍から楚の客将になった廉頗(れんぱ)のように各国を渡り歩く将軍もいる。

「ビジネスでいうとプロ経営者ですね」(入山さん)

ビジネス書としてのキングダムを世間に広く知らしめたのは、2018年10月にあった「今、一番売れてる、ビジネス書。」キャンペーンだ。東京・山手線の五つの駅に巨大広告を出現させ、ビジネス書仕様の新カバーを着けた単行本が書店に並んだ。

 このキャンペーンの仕掛け人は、The Breakthrough Company GO代表の三浦崇宏さん(35)。数々の話題のプロジェクトで知られる気鋭のPR/クリエーティブディレクターだ。自身もキングダム好きで、独立前の博報堂時代は広告業界とキングダムの世界を重ね合わせて、著名な先輩クリエーターを将軍にたとえたり、自分はまだ百人将だな、と思ったりしていたという。

 当時、キングダムは日本中の経営者やスタートアップの起業家に勇気を与えていた。三浦さんは、ニューズピックスなどのビジネス系メディアが立ち上がり経営者が注目されていたタイミングでビジネスパーソン向けのキャンペーンを打つのは意味があると考えた。

「真実として、キングダムが一番売れているビジネス書だと断言できると思いました。いろいろなビジネス書がありますが、キングダムよりいいビジネス書はないよな、というファクトを真ん中に置きました」

 だからビジネス書仕様のカバーを特別に作ることに一番こだわった。一冊一冊読み直し、内容に合ったビジネス書としてのコピーを作る。そしてそのカバーを着けた単行本を実際に書店に出現させた。

 ビジネス書仕様の『キングダム』が並べられた書店の写真はSNS経由で広がっていった。

「実際にモノを作ったという本気感を感じてもらうのが大事。じゃないと消費者は動きません」

 三浦さんも、現在のビジネス環境とキングダムに描かれている世界は、正解がない時代であるということと、個人の可能性が重視されているという部分で共通点を感じるという。

「現代は人類史上最大に予測不可能な時代と言われています。正義か悪かではなく、無数の多様な価値観があって闘いあっているのはキングダムの乱世と同じ。魏の廉頗や趙の李牧(りぼく)は、秦と敵対してはいますがそれぞれの正義がある。現代の経営者も、事業が優れているのは大前提ですが、個人として思想や目指しているものを明確に発信している方が注目を集めやすい。将たちが個々人のキャラを持って組織を率いているのに極めて近い」

 キングダムの物語の軸は、主人公・信が奴隷同然の扱いから徐々に成長していく姿を描くところにある。最少の組織は五人組。そこから100人の部下を持つ百人将、千人将とバージョンアップしていき、1万人の部下を持ったら将軍になる。三浦さんは言う。

「僕も会社員を辞めて3人で自社を始めて徐々に人が増えて……となりましたが、マネジメントとして成長していく時のフェーズ感の課題がまったく一緒。新入社員から始まって部長、役員という成長と、アナロジーとして勇気づけられる物語なんじゃないか」

 三浦さんの会社ではキングダムは課題図書。新入社員は全員読んでおり、いわば社内の共通言語だ。

「ロールモデルが物語の中にあるので『おまえはヒョウ公(※ヒョウは鹿にれっか)を目指せ!』とか、コミュニケーションのスピードが速くなります」

(編集部・小柳暁子)

※AERA 2019年4月22日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 秦王政(始皇帝)が登場するのは戦国時代の最後期なので、「舞台は春秋戦国時代の中国」という言い方にはやや違和感がある…このニュースとは直接関係無いが。
    • イイネ!0
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  • ネトウヨが云々とピント外れな輩がいますが、今の共産党政権の中国は嫌いでも、歴史的なものはそうでもないという人は少なからずなのではと?
    • イイネ!24
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