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有機スズ化合物に関して「環境ホルモン」という言葉を聞かなくなった理由

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2019年05月22日 21:01  Business Journal

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Business Journal

写真「Gettyimages」より
「Gettyimages」より

●有機金属化合物


 有機金属化合物は有機物と金属が結合したものの総称です。食品に限って考えると、人にとって有用なものと安全性に気をつけなければならないものとがあります。


 食品に関係する有機金属化合物としては銅、亜鉛、スズ、ヒ素、水銀があります。これらの化合物は無機金属化合物と比較すると、毒性が強いものと毒性が非常に弱いものとがあります。


●有機銅化合物


 食品に関係のある有機銅化合物は、農薬(殺菌剤)としてオキシン銅が許可されています。特に食品衛生法の違反もなく、殺菌剤としての効果もあり問題になっていません。食品添加物としてはグルコン酸銅や銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウムがあります。


 グルコン酸銅は、食品衛生法で母乳代替食品および保健機能食品以外の食品に使用してはならないとなっています。これらが添加物として許可された理由は、銅の不足を補うためのものです。母乳代替食品は大規模な調査により銅の含量が母乳の100分の1程度であることがわかりました(注1)。銅が欠乏すると発育の遅れ、貧血、多核白血球の減少、筋肉の緊張低下などの恐れがあるため、乳及び乳製品の成分規格等に関しては省令によって「厚生労働大臣の承認を受けて調整粉乳に使用する場合を除いて、母乳代替食品を標準調乳濃度に調乳したとき、その1L(リットル)につき、銅として0.60mgを超える量を含有しないように使用しなければならない」となっています。


 保健機能食品は食品衛生法により、いわゆる健康食品のうち、国が安全性や有効性等を考慮して設定した規格基準等を満たす食品で、通常の食品の形態をしていない液剤、カプセル、顆粒及び錠剤に限り使用できることとなっています。保健機能食品に加えるとき「当該食品の一日当たりの摂取目安量に含まれる銅の量が5mgを超えないようにしなければならない」となっています。


 なお、米国では、グルコン酸銅は一般に安全と認められる物質(GRAS 物質)として取り扱われ、栄養強化剤としてサプリメント類、あめ類、飲料等に用いられており、使用量の制限は設定されていません。


 銅クロロフィルや銅クロロフィリンナトリウムは青〜緑色であるため、着色料として許可されています。使用対象食品が決められており、昆布、野菜類や果実類の貯蔵品、チューインガム、魚肉ねり製品、生菓子、チョコレートおよびみつ豆缶詰中の寒天に、銅クロロフィリンナトリウムについては、あめ類にも使用が許可されています。


 植物の緑色はクロロフィルですが、ワラビ等を銅鍋で煮ると綺麗な緑色になるのは、鍋から溶出する銅イオンがワラビのクロロフィルのマグネシウムと置き換わるためです。特に安全性は問題ありません。


●有機亜鉛化合物
 
 グルコン酸亜鉛は、グルコン酸銅と同じく食品衛生法により母乳代替食品と保健機能食品以外の食品に使用してはならないことになっています(注1)。食品添加物として許可された理由は亜鉛強化のためで、不足すると成長が遅れる、皮膚炎や下痢などの症状が表れやすいなどです。


 添加量としては「母乳代替食品を標準調乳濃度に調乳したとき、その1Lにつき、亜鉛として6.0mgを超える量を含有しないように使用しなければならない」となっています。グルコン酸亜鉛は保健機能食品に使用したとき、「当該食品の一日当たりの摂取目安量に含まれる亜鉛の量が15mgを超えないようにしなければならない」となっています。


 米国では、グルコン酸亜鉛はGRAS 物質として取り扱われ、栄養強化剤としてサプリメント類、あめ類、飲料等に用いられており、使用量の制限は設定されていません。また、EUではグルコン酸亜鉛等の栄養強化剤は、食品添加物ではなく、食品成分扱いとなっており、調製乳についてのみ使用量の制限があります。普通の食事をしていれば、不足することはありませんが、カキをはじめ魚介類や種実類に多く含まれています。


●有機スズ化合物


 有機スズ化合物は多くの種類があります。過去に話題となったのが、内分泌かく乱化学物質(いわゆる「環境ホルモン」)作用があるのではないかということで一時期、環境ホルモンとしてテレビや新聞で連日騒がれました。


 酸化トリブチルスズ(TBTO)、トリブチルスズ(TBT)トリフェニルスズ(TPT)などの有機スズ化合物が船底塗料や魚網防汚剤などに使用されていました。その理由は、船の底の部分に海藻や貝等が付くと船の速度に大きな影響を与えるだけでなく、ガソリンの消費量も大幅に増えてしまうからです。また、魚網に海藻や貝が付着するといけすの魚が酸欠を起こして死んでしまうなど、いろいろの障害が出てしまいます。


 しかし、イボニシなどの巻貝にはメスがオス化する現象に影響を与えることがわかってきました。そこで1980年当初から世界的に船舶の船底などに有機スズ化合物を使用しないという取り決めがなされました。


 魚介類について国や各地の衛生研究所等で継続的に海産物の有機スズ化合物の調査をしています。船底塗料や漁網に使用しなくなった効果もあり、魚介類からの検出量は検出しない、あるいは微量で、格段に少なくなっています。


 食品と関連した有機スズ化合物の慢性中毒の事例はありませんが、ブチルスズ化合物製造従事者が味覚の減退を訴え、その他の症状は後頭部の頭痛、鼻血、倦怠感、肩こりなどであったことが報告されています。


 東京都健康安全研究センターは平成19〜26年度の間に東京都内で流通していた輸入水産物(魚介類180検体)について有機スズ化合物の含有量調査を行っています。その結果、TBTは魚介類180検体中47検体から0.01〜0.03 ppm、TPTは180検体中18検体から0.01〜0.12 ppmであり、通常の摂取量では安全なレベルであったと結論付けています(注2、3)。


 北海道衛生研究所は平成11〜26年度に魚介類中の有機スズ化合物(ジブチルスズ、トリブチルスズ、トリフェニルスズ)調査をしています。初年度から安全性に問題がなく、さらに徐々に減少しているとの報告をしています(注4)。その他、各地の衛生研究所で実態調査を行っていますが、特に問題となる結果はみられません。
 
 また、有機スズ化合物はプラスチックの安定剤や樹脂合成の触媒などに利用されていますが、人に対して特に問題になっていません。日本でも多くの研究者が研究対象とした環境ホルモンという言葉も、あまり聞かれなくなりました。
(文=西島基弘/実践女子大学名誉教授)


注1)乳幼児における亜鉛と銅の重要性
注2)東京衛研年報, 52, 194-200, 2001
注3)東京健安研セ年報 66, 217-222, 2015
注4)道衛研所報 65, 79-81,2015


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