『なつぞら』藤木直人が語る、愛され男・剛男役へのアプローチ 「チャーミングに演じられたら」

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2019年04月30日 06:11  リアルサウンド

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 広瀬すず演じるなつの青春模様が眩しいNHK連続テレビ小説『なつぞら』。放送開始から4週が経過し、なつ以外にも、泰樹(草刈正雄)をはじめとした柴田家の面々、登場するだけで笑顔になってしまう、とよばあちゃん(高畑淳子)率いる小畑家の面々など個性的で魅力的な登場人物たちが溢れている。


 その中でも、唯一無二の優しさで物語を包み込んでいるのが、なつを北海道に連れてきた藤木直人演じる柴田剛男だ。強く厳しい泰樹と、しっかり者の妻・富士子(松嶋菜々子)の間で板挟みになる姿に、思わずクスッとしてしまう視聴者も少なくない。


 1999年のNHK連続テレビ小説『あすか』以来の朝ドラ出演となる藤木が、『なつぞら』の現場で感じたこととは何か。じっくりと話を聞いた。


参考:34歳、濃すぎる番長役で朝ドラデビュー! 『なつぞら』板橋駿谷抜擢の背景に“ピュアさ”あり


●「剛男の姿がチャーミングに映ったら」


ーー『あすか』以来の朝ドラ出演となりますが、改めて“朝ドラ”はいかがですか。


藤木直人(以下、藤木):ヒロインを演じているわけではないので、朝ドラに対してどうこう言える立場ではないと思うのですが、多くの人に愛される作品なんだなと改めて思い知らされています。今から19年半前に『あすか』に参加させていただく前は、僕のことを知っている方は世間的に多くはなかったと思います。でも、演じた速田俊作のあだ名「ハカセ」で、さまざまな世代の方から街中などでも声をかけていただきました。それが非常にうれしかったのを覚えています。この『なつぞら』でも、「剛男さん」と呼んでもらえるように頑張れたら。ただ、考えてみると、劇中で「剛男」って呼んでる人はほとんどいないですね(笑)。


ーー藤木さんは剛男の性格をどのように捉えていますか。


藤木:奥原三兄妹のうち、なつだけを北海道に連れてきたところにも表れているかもしれないのですが、優しさは持っているのですが、どこか呑気というか鈍感さを持っている人です。幼少期のなつに、人生の厳しさを教えたのは泰樹さんで、生活に関しては富士子ちゃんに任せていて、剛男が教えたことはなんなんだろうと(笑)。


ーー(笑)。でも、間違いなくなつの人生を導いたのは剛男だと思います。剛男を演じる上で意識されていることはありますか。


藤木:台本を読み始めたとき、戦災孤児のなつが主人公ということで、序盤はもっとシリアスな物語になるのかなと思いました。でも、大森(寿美男)さんの脚本はすごくユーモアがあふれていてコメディタッチでした。とにかく強い泰樹さん、泰樹さんにもはっきりと物を言うことができる強い女性の富士子ちゃん、その間で剛男が揺れている姿がチャーミングに映ったらいいなと思い演じています。


ーー第4週では、剛男が所属する農協の方針をめぐって、泰樹との対立が描かれました。


藤木:農協として新しい改革を進めていかなくてはいけないのに、その障害となっているのが義理の父であるという。ここでも剛男は板挟みなわけです。どちらも間違っているわけでなく、どちらも正しい。泰樹を演じる草刈さんの存在感が絶対的なので、張り合うわけではないですが、それに負けない気持ちを持って演じようと思いました。ただ、問題の解決の仕方も、結局自分の力というよりは、なつの力によるところが大きくて……。そこも剛男らしいんですが。


ーー朝ドラということで、これから剛男も歳を重ねていきます。演じる上で意識されることはありますか。


藤木:映像でできることは限られてくると思うので、外見に関しては深く考えないようにしています。そこはメイクさんや衣装さんの力を借りながらできたらなと。柴田家の子供たちの最初の頃の年齢構成が実際の僕の子どもたちと同じだったので、父親としていろいろとリンクする部分が多かったです。ただ、“おじいちゃん”は初めての経験だからどうなるでしょう。


ーー剛男は孫を溺愛しそうですね。


藤木:いや、泰樹さんみたいにすごく厳しいかもしれません(笑)。


●“朝ドラあるある”エピソード


ーーなつを演じる広瀬さんの印象は?


藤木:お芝居に対してすごく情熱があります。かつて朝ドラヒロインを務めていた松嶋さんは「ヒロインは本当に大変」とおっしゃっていましたが、広瀬さんは現場でその大変さを一切出していないんです。待っている間も台本を読んでいる様子もなく、いったいいつセリフを覚えているんだろうかと思います。ゆったりと、淡々と現場にいてくれるからこそ、撮影も順調に進んでいるんだなと。昨年の6月にロケをして、それから間が空いたんですが、久しぶりに柴田家のシーンがあると、広瀬さんが「柴田家に来ると落ち着く」と言ってくれてるみたいで。それは、僕としても、剛男としても、何よりもうれしいですね。


ーー撮影現場で印象に残っていることを教えてください。


藤木:スタッフの方々が「朝ドラあるある」とおっしゃっていたんですが、朝ドラは家族全員が集まるシーン、つまり食事のシーンが非常に多いんです。だから1日中食事だけの撮影の日もあって。僕は年齢的なものもあるので、実際に食べ過ぎないように気をつけたり、自分のセリフの前では食べていないように調整したりしています。でも、広瀬さんはそんなことは一切気にしていない感じで、食べていてセリフが言えないこともあったりして(笑)。料理監修の住川啓子さんが作る料理が本当に美味しいから仕方ないですよね。


(取材・文=石井達也)


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