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「マジ、ウケるんだけどー」万引きGメンが四国出張で遭遇した、“2人の少女”への複雑な思い

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2019年05月25日 20:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

写真Photo by OiMax from Flickr
Photo by OiMax from Flickr

 こんにちは、保安員の澄江です。

 今年のゴールデンウイークは、長かったですね。10連休を取られた方も多くおられたようで羨ましい限りですが、私たち保安員の仕事に暦は関係ありません。連休の恩恵をあげれば、通勤利用する電車が空いていて、車内で座れることに小さな喜びを感じるくらいでしょうか。休日は、むしろ依頼が増えるので、連休をもらえることなどないのです。

 数年前に一度だけ、四国地方の現場に出張して、連休の勤務に従事したことがありました。とあるクライアントの担当者から、人手不足で保安警備に悩むエリアマネージャーをご紹介いただき、5日間ほど出張することになったのです。四国地方の現場に入るのは、これが初めてのこと。さまざまな不安を覚えましたが、お受けするとなれば、独り身で自由の利く私が担当するほかない状況でしたし、見知らぬ土地で仕事ができる機会も貴重だろうと、思い切ってお受けしたのです。今回は、その時に遭遇した2人の少女について、お話ししていきたいと思います。

 出張先の現場は、地元で有名な歓楽街の近くに位置する大型ショッピングモールY。食品のほか、日用品やコスメドラッグ、衣料品などの商品を扱っており、フードコートをはじめ、ゲームセンターや映画館も併設されている大きなショッピングモールです。当日の勤務は、午前11時から。入店手続きを終えて事務所に行くと、銀行員のような雰囲気を持つ40代後半であろう店長さんに、意外なほど歓迎されました。

「ああ、東京から来た保安の方! お待ちしていましたよ。こっちには、私服警備をやられている警備会社が少ないもんですから、困っていたのです」
「そうでしたか。被害は、かなり頻繁にあるのですか?」
「東京の店と比べたら、のんびりしていると思いますけど、ここは比較的ガラの悪い地域なので多いんですよ。常習さんも、たくさんおられるので、みんな捕まえちゃってください。費用もかかっていますし、なんとかお願いします!」
「はい、頑張ります……」

 早口で窮状を訴えながらも、費用対効果の成果を暗に求める店長の言葉が、この上ないプレッシャーとなって私に圧し掛かります。期待に応えるべく、気を引き締めて売場に入るも、客数の少なさに愕然とさせられました。連休の影響なのかもしれませんが、東京の現場と比べると、その2割くらいの客入りしかないのです。犯行の多くは人混みに紛れて実行されるので、客入りが悪ければ万引きされる確率も低くなります。たとえ常習者が現れても、一対一の状況に陥ってしまう状況といえ、気付かれることなく犯行を現認するのも難しい状況と言えるでしょう。

 自分の実力が試されているような気分になった私は、メインの出入口が見渡せる場所に身を潜めて、来店者の流れを観察することから始めました。しかし、店に来るのは幸福そうに見える家族連ればかりで、特に気になる人の入店はないまま時間だけが過ぎていきます。どうやら、彼らから発せられる平和なムードが、店内の防犯効果を高めているようです。

(少し早いけど、休憩を取ってしまおうか……)

 現場の流れを変えるには、気を抜くのが一番いい。誰かに教わったことを思い出して、休憩に入るべくお弁当を選んでいると、10代半ばに見える女の子の2人組が店に入ってくるのが見えました。2人共、年齢にそぐわぬ派手なメイクで、胸元が大きく開いたシャツを着ていますが、寝起き感の漂うボサボサの髪と足元の使い古したクロックスタイプの汚いサンダルが、全てを台無しにしています。どこを見ても、だらしない。そんな感じに見える2人の肩には、何も入ってなさそうな大きめのナイロンバッグがかけられており、幸せそうな家族連れの群れの中で大きな異彩を放っていました。手にしていたお弁当を戻して2人の後を追うと、迷うことなく化粧品売場に直行し、売場にいる店員を気にしながら、化粧品やサプリメント、入浴剤、美容器具など、多数の商品をナイロンバッグに隠していきます。一瞬だけ垣間見えたバッグの中は、銀色の紙が張り巡らされており、防犯機器対策も万全のようです。

