Wシリーズ開幕戦に挑んだ小山美姫「レースは結果がすべて」入賞果たすも悔し涙

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2019年05月14日 22:21  AUTOSPORT web

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Wシリーズ開幕戦に挑んだ小山美姫
2019年からDTMドイツ・ツーリングカー選手権のサポートレースとして始まった、女性だけのフォーミュラカーレース『Wシリーズ』。世界中から選ばれた18名のドライバーたちのなかで、日本人として唯一参戦した小山美姫は、開幕戦ホッケンハイムで7位入賞を果たしたものの、その内容は大いに悔しさが残るものだったようだ。

 今季から始まったWシリーズは、世界最速の女性ドライバーを決めようというフォーミュラのレース。世界中からオーディションに参加したドライバーたちがいたなかで、狭き門を勝ち抜きシートを獲得した小山は、5月3〜4日に行われた開幕戦のホッケンハイムに挑んだ。

 スターティンググリッドには、Wシリーズの運営責任者のデイビッド・クルサードやクリスチャン・ダナーをはじめ、数多くのゲストも登場。華やかな雰囲気と新緑の美しい爽やかなドイツの気候の開幕戦が期待されたが、冬型の低気圧に見舞われ、日中の最高気温が4〜8度という真冬並みの寒さのレースウイークとなった。

 そんななか、小山は予選で苦戦し17番手。決勝では追い上げ7位に食い込み、6ポイントを獲得した。レース後、小山に初めてのレースの感想を聞いた。

──二度にわたるオーディションを経て、いよいよ迎えたWシリーズ開幕戦でしたが、いかがでしたか?
小山美姫(以下小山):フリープラクティス1では、DTMドイツ・ツーリングカー選手権の車両が走った後の路面で、グリップが上がって速度もアップしているのは分かっていました。ミスをしながらもだんだんタイムは上がっていて、自分の走りが良くなっている感触はありました。走りながら自分のミスをきちんと頭のなかで理解しながら分析していたので、7番手はまずまずだっただけに、フリープラクティス2ではトップをとれるという感覚で走っていました。

──その後予選では苦戦していましたが、何があったのでしょう。
小山:予選では雨が降り出して……。Wシリーズではマシンのセットアップを変更できるところが限られています。だからこそ、限られた部分を最大限に活かすべくセット変更をしなければなりません。しかし、それをできるドライバーとできないドライバーとでは大きく差が出ます。その点で私にはセッティングの知識が足りず、エンジニアとのコミュニケーション不足もあり、他のドライバーと真逆のセットアップをしていたと気づいたんです。周回を重ねるごとになんとか12番手まで挽回し、最終ラップのアタックに集中しようとしていた矢先に赤旗が出て予選中断。その前にも黄旗が出てアタックする機会を逃したり……。結局開幕戦の予選は、攻めることさえ叶わず終わってしまいました。予選が終わった瞬間の気持ちは、悔しいというよりもむなしい気持ちでいっぱいでした。

──理想とのギャップに苦しんだのでしょうか?
小山:Wシリーズの一度目のオーディションはトップで通過、2回目のオーディションはトップ3で合格しているのに、どうしてここへきて17番手という結果で予選を終えてしまったのか、私の気持ちは屈辱でしかありませんでした。日本からわざわざ応援にホッケンハイムまで来てくださった方々もいらっしゃったので、皆さんを笑顔にできる走りをみせたかったという悔しさで、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

──雨で苦しんだ予選から、決勝レースはまさかのドライコンディションでした。
小山:雨のレースのつもりでいて、気分を切り替えたところで晴れてきて、天気にふりまわされてしまいました。参戦18台中17番手というスタートポジションであれ、絶対に表彰台に立ってやるという気で、フォーメーションラップは十分にタイヤをあたためて挑みました。最初のスタートで5台抜きを決め、これならいける、これからだと思ったらセーフティカーが入り、その時間がレースの半分近くを占めるという長さでした。その後もなんとかペースを上げて7位に入賞できたのは良かったものの、やはりすべて予選の結果がものをいうと実感しました。

──しかしファステストラップを記録し、十分アピールできたのでは?
小山:いくらファステストラップを出したからとはいえ、レースは結果がすべてなので意味はないですね。日本を“背負っている”とまでは言えませんが、参戦している唯一の日本人として、せめて速さも強さもみせたかったです。予選17番手で、そのままレースも不調のままで終えていたら、やっぱり“ただの日本人だ”と思われてしまいます。だから本気で表彰台を狙い、自分がいまコース上でやれることは全部出し切ろうと思いました。レース終了間際にひとり抜きましたが、ヘルメットの中の私は絶叫状態なほどでした。さらに貪欲に前の集団を抜きにかかろうとしたところで終了となってしまいました。

 日本から応援に駆けつけた家族にも支えられながら挑んだ小山のWシリーズの開幕戦。初レースを終え、マシンから降りた途端に涙を流す小山に、まわりにいたヨーロッパの関係者やメディアは、数々のオーバーテイクをみせファステストラップを出した充実の涙だと思ったようだったが、実際はそれとは真逆の悔し涙だった。

 最後列からのスタートながら見事な追い上げに賞賛の声が多く上がった一方で、小山自身は経験値や知識の少なさを痛感した様子だ。Wシリーズを通した小山の成長に期待したい。

 Wシリーズ第2戦は、5月17〜18日にベルギーのゾルダーで開催される。

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