ジェニーハイはなぜ“自己紹介ソング”を歌う? 「ジェニーハイラプソディー」に見るバンドの強み

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2019年05月19日 09:31  リアルサウンド

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 ジェニーハイというバンドをご存知だろうか。芸人のくっきー(Ba/野性爆弾)、小籔千豊(Dr)、ミュージシャンの中嶋イッキュウ(Vo/tricot)、川谷絵音(Gt,Vo/indigo la End、ゲスの極み乙女。など)、ゴーストライター騒動で一躍時の人となってしまった作曲家・ピアニストの新垣隆(Key)という異色の5人組バンドである。「ジェニー」はフランス語で天才を意味し、「天才を超える」という意味を持つ。


(関連:ジェニーハイが示す、バンドシーンの指針「意図した範囲に収まっていると限界がある」


 昨年10月にリリースされた1stミニアルバム『ジェニーハイ』には、全6曲それぞれ違うタイプの曲を収録。川谷はこれについて「どの曲に反応があるのか分析」するためだったと語っている(参考:https://realsound.jp/2018/11/post-273142.html)。この中の「ジェニーハイのテーマ」は、メンバー5人がラップを披露する自己紹介ヒップホップチューンで、YouTubeの再生回数が予想以上に伸びた楽曲である。そして今回、これに続く2曲目の自己紹介ソング「ジェニーハイラプソディー」が先日公開された。


 川谷と言えば、indigo la End、ゲスの極み乙女。、ichikoro、 DADARAYなど、「(バンドの)掛け持ち」の天才であり、SMAP、山下智久、私立恵比寿中学などに楽曲提供も行ってきた。川谷は最近、indigo la End「はにかんでしまった夏」、ジェニーハイ「ジェニーハイラプソディー」、ゲスの極み乙女。「秘めない私」と3バンドで立て続けに新曲を発表したが、同じ人物が作ったとは思えないばかりか、各バンドの世界観をさらに確立させていて驚かされた。一つの世界観を定着させるだけでも大変なことだが、川谷の生み出す音楽はそれぞれのバンド間、そして他の音楽ともテイストがかぶることはない。


 ジェニーハイは、メンバーそれぞれが違う場所に軸足を置き、かつ個人としてのキャラも立っている。そうなると、大抵の場合は「片手間」の企画モノ・ネタバンドとして見られ、その音楽性には目が向きにくいものだ。しかし、川谷の書く曲はどれも音楽性が高く、芸人メンバーの2人もミュージシャンである他メンバーを尊敬し、「川谷Pの書く曲をきちんと演奏したい」と猛練習をしている。ジェニーハイは存在のキャッチーさに頼らず、音楽性で勝負する姿勢を貫いている希有な企画バンドだと言えるだろう。また、この「片手間」を逆手に取ったことで試作的でのびのびとした一面が開花している。実際、川谷は芸人メンバーの演奏技術に合わせて曲作りも行ったと言い、「シンプルなビートだからこそ映える歌詞もあるんだなと、このバンドで勉強させてもらいました」と語っている(参考:https://numero.jp/interview123/)。ジェニーハイによって、川谷の音楽創作の可能性がさらに広がったと言えるだろう。


 しかし当の本人たちがどれだけ音楽に本気でも、リスナーが受け入れないということは多々ある。実際、「片目で異常に恋してる」を聴いた時は、短期間で活動を終えるバンドかと思われた部分も正直あった。だが、続くミニアルバム『ジェニーハイ』で曲幅の広さに「おや?」と見方がかわり、今回の「ジェニーハイラプソディー」で「参りました」という気持ちである。


 「ジェニーハイラプソディー」で彼らは、メンバーのクセが強いことを活かし、「アイドル的」かつ「音楽性が高い」という欲張りを実現した。自己紹介曲を立て続けに2曲出すのはまさに「アイドル的」であり、「片手間」であるがゆえの自由な発想の産物であろう。とはいえ、自己紹介ソングで〈ゴーストライター!〉〈掛け持ちさせたらこっちのもん〉などと歌うと、自虐的で狙っていると批判がきそうなものである。しかし、技巧的なサウンドで奏でられる軽やかなメロディ、一人一人違った個性的な歌い方、〈今は違うけど みんな理不尽だ〉というピリリとした歌詞、その全てが相乗効果し、トータルでぐっと来てしまう。中毒性も抜群で、〈ジェジェジェニーハイ〉というサビは耳から離れない。公開から10日で200万回再生に届く勢いを見せているMVでは、5人が揃って銭湯でキレッキレのダンスを披露し、中毒性を高めることに大きく貢献している。indigo la Endが“美しく情緒的”、ゲスの極み乙女。は“ヒップホップ・プログレ・ロック”ならば、ジェニーハイは“アイドル性・中毒性・音楽性の高さ”が一つの代名詞となっていくかもしれない。


 今後のジェニーハイのキーマンを勝手ながら挙げさせてもらうとすれば、ガッキー(新垣隆)だと思う。カンペを持ちながらラップを歌ったり、MVで思い切り水をかけられたり、〈ゴーストライター!〉とポーズを決めて叫んだりと、芸人さながらのイジラれ姿が可愛らしいのに、音楽の才能は格別という最高のギャップを持つ。ガッキーは川谷のインタビューを本人の目の前で読むなど、川谷の才能に(照れながらも)興味と尊敬を示しているらしい(参考:https://ontomo-mag.com/article/interview/geniehigh1/)。2人の才能が融合し、「ネタバンドなのに、チャートを総なめ!」なんて新時代さえ予感させてしまうバンド・ジェニーハイ。川谷のTwitterによると「近々ちゃんとしたバンド曲も準備している」「5人の色気がたっぷり詰まってる」と言うから、今から楽しみで仕方がない。(深海アオミ)


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  • うん十年ぶりに一曲ポチってしまった。現実の世界の方がよっぽどドラマチック。全ては作品のための仕込みだったんじゃないかと。映像がどれも完璧�Ԥ��Ԥ��ʿ�������
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