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ももいろクローバーZの真髄は発想の面白さと懐の深さにあり 若手ディレクターMV企画から考える

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2019年05月26日 11:51  リアルサウンド

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 ももいろクローバーZがオリジナルアルバムとしては5枚目となる『MOMOIRO CLOVER Z』を発売した。新体制となってからは初であり、新しいスタートを切るに相応しい、豪華な制作陣を迎えての華やかなアルバムリリースとなっている。多くの人びとを巻き込んでいく”ももクロらしい”スタイルと言えるだろう。


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 そして、今回のテーマは「アルバム全体をショーとして」見せているのだという。特設サイトには楽曲それぞれのミュージックビデオが並び、インターネット上が楽曲を楽しめるようになっている。見ていくとアゲアゲなものからしっとりとしたものまで多種多様。現在のももクロを様々な角度から切り取っている。


 面白いのは、これらの作品が良い意味で統一感がないのである。それもそのはずで、すべてのMV監督が異なる作家によるものなのだ。アルバム全体の一貫性というよりはむしろ、バラエティの豊かさを選び、関わる人数を増やすことで”輪を広げていく”方法論を選んでいる。それはまさに、このグループが成長してきた中でも唯一変わらない”芯”の部分ではないだろうか。


 では、ひとつひとつのMVを見ていこう。1曲目の「ロードショー」はレトロなCGを使った極彩色の映像が印象的な作品。ユーロビートを現代風に再構築したようなサウンドには懐かしさもありつつ、新鮮さもある。制作を務めたのはBRDG。若手のチームだ。


 クリエイティブチーム・PERIMETRONの一員としてKing GnuなどのMVを制作している映像作家のOSRINが監督した2曲目「The Diamond Four」は、ホテルでメンバーたちが客たちとワイワイ遊びながらラップしている様子をスムーズなシーンの切り替わりによって映している。全体的にシックな装いは成長した彼女たちによく似合う。


 MAN WITH A MISSIONや欅坂46などを手掛け近年注目を集める大河臣による「GOD SPEED」は、メンバーらが人びとを振り切りながら走っていく姿をスローで撮った躍動感のある作品。


 4曲目の「あんた飛ばしすぎ!!」(監督:スミス)はヤンキーたちとともに学生に扮したメンバーたちを撮った学園もの。5曲目の「魂のたべもの」(監督:Padawan and pennacky)は幻想的な映像と広大な自然を組み合わせた壮大な作品に仕上がっている。


 ……と、このように若手ディレクター陣が集まり、ももクロというプラットフォームを介して新鮮な化学反応を見せている。これらを見るにつけ、今のももクロは本当に”自由”なのだと思う。コンセプトや撮り方も凝り固まっておらず、「やりたいようにやった」感が各作品から伝わるのだ。


 この企画を知った時、真っ先に「面白そうだな」と感じたが、こうした発想の面白さ、行動力、ノリや勢いこそこのグループの肝なのだと思う。なんでもござれと言わんばかりの器の大きさ、懐の深さがある。これこそがももクロの真髄だ。


 また、参加しているミュージシャンの顔ぶれも興味深い。職業作曲家だけではなくGARLICBOYSやGLIM SPANKY、CHAI、志磨遼平といったバンドシーンのアーティストが目立つ。ロックフェスにも出演経験のあるももクロらしい人選だ。


 3年前に3rdアルバム『AMARANTHUS』と4thアルバム『白金の夜明け』を同時発売した時も、その制作陣の豪華さには驚かされたが、今の時代、誰が書いたか・誰が録ったか・誰が撮ったか、といった裏方の情報はコンテンツを楽しむ上できわめて重要なファクトとなっている。2010年代のアイドルブームとそれに伴うカルチャー全体に巣食うある種のデータベース消費的有りようを象徴するリリースであった。


 そして今回の5thアルバム。見方によっては非常に現代的な企画とも言えよう。シングル曲をひとつも収録せず、すべて先行配信曲か新曲で構成されている。その代わり主役はあくまでMVだ。ネット時代に相応しい企画ではないか。収録曲にはすべてMVをあてがいYouTubeでフル公開していたデビュー以前の水曜日のカンパネラの面影を連想したが(その中の「桃太郎」がヒットして一躍メジャーシーンへと駆け上がった)、まさにその水カンの楽曲を手掛けているケンモチヒデフミも「天国のでたらめ」の編曲で関わっている。


 若手を積極的に起用し、現代的、かつ、”自由”な構えを見せるももクロ。今の彼女たちは何にでもトライできそうだ。こうした”受け皿”から火種となって、今後新たなムーブメントを起こすかもしれない。そんな期待感に溢れたアルバムリリースである。(荻原 梓)


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