『劇場版 FFXIV 光のお父さん』制作現場に潜入! 山本監督「『CGで撮ったんでしょ?』と言われれば勝ちですね(笑)」

0

2019年05月21日 08:41  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 人気RPGの「ファイナルファンタジー」シリーズを“テレビドラマ”という衝撃の形で初めて実写化した『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』からはや2年。今度はその『光のお父さん』が映画化するというまたしても驚きのニュースが飛び込んできた。


(参考:『FFXIV』オフィシャルバンド・THE PRIMALSが初ライブツアー “光の戦士”たちも熱狂の一夜に


 『FFXIV』プレイヤーのマイディー氏が、自身の運営するWebサイト「一撃確殺SS日記」で執筆していた「60歳を超える父親に『FFXIV』をプレイしてもらい、自分は正体を隠し、フレンドとして共に冒険を続け、最終的に息子である事を打ち明ける」という連載『光のお父さん』を元にしたこのドラマ。果たしてその内容は、結末までしっかりと描いたテレビドラマの“アナザーストーリー”的なものになるのか、と疑問を抱いていたところ、制作現場への潜入取材を行えることになった。本稿では、そこで見聞きしたことを整理しながら、映画『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』の裏側に迫りたい。


 スタジオに入り、取材陣が待機していると、そこに登場したのはドラマ『光のお父さん』の名物プロデューサーである“ぴぃさん”こと渋谷恒一氏だ。現場を見てもらう前にと、今回の作品について話し始めた。まず、結果から言えば映画『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』は、新キャスト、新脚本で描かれるドラマ版とは違う家族で紡がれる物語になるらしい。


 さらに、前回はオンライン上に展開されているエオルゼアの世界で、他プレイヤーも活動するなかで撮影していたことが記憶に新しいが、今回はスクウェア・エニックス社より撮影用に開発サーバーと同等の環境が提供された。


 そこから、ゲーミングPCが所狭しと並んでいるスタジオで撮影の模様を、別室にて山本監督とマイディー氏に話を聞く時間が設けられた。彼らの発言やスタジオの様子などについても記そうと思う。


 山本氏いわく「2017年1月にゲームのバージョンが上がって、グループポーズに大幅なアップデートが入ったりと撮影環境がよりよくなったのが悔しかったので、そういう機会(映画化)があればとは思っていました」と、ドラマ放送後のバージョンでやれることが増えたり、開発サーバーを使えるようになったことで、細やかな演出にこだわれるようになり、その結果大変ではあるが納得のいくものが作れていると明かしてくれた。


 スタジオのゲーミングPCには、山本氏、マイディー氏のほか、多くのプレイヤーが山本氏の指示を聞きつつ、画面に向き合いながらキャラクターを操作していた。渋谷氏によると、ここにはじょびネッツア(マイディー氏がマスターを務める「FC」)のメンバーなども参加することがあるという。マイディー氏もすっかりキャラクターを使った演技はお手のものになっており「キャラクターを動かすいちアクターとしては、ドラマの時の課題が残っていたので、もうちょっとやりたいという気持ちがあった」と銀幕デビューにますます燃えているようだった。


 また、ドラマ撮影時に初めて『FFXIV』をプレイした山本氏も、いまや同ゲームの世界を知り尽くしたプレイヤーの一人となった。その結果、どこにいけば何があり、どういうシチュエーションで撮影できるかと工夫できたことも大きなポイントになっているという。演出面について、同じ部屋で指示をしながらプレイ〜撮影まで臨めることの利点を聞いてみると、マイディー氏は「インディ(父親が操作するキャラクター)とマイディーが演技している後ろで違う動きが入ってくるようにしたりと、細かく演出を入れてもらえるので、だいぶ画変わりしたと思います。部屋の中の大きなモニターに、監督が撮影した映像が映るようになっているので、やったあとにみんなでプレイバックできるのもよかったです。前は何が良くて何がダメでというのも、出来上がるまではわからないままだったので」と語り、山本氏は「演出が近い距離でできるようになった分、細かいお願いは増えました(笑)」と、細部へのこだわりを明かした。


 さらに、記者から「ドラマ版より映画は尺がコンパクトになるわけですが、シーンの選出はどのように決めた?」と質問が飛ぶと、山本氏は「マイディーさんのブログのファン、ドラマのファンがいることも考えると、ある程度残しつつ、全く新しいお客さんに伝えるためのものにもしないといけないわけなので、そこに関しては議論を重ねましたし、そもそも尺が長いという指摘もあったのですが、削りたくない、削れないよねというところに落ち着きました」と、激論の末に今の長さへ達したことを述べる。また、新キャラの妹については、マイディー氏が「2人で会話するより3人のほうが転がりますし、展開が早くなるので」、山本氏が「お父さんとアキオが言葉をかけづらい状況があるなかで、ハブになる人物が必要でしょうということになり、お母さんというものではなくて、もう少しいい具合の立場ーー妹がいれば、お互いに文句もいえるんじゃないかなと」と、新設定の裏側を話してくれた。


 最後に、同作の注目ポイントについて尋ねると、山本氏は「実際のゲームキャラを動かして、それが銀幕の画面に耐えられるんだというのを知ってほしい。『映画とはこうあるべき』みたいな先入観を取っ払って、ゲームでもこうして映画が撮れると思ってもらうことは、この作品に関わるモチベーションにもなっているんです。だから『これCGで撮ったんでしょ?』と言われれば勝ちですね(笑)」とコメント。マイディー氏は「基本的には親子のドラマですけど、僕としてはこれがオンラインゲームの可能性であり、オンラインゲーマーの一つの夢の形であるわけです。だって、自分のプレイが映画になるって、すごいロマンがあるじゃないですか。『ゲーム』という性質上、敵を倒したりレベルを上げたりするところが注目されるんですけど、『FFXIV』はそうじゃなくて、ゲーム内でコンサートが開かれたり、バーを経営しているひとがいたりと、文化的な発展をしている。そういう多様性があるのが今のオンラインゲームだって、もっと知ってほしいですね」と、ゲームの魅力を熱弁し、この日の取材は終了した。


 なお、ドラマ版は6ヶ国語に翻訳され、230の国と地域で配信されたという同作。今回の映画もどこまで多くの人が目にし、新たなオンラインゲーム×映画の可能性に気づくことができるのか、今回の現場取材を通して、ますます楽しみになった。


(中村拓海)


    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    オススメゲーム

    ニュース設定