Red Velvet、LOOΠΔら手がける若手プロデュースチーム MonoTree 大衆音楽の王道守る美学

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2019年05月19日 08:41  リアルサウンド

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 日本でK-POPがメジャーなジャンルとなったのは2010年のこと。ガールズグループの少女時代やKARAの大ブレイクがきっかけだった。それから10年近く経ったが、サウンドの方向性と質感は当時と今とではだいぶ変わってしまった。


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 ここ数年のK-POPのメインストリームはEDMである。しかし、PSYの「江南(カンナム)スタイル」(2012年リリース)が世界的ヒットとなる前は、シンセ中心の華やかなダンスポップが主役だった。中でもKARAやボーイズグループのINFINITE、BOYFRIENDといったアイドルたちのヒット曲における、甘酸っぱさや切なさをたっぷり込めた音作りは多くのリスナーに愛され、日本でもこうしたサウンドをきっかけにK-POPにはまった人も多かったに違いない。


 前述のグループの主要な曲を作っていたのはSweetune(スウィッチューン)という制作集団だ。常にソフト&メロウに響くことを心掛ける姿勢は日本の音楽業界でも高く評価され、SMAPに楽曲を提供するなど一時は相当人気があったものの、残念ながら現在は以前ほどの存在感はなくなってしまった。「やはりEDM全盛期に彼らのスタイルは受けないのだろう」、そう思っていたところ、面白いことに最近はSweetuneの美学を受け継いだ若手チームの活躍が目立ってきている。


 そのチームの名前はMonoTree(モノトゥリー)。とりあえず“チーム”と書いたが、2014年12月に法人の手続きをしているので、会社といったほうが適切なのかもしれない。プロデューサーや作詞・作曲家、A&Rなど計14人(2019年5月時点)が参加しており、中心メンバーはかつてSweetuneに所属していたというから、サウンドカラーが似ているのも合点がいく。


 MonoTreeの存在を意識するようになったのは、Red Velvetが2016年にリリースした「My Dear」あたりだろうか。マーヴィン・ゲイを思わせるソウルフィーリングや複雑なコード進行を取り入れつつも大衆的なメロディラインをキープした同曲は、K-POPの中でもトップレベルと言えるほどの仕上がりだ。


 とはいえ、Red Velvetではアルバムの中の1作家にすぎなかった彼らに、多くの人たちが関心を寄せるようになったのは、ガールズグループ・LOOΠΔ(LOONA/今月の少女)への提供曲である。各メンバーのソロ曲をはじめ、派生ユニット曲、グループで出した曲などで様々なスタイルを披露しており、さながらMonotreeの商品カタログのようだ。


 LOOΠΔへの提供曲を聴くとSweetuneと異なる部分も見えてくる。グループとして出した曲「Butterfly」が良い例だろう。人懐こいメロディラインは相変わらずだが、トラップをさりげなく取り入れたトラックで“フレッシュさ”を演出するという点に彼らの独自性を感じる。


 そしてMonoTreeがプロデュース力を100パーセント発揮したのが、ガールズグループ・ELRIS(エリス)の「Pow Pow」だ。インパクトのあるハードなギターリフではじまり、渋谷系のサウンドへ、そしてエレクトロポップになったかと思うと開放感のあるサビが登場する、といった具合にかなり凝っている。グループのキュートな魅力を損なわない程度に実験的な試みをしつつも、思わず口ずさんでしまう親しみやすさ。これこそがMonoTreeの最も得意とするところだろう。


 比較的ガールズグループに関わることが多いチームだが、最近は男性アーティストとのコラボレーションも目立つ。今年3月にリリースされたSUPER JUNIOR-RYEOWOOKの「桜の花が咲く頃」も、実はMonoTreeの作品である。彼ららしい甘いメロディが印象的なポップバラードで、J-POPを意識したポップなアレンジにプロの技が光る。


 SweetuneからMonoTreeへ。そこで引き継がれたのは「曲はメロディが何よりも大切」ということではないだろうか。AメロからBメロへ進み、盛り上がりがピークをむかえたあたりでインパクトのあるサビに突入するという大衆音楽の王道をしっかり守る。両チームの数々の楽曲は、それが作り手の良心だと強く主張しているようだ。


 トラップ、トロピカルハウス、ムーンバートンとトレンドがころころと変わっていく状況においても、ブレない美意識。K-POPが海外で人気を獲得するために必須の要素ではないのかもしれないが、韓国の音楽シーンを長い間見続けてきた者としては、消えずにずっと残ってほしいと思っている。(まつもとたくお)


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