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資産家の万引き老人は、万札を放り投げた! 「地位の高い人ほど謝罪しない」現場のリアル

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2019年04月27日 20:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 こんにちは、保安員の澄江です。

 先日、東京都豊島区東池袋4丁目の都道にて、87歳の男性が運転する暴走車が通行人を次々とはね、3歳の女の子と31歳の母娘2人が死亡、8人の方が重軽傷を負うという痛ましい事故が発生しました。加害車両を運転していた人物は、国から勲章まで授与されている元高級官僚の方。これほどの事故を起こしておきながら、身柄を拘束されなかったことから、「上級国民だから逮捕されないのではないか?」などと疑問を覚えた人も多いようです。

 それよりも私が驚いたのは、事故後まもなく息子に電話をかけて、自身のホームページやSNSアカウントを削除するよう指示していたというネット上のウワサです。自宅の電話まで解約させていたという話もあり、耳にしたときは、随分と手際のいいおじいさんだなと感心しつつも、その素早い対応には嫌悪感を覚えました。しかし、この情報は現状、真偽不明とのこと。加害者が、事故原因を車両故障によるものだと訴えていたという報道があり、「事故直後から保身に走った」と感じた人が多かったことから、こうしたウワサが爆発的に広まったのではないかと思われます。被害者やご遺族の心情を思えば、やはり「自分が悪いのではなく、車が悪い」とする加害者の姿勢は、許容できるものではないでしょう。

 万引きの現場では、地位の高い人ほど犯行を否認し、謝罪することなく居直る人が目立ちます。今回は、悪質な手口を用いて犯行に及んでおきながら否認に徹する資産家万引き老人の末路について、お話ししていきたいと思います。

 あれは、2年ほど前の、冬の日のことでした。当日の現場は、東京の中でも1、2を争うと揶揄されるほど治安の悪い街にある生鮮食品スーパーS。店内に大きな生簀を有し、月に一度はマグロの解体ショーを実施するようなタイプのお店で、生鮮食品のほかにも、さまざまな食品を扱う地元の人気店です。ここは、私たちでいう「固い現場」(必ず結果が出せる現場)の一つなので、残業を避けるべく、早目の捕捉を目指して巡回を始めます。

 店内の警戒を始めてまもなく、冷蔵棚の脇にフックで下げられた無料のビニール袋を、必要以上にむしり取る70代と思しき男性が目につきました。男性の着衣は小奇麗ながらも全身がグレー系で統一されており、その顔つきを含めて、どことなくネズミを彷彿させる雰囲気です。「ネズミ男」と、勝手にあだ名を付けて行動を見守ると、ネズミ男は複数のビニール袋をカート上のカゴに入れて歩き出し、刺身コーナーで中トロ刺のパックを手に取りました。それをビニール袋に詰めてカゴの中に放り込むと、続けてホタテのパックを手に取って、同様の動作を繰り返します。客を装いながら、冷蔵棚に並ぶ刺身の値札を確認すれば、ネズミ男が手にした「クロマグロ(天然物)」の中トロ刺は1,600円ほどで、国産のシールが貼られた大粒の生ホタテは1,280円でした。高額な刺身は、どこの商店においても頻繁に万引きされています。そのなかでもマグロは、一番盗られているだろう人気商品と言え、俄然目の離せない状況になりました。

(ちゃんと買うのかしら?)

 そんな思いを抱きながら遠巻きに追尾を続けると、食パン、牛乳、ヨーグルト、チーズなど複数の商品を棚取りしたネズミ男は、刺身のパックと同じように、その一つひとつをビニール袋に詰めてからカゴに入れていきます。カゴの中を覗くと、精算が済んでいるように見え、このままサッカー台に持ち込まれてしまえば、簡単に持ち去られてしまう状況と言えるでしょう。

 すると、売場の片隅にカートを放置したネズミ男は、誰もいないレジ列を抜けて、サッカー台の傍らにあるワゴンに積まれた梱包用のダンボールを手に取りました。そして、先ほど放置したカートのところまで引き返すと、手にあるダンボールをカゴの上に被せて歩き始めます。その足先は出口の方に向いており、もはや精算する気配はありません。

(外に出たら声をかけなきゃ……)

