元女囚が教える「シャブ屋」の1日――シティホテル暮らしで、月に600万円稼ぐ者も

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2019年05月05日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■ムショで一緒だった尾上縫さんについて話した

 連休はいかがお過ごしですか? まずは宣伝です。

 イースト・プレスから『女子刑務所ライフ!』を出版させていただいてから1年になりますが、なんと岩波新書でも紹介していただきました。『バブル経済事件の深層』(奥山俊宏・村山治著)という本です。

 少し前に取材を受けたんですが、よく意味わかってなくて(すみません)、「新聞に載るんかな?」と思ってたんです。でも、送っていただいたら本やった、と。ちゅうか岩波新書……ぶっちゃけ知りませんでしたよ。担当の編集者さんたちから「すごいじゃないですか!」と褒められて、やっとすごさがわかったくらいです。

 当時は子どもだったんで、あんまり関係なかったんですけど、80年代バブル期って、今もわりとブームですよね。『女子刑務所ライフ!』に、ムショで一緒だった“バブルの女帝”尾上縫さんのことを書いていたので、「尾上さんについてもう少し聞かせて?」と連絡があったんです。いろいろお話しさせていただいたんで、興味ある人は読んでみてくださいね。

 前置きが長くなってしまいましたが、今回は「シャブ屋の1日」です。ふと思いついただけなんですけど、おもろいかなと思って。

 覚醒剤は、「元売り」が海外の組織から密輸して、「大卸」にキロ単位で売ります。「大卸」は、これを「中卸」に転売します。でも販売ルートはいろいろで、「元売り」が「大卸」を兼ねていることもあります。さらに、「中卸」から末端の売人に卸されますが、ほかにも間にいることがあって、最初の値段から「末端価格」(新聞によく出るヤツ)になるまで、だいたい10倍くらいです。「中卸」が末端の売人を兼ねていることもあります。

 せやから、いわゆる「シャブ屋」もいろいろです。普通は末端の売人のことを言いますが、おばちゃんやオジーもいてますし、専業の人もサイドビジネスの人もいてます。女子は1人では危ないから、ボディガードがつくこともありますが、それを言うたら年寄りも1人は危ないですよね。でも、オジーにボディガードがつくのはないと思います。知り合いのオジーはママチャリで配達してましたしね。

 ちなみにシャブ屋でも「本人はクスリ使わない派」はゼロではないですが、だいたいはつこてる感じです。専業のシャブ屋の場合、営業時間を「午後1時から午前1時まで」とか決めてお客さんに伝え、バイ(密売)専用の携帯電話を、その時間だけオンにします。

 たいていお昼過ぎに起きて、まずイッパツ打ちます。タバコみたいなもんですが、もちろんタバコも吸います。それで目が覚めてくるので、携帯の電源を入れて注文を確認します。証拠が残らないようにメールやラインは使わず、通話だけです。

 在庫がなければ中卸に電話をしたりして、ある程度の手配をしたら朝ごはん(?)です。ポン中は甘いものが好きな人が多いです。覚醒剤は“塩”(メタンフェタミン塩酸塩)だからでしょうかね。あんパンやドーナツを6個くらいと甘いコーヒー牛乳を1リットルとか普通ですよ。そして、おなかがいっぱいになったら、「追い打ち」をして、「出勤」です。

 たいていのシャブ屋は、自宅のほかにワンルームマンションとかの「作業場」を借りていて、そこで袋詰めをします。ラブホで詰めることもあります。

 足がつかないように3カ月くらいで部屋を変えて、クルマもレンタカーです。道具(注射器)などは強力マグネット付きのケースに入れて、クルマの下に付けたりします。これは私もやってました(笑)。こうやってお金をかけても十分ペイするのがシャブ屋ですね。クルマでお客さんのところを回って、稼ぐ人は月に600万円くらい売って、半分くらいがもうけになります。もちろん違法だから非課税です。

 でも、お客さんを見つけるのは、あくまでも自分の努力です。お金持ちで口のカタイお客さんを見つけるのもシャブ屋の腕。私の場合は合法で仕入れた睡眠導入剤をつけてあげたりして、サービスのよさも人気やったと思います。そうこうしているうちに夜になり、高いお店で晩ごはんを食べて飲みに行って寝ます。その繰り返しですね。

 ちなみに、私の場合はなぜか月曜日にガサ入れが多いので、それを避けるために週末は高いシティホテルで過ごしていました。捜査情報が入ると、1カ月くらい泊まって潜伏することもありました。「逮捕」と隣り合わせの綱渡り生活でも、毎日おもろかったです。

 私ももうけたお金でマンションでも買っておけばよかったんですが、ホンマに「悪銭身につかず」ですね。服やバッグ、時計など、ブティックを開けるくらい高級ブランド品を買いあさりましたが、これは逮捕(パク)られた時の弁護士費用など、急に現金が必要になった時のためでもありました。今はまったく手元にありません。どこいったんかな?

 もう刑務所に行きたくないですし、あの頃に戻りたいとは思いませんが、最近はヤクザのシノギも覚醒剤とオレオレ詐欺しかなくなって、世知辛いなとは思います。そういえば少し前に「88歳で逮捕(パク)られたポン中」のニュースがありました。それだけ長生きできるなら、シャブはそんなにカラダに悪くないのとちゃうか……と、ちょっと思っちゃいますね。でも、ダメです絶対。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

※この連載が本になりました!
女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)発売中です。

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  • …売人や卸し元を末端価格なみの超厳罰に処するべき。日本は覚醒剤を含めた薬物犯罪に甘過ぎる。
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