<小学校受験のお作法・5月>お受験業界は15年前に大きく変動、不遇の「代々卒業生」

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2019年05月21日 11:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

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【小学校受験のお作法2.0】今回は5月編として、いよいよ本格的にスタートする学校説明会において、保護者が気をつけるべき点やNG行動を伝授いたします。さらに、15年前を境に大きく変わったお受験世界の“いま”をお届けできればと思います。

■学校説明会での注意点

 5月に入ると、運動会や授業見学・体験などの公開行事、そして学校説明会がいよいよ本格的にスタートします。事前にネット上から申し込みが必要なエントリー式の学校もありますので、志望校のホームページはこまめにチェックしておきましょう。

 それでは、さっそく学校説明会での注意点をお話していきたいと思います。

 まず、ほとんどの学校の説明会は“保護者のみ”です。お子様はご実家や幼児教室、一時保育施設などに預けましょう。そして実際に説明会に出向いたら一字一句、聞き逃さないよう、先生方のお話に耳を傾けてください。説明会は学校側からの大きなメッセージです。大手の幼児教室では、説明会の要約を配るところもあります。

 しかし、そこには先生方のお言葉すべてが書かれているわけではありません。情報をまとめた幼児教室の先生が“必要ない情報”と切り取った部分が、特定のご家庭にとってはいちばん重要である可能性も高いため、ご自身の耳できちんと聞くことが重要かと思います。説明会の日程が重なった場合は、夫婦で手分けをし、気になる学校には必ず参加しておくことをオススメします。

 そして開催場所は、講堂がほとんど。そのため、スリッパなどを持参する必要は基本的にはありませんが、どんな場合にも対応できるよう、念のためスリッパと靴袋はご準備しておいてください。服装は通常の“お受験ルック”です。

 また、高いヒールをはいて行かないようお気をつけください。学校によっては、校庭に特殊な素材を使っている場合があります。ピンヒールで傷をつけることのないよう、細心の注意が必要となります。そして、たとえ会場で知り合いに会ったとしても、派手に手を振るなどの軽率な行動は控えるべきでしょう。

 “この時期の説明会だから、まだ大丈夫”と、髪の色やネイルが普段どおり明るいままの方がいらっしゃいますが、本番まで残り半年です。派手な髪の色やネイルや服装、ブランド物の使用などは現時点から控えましょう。

 学校に対するエチケットとなるだけでなく、ほかの保護者からの“ツッコミどころ”を減らすこともできます。

 “ふだん茶髪のくせに試験当日だけ簡易染めしてきた”などと、ほかのお母様たち(将来、お子さんと同じクラスになるかもしれません)から陰口を言われないように、まずは半年間だけの我慢と割り切りましょう。

 保護者の服装や髪型なんて関係ないというのは、慶應義塾などに特別縁故のある方々に対してのみ当てはまることなのだと、感じとっていただきたいです。

 また学校説明会の会場では、書店などでは入手しにくい学校関連の書籍を販売しているところがあります。お受験に役立つ情報を得ることもできますので、本命の学校であれば購入をオススメいたします。その際、ぐしゃぐしゃなお札で支払うのは失礼となりますので、あらかじめ1万円を1000円札の新券に銀行で両替するなどして持参しましょう。

■個人情報保護法が変えた、小学校受験の真実

 さて、幼稚園や小学校受験が15年前を境に大きく変わったのはご存知でしょうか? 

 そのきっかけとなったのは、個人情報保護法です。

 平成15年に個人情報保護法が成立し、願書や面接での、細かい個人情報に関する記入項目や質問が大幅に減ったことにより、お受験の世界は大きく変わることになりました。

 例えば、学習院初等科の願書を見てみますと、15年前は両親・兄弟・祖父母にいたるまで氏名の記入欄があり、それぞれの氏名の横には最終学歴を記す欄もありました。しかし、現在はそのようなスペースは一切なく、“自由記入欄”となっています。加えて、かつて記入が必須であった、卒業生であることや特記すべき経歴などは、ほとんどの学校において、すべて“備考欄”に記入することになりました。

 あくまでも備考ですので、記入しなくてもいいわけです。

 つまり、個人情報保護法によって、お受験に家柄が重要視されなくなってきたわけですね。以前は小学校から名門私立出身であるといえば、“特権階級”に近い特別なご家庭の方が多かったのですが、現在は当日の試験さえできれば受かるという実力社会に。特別だった小学校受験も広く門戸が開かれたのです。

 そして、このタイミングを見逃さなかったのが“幼児教室”です。かつては暗黙の了解のもと、特別な人しか持てなかった名門小学校の受験資格を“誰しも”が持てるようになったと、大がかりにアピールを始めたのです。

 中学受験の塾のように、分野別に授業を分けて、得意・不得意分野を徹底的に攻めるメソッドを取り入れる幼児教室などが現れ、人気教室ともなれば順番待ち。

 幼児教育界の“林修先生”のようなカリスマ教師までもが出現するなど、幼児教室戦争が勃発したのです。いずれにしても、こうした教室は、莫大な情報量から学校の方針や試験内容を分析したうえで授業カリキュラムを組んでいるため、入会すれば誰でも受験準備ができるようになりました。

 当然、こうした裏で面白く思っていないのが、いままでは名前だけ書けば入学できていたような、代々出身の卒業生家庭です。受験準備に惜しみなく財力を投入し、寄付金も多いご家庭(経済力のある芸能人やベンチャー企業の社長、外資系企業など)であれば、卒業生でなくとも財政難の学校は採用してしまうこともあり、卒業生家庭の強力なライバルとなってきたからです。

 正直、多くの私立学校の経営は火の車です。広大な土地を新校舎増築用に購入したにもかかわらず、建築費の捻出ができず放置されている学校、裏庭の植木すら整備できず、近隣から苦情が入っている学校もあります。

 とはいえ、学校側もプロです。創立100年の学校ともなれば、半世紀以上、面接で“よし”とする家庭を選ぶ目は備わっています。

 ただ逆にいえば、“願書と面接”をクリアする“演技力”さえ身につけて、学校側に“よし”と思わせればいいわけです。もちろん、入学してからボロは出てしまうかと思いますが、子どもの一生が決まるとなれば、合格を勝ち取るために多少の演技をするのもときにはアリなのかもしれません。

<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design

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