 何度経験しても必ず感じる緊張感を胸に、ネズミ男の後を追った私は、彼が自転車の脇にカートをつけたところで声をかけました。

「あのお客様、お刺身などのお支払、お忘れじゃないですか?」
「ああん? あんた、なに言ってんだ? 全部払ったよ! これ、見てみろ」

 怯むことなく堂々と否認してみせたネズミ男は、鬼の首を取ったような顔つきでカゴに被せた段ボールを除けると、ビニール袋にくるまれた商品群を私に見せつけました。

「これ、全部払ってないですよね? 事務所に同行いただけないなら、今すぐ警察を呼びますけど、どうされます?」
「なんだとお? 呼べよ、呼べばいいじゃないか! おれが払っていたら、あんた、どう責任取ってくれるんだ? それを教えてくれ」

 大声で喚き散らすネズミ男に、周囲の視線が集まります。なるべく早く通報したいところですが、逃げられぬよう袖口を掴んでいるため、うまく通報できません。押し問答を繰り返しながら右往左往していると、たまたま通りかかった警察官が間に入ってくれました。どうやら、この店の近くで交通違反の取り締まりをしていたようで、その帰りに見かけてくれたようです。臨場した警察官による聴取で77歳だったことが判明したネズミ男は、不動産管理業で、この店の近くにあるビルの最上階にフィリピン人の恋人と住んでいると、どこか自慢気に話していました。所持品検査の結果、20万円以上の現金が出てきたので、お金に困っての犯行ではなさそうです。

 警察を呼ばれても動じずに、否認を続けたネズミ男でしたが、防犯カメラの映像を検証されて証拠があがると一転して犯行を認めます。

「映っているなら仕方がない。余計に金を払うから勘弁してくれ」

 ブランド物の派手な財布から数万円の紙幣を取り出したネズミ男は、それをテーブルに放り投げるようにして居直りました。

「お金あるのに、どうして払わなかったんですか?」
「そんなこと、わかんないよ。なんとなく、やってみたかったんだ」

 ビニールやダンボールを使ったのは精算したと見せかけるため、犯行をごまかす目的で長ネギを買ったのだと、苦笑いしながらも少し偉そうに話すネズミ男の姿を見て、ひどくイラついたことを覚えています。

 つい先日、生鮮食品スーパーSで、久しぶりに勤務を担当しました。すると、前半の終了間際に、薄汚れたグレーのジャンバーを着た高齢男性が、手に取ったサバ缶(128円)をズボンのポケットに入れるのを現認。声をかけて事務所に連れて行き、身分を確認させてもらうと、差し出された医療証に書かれた名前に見覚えがありました。

「旦那さん、前に、お会いしたことありましたっけ?」
「ああ、前にここで、あんたに捕まったことあるよ」

 顔をよく見てみれば、かなり痩せてはいるものの、あのネズミ男に違いありません。犯行を素直に認めて、おとなしくしている姿を見ると、前回の時とは別人のようです。

「ずいぶんお痩せになられたから、わからなかったですよ。お病気でもされたんですか?」
「ああ、あれからガンが見つかって、胃を取ったりしたんだ。悪いことはするもんじゃねえよ……」

 その後、サバの缶詰を一つ盗んでしまったばかりに基本送致されることになったネズミ男は、フィリピン人の彼女がガラ受けすることを条件に帰宅を許されました。時計を見れば、すでに午後9時を回っており、声をかけてから6時間以上が経過しています。たった128円の缶詰を一つ盗んだ男のために、ここまで時間をかけなければならない現状に、疑問を抱いているのは私だけではないでしょう。

 帰り際、警察署のロビーで調書の出来上がりを待っていた私に気付いたネズミ男が、警察官の制止を無視して近づいてきました。軽く身構えると、その雰囲気を察したらしいネズミ男が、ひどく申し訳なさそうな顔で言います。

「こんなに遅くまで付き合わせて申し訳ない。もうやらないから勘弁してな」

 この人は、もうやらないだろう。ガラ受けにきたフィリピン人の彼女のお尻が、異様なほど大きかったためなのか、以前と比べて明らかに小さくなったように見えるネズミ男の背中……。それを少し晴れやかな気分で見送った私は、駅前の牛丼屋で遅めの夕食を取ってから帰宅しました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

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  • 「特権は人の精神を腐敗させる。自分を正当化し他人を責めることは彼らの本能のようなものだ。」 (ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督:銀河英雄伝説)
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  • 「地位の高い人ほど謝罪しない」人の見本市のような、国会。
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