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藤本さきこの本喰族!!『フランケンシュタイン・コンプレックス」から選んだ1冊『フランケンシュタイン 』メアリー・シェリー /連載第4回

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2019年05月26日 12:41  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

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 私にとって本は、食べて吸収し細胞にするもの。

藤本さきこの本喰族!!「孕む」をキーワードに選んだ1冊『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』山崎明子、藤木直実 /連載第3回

 食べることと同じくらいを作っていく。

 食物が肉体のエネルギーを作るなら、書物は魂のエネルギーをつくる。

 ひとつだけ違うことは、魂には「お腹いっぱい」という感覚がないこと。

 お腹いっぱいにするために読むのではないのだ。

 この連載「本喰族」では、読んだ本の中から頭に残っている「言葉」から次の本をリレー形式で検索し、魂がピンときた本をどんどん喰っていきたいと思います♡

『フランケンシュタイン 』メアリー・シェリー



 フランケンシュタインといえば、ハロウィンなどで必ず誰かが仮装し登場する、ツギハギだらけの怪物が浮かぶ。今回初めて知ったのだが、実は「フランケンシュタイン」とは、誰もが知っているあの怪物の名前ではなく、創造主である博士の名前であった。

 フランケンシュタイン博士は、神の領域にある「生死」の限界を超えることに取り憑かれてしまい、科学を駆使し、ついに自分の手で生命を作り出せると確信した。

 解剖に使われた残りの死体をつなぎ合わせ、命を吹き込んだ。しかし、生み出したものは、醜悪でおぞましく、吐き気を催すほど見るに耐えない怪物だった……。

 その醜さゆえに、ただそこにいるだけで、人々から恐れられ、暴言を浴びせられ、暴力を振るわれる。

「なぜ受け入れてくれないんだ」

「俺は何のために生まれたのだ」

 怪物はその絶望と悲しみから、本来持っていた善なる心、慈しみの心はどんどんと恨みと呪いに変わって行く。創造主である博士にまで拒絶され、その恨みは博士の愛する家族へ殺意となって向かって行く。

 博士は怯え、精神的に自分が創造した怪物の奴隷として絶望のうちに人生を終えることになる。

 この作品を読んでみようと思ったきっかけは、前回紹介した「妊婦アート論 孕む身体を奪取する」の中で登場したからだ。人間が、創造主になりかわって生命を作り出すことへの憧れを持ち、その作り出された人工生命体によって、逆に人間が滅ぼされるという恐怖を「フランケンシュタイン・コンプレックス」と呼ぶそうなのである。

 私たちも、「フランケンシュタイン・コンプレックス」に陥っている。

 自分がこの世界の創造主だということを忘れ、目の前の現実の奴隷に成り下がってしまうことがある。やりたかったこと、好きだったこと、一緒にいたいと思った人。自らが選択した世界なのに、見た目や出来事に振り回され、受け入れず、ひたすらに拒絶することがある。そういう時は、自分が生み出した世界も、反抗する。

 創り出した世界をしっかり見つめて、愛情を持ってただ受け入れ、慈しみながら創造していきたいと思った。自分が創造主だということに、自覚と責任を持って。

 今回初めて読み、こんなにも美しく、詩的な物語だったのかと驚いた。

 スイス、ドイツ、イング ランド、フランスを舞台にし、湖畔や山々の美しい描写のなかで繰り広げられる怪物と博士の醜く悲しい一部始終は、神の雄大さと、人間の小ささをハッキリと浮かび上がらせる。

 次回は、本に登場した『若きウェルテルの悩み』という美味しそうな作品を読んでみます。

文=藤本さきこ

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