「令和」の野球〜“大谷ルール”と日本流に学べ〜

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2019年05月23日 22:44  ベースボールキング

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◆ 短期連載:「令和」の野球 最終回

 時代は変わったものだ。日本からのメジャー挑戦は珍しくなくなったが、米アマ球界の大物が、MLBのドラフトを拒否して日本にやって来る。

 現地時間の21日、スポーツ専門局のESPNはイースタン・フロリダ州短大のC・スチュワート投手が6年契約、総額700万ドル(約7億7000万円)でソフトバンクと近く契約、来週にも発表されると報じた。

 同投手は昨年6月の米ドラフトでブレーブスから全体の8巡目に1位指名を受けた19歳の逸材。契約金交渉が折り合わず、身体検査で右手首に異常が見つかったこともありプロ入りの合意に達しなかった。代理人は敏腕でなるスコット・ボラス氏であり、6月3日からのドラフトに向けた「駆け引き」という見方もあるが、同局電子版ではすでに来日していると伝えており、ソフトバンク入団に向けて最後の調整段階であることは確かなようだ。

 世界中から野球エリートたちが「流入」して来るアメリカにあって、金の卵の「流失」は極めて珍しい。その背景にあるのが日本球界の人材の育て方の上手さ。中でも大谷翔平が二刀流として活躍していることで、日本の野球への見方が変わったと言われる。

 大谷の所属するエンゼルスでは、今月中旬にもう一人の二刀流選手がメジャー昇格を果たして話題を呼んだ。J・ウォルシュは中継ぎ投手兼一塁手で、外野も守る。デビュー戦となったツインズ戦では「8番・一塁」で先発出場すると、いきなり3安打。投手としてのお披露目はお預けとなったが「オオタニの出現で両親から、あなたも二刀流をやってみたら、と勧められたんだ。彼がいなかったら今の自分はないよ」と大谷効果を口にする。エンゼルスに限らず、米球界では第二、第三の大谷を探せ、育てろと関係者は血眼になっている。


◆ 心の琴線に触れた“二刀流”

 あのベーブルース以来、100年ぶりに本格的な二刀流を実現させた大谷の存在は、アメリカ球界でも特別なものがある。ある意味ではイチローや松井、野茂や松坂らの元日本人大リーガーの枠を飛び越えた存在と言ってもいいだろう。アメリカでも、日本でも少年時代のエースは打撃でも図抜けている選手が多い。それでも、プロのレベルになると投打で超一流はあり得ないとされてきた。そんな常識を打ち破ったからこそ、大谷はリスペクトされる。開拓者魂や「アメリカンドリーム」が大好きな国民の心の琴線に響いたからだ。

 MLBでは、来季から「大谷ルール」の採用が決まっている。これまで選手登録は「投手」か「野手」で分けられていたが、そこに「TWO WAY PLAYER」(二刀流)が明文化されることになった。投手で20イニング以上、野手で20試合以上の先発出場(1試合3打席以上)が二刀流の定義となる。これによって、通常13人がベンチ入りする投手陣は、野手登録の二刀流選手が加わることで14人の活用が可能になる。ベンチワークへの貢献は大きい。

 「野球少年たちも大谷を見て、真似をして大学、プロレベルまで二刀流をやっていくことだろう」と、エンゼルスのオースマス監督は語る。

 かつて、阪神に在籍したC・フィルダーは、日本野球で打席での我慢と変化球への対応を学んでメジャーに戻ると、本塁打王に成長した。巨人で活躍したM・マイコラスも変化球の切れを増して今ではメジャーのローテーション投手だ。結果が出なければ即ファームのメジャーと違い、日本には辛抱強く選手を育てる土壌がある。平成の時代、スター選手の相次ぐメジャー流失で日本球界の空洞化が心配された。だが、それは杞憂に終わった。

 令和の時代、日本の野球を見る世界の目は確実に変わりつつある。東京五輪まであと1年。さらに世界に衝撃を与える結果を切に願う。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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