保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。
新元号を迎え、かつてないほどの大型連休となった2019年のGW。まだ一人で留守番ができない未就学児の子どもを持つ家庭にとっては、保育園や幼稚園が閉園となり、子どもが四六時中家にいるため、肉体疲労もいつも以上だっただろう。
祝日も関係なく仕事がある親は、連休中の子どもの預け先を見つけることだけでも簡単ではない。ひとくちに「大型連休」といっても、「楽しめずに苦労だけが増えた」という家庭も多かったようだ。
看護師として働きながら、郊外にある認可保育園に3歳になる男児を預けている明子さん(仮名)は、10連休の間に夫婦仲が悪化したように感じたという。
|
|
「急患の受け入れや、入院施設がある私立病院に勤務しています。子どもが1歳を迎えてからは、時短勤務が終わり夜勤も始まりました。夫はフリーランスで、イラストレーターやデザイナーをしており、在宅とはいえ、打ち合わせなどで外出する機会も多いので、普段は私が中心となって育児を行っています。今回の大型連休は、準夜勤の日もあり、夫が息子とほぼ丸一日一緒に過ごす日が多かったんですが、夫は、家庭用ゲーム機で遊んだりした後は、息子にパソコンで動画を見せたまま放置するだけで、公園に出かけたりすることはなかった様子。それなのに、『子どもの子守で疲れる』と言ってきて、イライラしてしまいましたね」
また、共働き家庭からよく聞かれるのは、連休中、子どもの預け先の受け皿が少なすぎるという点。明子さんは、「預け先が見つからなくても自分たちでなんとかしてくれ」という世間の空気を感じたという。
「大型連休であることは事前にわかっていたので、普段預けている保育園も、連休中に開園して、子どもの受け入れを可能にしてもらいたかったです。園に問い合わせた時は『うちは暦通り、連休になります』と一言だけ。役所に問い合わせても、自治体が用意した休日保育が可能な園は10園にも満たないし、受け入れ人数が少なくて、申し込んでもダメでした。もう少し国や自治体に、子どもの預け先のことを考えてもらいたかったです。夫からは『年末年始の休みは、臨時保育所に頼んで』と言われ、言い争いになってしまいましたよ」
保育園に預けられなかった子どもたちは、一体どこでGWを過ごしたのか。都内にある認証保育園に、5歳の女児と2歳の男児を通わせている麻衣子さん(仮名)は、「連休中の出勤日は、実家に子どもたちを預けた」という。
「私は販売業なのですが、出産を機に接客から事務職に異動しました。正社員から時間給のパート社員になって収入は減ったものの、子どもが小さいうちだけの我慢だと思っています。普段もシフトによって土曜勤務はあるのですが、今回の大型連休も、ECサイトなどで販売を続けている関係で、出勤しなければならなくなったんです。夫はウェブサイトの運営を行うシステムエンジニアで、夫の休日出勤と私の出勤日がどうしてもずらせず、埼玉の実家に子どもを預けました」
|
|
連休中に開いている臨時保育所もあったが、子ども二人だと費用が高く、「諦めた」と話す。
「出勤日の前日から実家に預けたのですが、とても後悔しました。母親は、上の子がジュースを飲んだら『虫歯になる。悪い歯が生える』、iPadで動画を見てたら『今からこんなのを与えていたら、ゲーム課金して勉強しなくなる』といちいち文句を言ってくるんです。『まだオムツしているの?』と言って、むりやり長男のオムツを取ろうとすることもあったようで、やっぱり高くつくけど、臨時保育に預ければよかったと思ってしまいました。それ以前に、保育園が開園してくれていれば何の問題もなかったんですけどね」
一方で、子どもを預けられる親側も不満を抱えていたようだ。GW中、幼稚園に通う4歳の孫を世話していたという67歳の瑞希さん(仮名)は、「今回の連休は長く感じた」と語る。
瑞希さんの孫は、12歳と4歳の男児。中学受験を控える長男は、連休中ずっと塾通い、瑞希さんの娘である母もそのサポートのため忙しく過ごしていたという。自宅に次男がいると、走り回ったりしてうるさいため、日中は、近隣のマンションに一人で住んでいる瑞希さんの部屋に預けられることになったそうだ。
「次男は、娘の旦那さんに見てもらいたいですが、一人で公認会計士事務所を切り盛りしているため、忙しいようなのです。実の娘だから言いづらくて黙っていますが、次男は遊びたい盛りで部屋中を飛び回り、下の階からクレームが来ました。娘には、ファミリーサポートや有料のベビーシッターに頼むように言ったものの、『知らない人に、大事な子どもを預けるなんて心配』といって聞いてくれませんでしたね」
|
|
一方で保育士は、今回の大型連休は、ゆっくりと休めたのだろうか。認可や認証保育園など、ある程度、労働条件が明確な園の場合は、完全に休むことができたようだが、認可外の保育所で働いて2年になる智子さん(仮名)は、保護者からクレームが入ったため、急遽、出勤になったと漏らす。
「うちの園は、普段から土曜も預かっていますが、5月4日の土曜日だけは休園予定でした。しかし一部の保護者から『連休中も開けてもらいたい』という要望があり、結局4日と、そのほかの祝日も、少ない人数の保育士で対応することになったんです。私は実家が北海道なので、連続した休みがないと帰省できず、今回は見送りました」
また、智子さんは、連休明けの出勤が不安だという。
「連休明けは、子どもたちの情緒が不安定になりやすいんです。10連休によって、保育園に行くという生活習慣をすっかり忘れてしまい、登園に拒否反応を見せるようになる子も少なくありません。お休み中も登園していた子はいいですが、完全に休んでいた子や、4月から入園して慣らし保育が終わったばかりの子は、またイチからその生活スタイルに慣れなければいけません。グズる子も多いだろうし、保護者の方もイライラするだろうし、憂鬱ですね」
大型連休が終わって、ほっとしているママも多いのではないだろうか。今後の大型連休に向けて、国や自治体には「連休中も子どもを預けられる」制度や仕組みを検討していってもらいたいものだが……。
(池守りぜね)