 犯行を終えた2人は、エスカレーターに乗り込んで、映画館の方に向かって行きました。空に見えたナイロンバッグは、隠した商品で歪な形に大きく膨らんでおり、2人が歩を進めるたびに、アルミホイルのシャカシャカ音が聞こえてきます。

(映画館の中に逃げ込むつもりかしら? 敷居をまたいだら、声をかけなくちゃ……)

 そう心に決めて追尾すると、2人は入口の手前にある休憩スペースに入り、上映中である『名探偵コナン』の大きな立て看板の後ろに身を隠して、バッグに隠した商品を床に並べ始めました。まもなくして商品のパッケージを開き始めたため、気付かれぬよう2人の後方から忍び寄って、そっと声をかけます。

「こんにちは、お店の保安員です。それ、お金払わないとダメよ」
「保安員?」
「私服警備員のことよ。万引きGメンって言ったらわかるかな?」
「え? ウソ? マジ? ウチら、万引きGメンに捕まったの? マジ、ウケるんだけどー」

 犯行は素直に認めてくれたものの、反省した様子のない2人は、事務所に向かう途中、万引きGメンに捕まったと、妙なテンションで盛り上がっていました。

「ウチも、万引きGメンやってみたいんですけど、どうやったらなれますか?」
「前科があったらなれないの。あなたは、大丈夫かしら?」
「そりゃ、だめだあ。キャハハハ……」

 捕まったことを楽しんでいるかのような2人の振る舞いに困惑しながら事務所に入り、ナイロンバッグに隠した商品を出させると、どことなくmisonoさんに似ている少女のバッグからは25点(3万4,000円相当)の商品が、どことなく若い頃のハイヒールモモコさんに似た少女のバッグからは18点(2万8,000円相当)の商品が出てきました。一番高額なのは、美顔ローラー(3,980円・税別)で、2人とも同じものを盗んでいます。

「こういうこと、いつもしてるの?」
「まあ、ぶっちゃっけ金ないし、ここは楽勝なんで」
「このアルミホイルは、なんのために?」
「ゲートが鳴らなくなるって、ネットの掲示板でみたから……」

 misonoさん似の少女が、あっけらかんと、どこか勝ち誇ったように言いました。どうやら彼女の方がリーダー格のようで、モモコさん似の方の少女は、ただうなずいて同調しています。所持金を聞けば、2人共に3,000円程度しか持っておらず、商品を買い取ることはできません。身分を証明できるものはないというので、メモ用紙に人定事項を書いてもらうと、2 人とも16歳で、この店の近所におばあちゃんと2人で暮らしていると話しました。

「おばあちゃん、迎えに来てくれるかな?」
「前に捕まった時、これが最後って言っていたから、多分来てくれない」
「お父さん、お母さんは?」
「……いない。たぶん死んでる」

 幼馴染だという2人は、同じような境遇に育ったらしく、中学を卒業してからは、地元のスナックで一緒にバイトしているそうです。これ以上、彼女たちの生い立ちを知ってしまえば、情に流されてしまう。そんな気がして、逃げるように席を離れた私は、内線電話で店長を呼び出します。

 連絡を受けて駆けつけた店長は、被害品の多さに呆れ、未成年者であることを考慮しても許せないと警察を呼びました。まもなくして現場に臨場した少年課の女刑事が、被疑者2人の所持品検査を終えたところで、misono似の少女が言います。

「今日は、夕方からバイトがあるんですけど、何時に帰れますか?」
「当たり前だけど、今日のバイトは行けないね。あんたたち、保護観中だよね? もしかしたら、しばらく帰れないかもしれないよ」
「マジかあ……」

 ようやくに自分の立場を悟ったらしい2人は、テーブルの下で手を握り合って俯き、すすり泣き始めました。すると、その姿を見た女刑事が、2人に向かって言います。

「あんたたち、乳首見えているわよ。背筋を伸ばしていなさい」

 その瞬間、店長の視線が彼女たちの胸元に走ったのを現認した私は、この人も捕まえた方がいいと言いたい気持ちになりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

このニュースに関するつぶやき

  • いつまで万引きと言うのだろう。窃盗に統一した方が良いと思うんだけどね。
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  • 見えてるもん見て、何が悪いねん!なんで捕まらんなあかんねん!
    • イイネ!16
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