「母の日・父の日廃止は神経質」の声も……親も保育士も困惑、保育園“家族イベント”の在り方

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2019年05月23日 21:32  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。

 全国的なイベントとして、いまだ根強く残る「母の日」や「父の日」といった家族イベント。幼稚園や保育園などで、母や父の似顔絵を描かされた記憶がある人も多いと思うが、現在こうした家族イベントは行われることが減ってきているという。その理由は、「シングルマザーやシングルファザーなど、保護者の在り方が多様化してきているため」のようだ。

 関東近県の幼稚園に3歳になる男児を預けている専業主婦の和美さん(仮名)は、園で母の日、父の日イベントがなかったことを不満に感じたそうだ。

「うちの学年には、母子・父子家庭の子どもはいないのですが、数年前から母の日や父の日に、特に何もやっていないようです。理由を聞いてみたら、廃止した当時にシンママがいたから、卒園まで配慮したと。一部の保護者のために、ほかの家庭も合わせるのはおかしいと園側に申し立てたものの、『今後、またそのような保護者の方もいらっしゃるかもしれないので、家族イベントはやらない』という返答でした。私は子どもからの“母の日”のプレゼントや製作を楽しみにしていたのに、その気持ちを踏みにじられた感じがしてショックでした」

 和美さんは、幼稚園や保育園よりも地元にあるショッピングモールなどの方が、家族イベントに積極的だと感じたという。

「知り合いのママ友が通っている保育園も、家族イベントで子どもに絵を描かせる際、ママやパパとは限定せず、『好きな人のことを描いて』と指示するそうです。でもショッピングモールに行くと、普通に“母の日”“父の日”にちなんだ絵の募集があって、知っている家の子どもの絵も多く貼りだされています。わざわざ園が家族イベントを中止する必要がわからないですし、園側が神経質すぎるのではと思ってしまいます」

 都内にある小規模保育所で働いている保育士の愛子さん(仮名)は、園側の家族イベントの扱い方に戸惑ったという。

「うちは繁華街にある、夜間保育も行う保育所なのですが、“ワケあり”の保護者が多いんです。園自体にシンママが何人かいるため、家族イベントは基本的に行わない方針になりました」

 家族イベントは、園側が保護者に個別対応しなければいけないケースも多く、愛子さんは「面倒」と語る。

「例えば、敬老の日に、子どもが描いたイラストのハガキを、それぞれの祖父母宅に送ろうという話になったのですが、保護者の方に確認を取ると、ハガキを送ること自体よく思わない人も多くて、取りやめました。運動会の父親参加競技も、親子競技と名前を変えたものの、運動会自体に来られない保護者もいるので、保育士が代わって競技に参加しなければならず、大変なんですよ」

 一方、4歳になる女児を幼稚園に預けているシンママの千秋さん(仮名)は、「家族イベントを行わないことで、逆に私たち母子が目立ってしまう」と語る。

 千秋さんは、出産してすぐ、夫のDVなどが原因で離婚し、関東近県にある実家に戻った。子どもが小さいうちは、育児に専念したいと思い、就職をしないことを選んだという。

「もともと自分が通っていた幼稚園に入園させました。園長も私のことを覚えてくれていて、シンママだと言うと、心配されました。そして園長が『これも時代の流れだから』といって、父の日イベントだけでなく、紙でのカーネーション製作や、ママの似顔絵などの母の日イベントまで取りやめたんです。周りからは明らかに私のせいだとわかってしまったので、逆に配慮されるのがつらく感じました……」

 保育園も幼稚園も、多様化する子どもたちの家庭環境に、どのように対応すればよいのか模索中だという。都下にある大型保育園で働いている保育士歴10年の薫さん(仮名)は、以前よりも、個別対応すべきことが増えたと漏らす。

「うちの園には、シンママの子もシンパパの子も、事情があって普段は祖父母の家で過ごしている子もいますが、パパママが揃っているというご家庭の保護者から、『家族イベントはなくさないでほしい』という要望があったため、朝の会や帰りの会後の自由時間を使って、子どもには母の日、父の日の製作物を作ってもらいました。本当は、保育時間内にみんなで揃って製作ができれば手間がかからないのですが、一人ひとりに個別に紙で作る花を教えたり、絵を描くのを見守っています」

 彼女は、子どもが一律で同じイベントを行うのは難しくなっているという。

「園側に意見を言うタイプの保護者からは、どんどん『こうしてもらいたい』というクレームが入り、そちらに対応すると、今度はシンママやシンパパにはつらい思いをさせてしまうケースが発生するんです。すると、シンママやシンパパの子どもは、イベントに参加しない傾向が強くなってしまいます。今は個別対応できていますが、これ以上、いろいろなイベントや日常生活でそれぞれの家庭環境や事情を考えた対応を求められると難しいですね」

 統計上では4組に1組は離婚していると言われている現代。今後も、シングルの保護者は増えると予測される。子どもから親への感謝の気持ちを伝えるようなイベントの在り方を、検討する必要があるのかもしれない。
(池守りぜね)

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  • 教育ってか、育っていく過程で感情って必要と思うから中止しなくてもって思う。運動会もなくなるのかな・・・
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