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人間の心をザワザワさせるNetflix「リラックマとカオルさん」 カオルさんの性格は「闇」なのか?

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2019年05月29日 20:08  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真ライターしげるが恋愛や人間について考える連載、今回のお題は「リラックマとカオルさん」
ライターしげるが恋愛や人間について考える連載、今回のお題は「リラックマとカオルさん」

 Netflixでの配信開始以来、「リラックマとカオルさん」が人間の心をざわつかせ続けている。無理もない。かわいいリラックマのショートアニメを見て癒されよう……と思って第1話を再生すれば、その内容は「中小規模の商社に務めるアラサーの女性が友達と花見をやろうとして重箱に弁当を作るものの、友達たちからは次々にドタキャンの連絡が入り、ヤケクソ気味にリラックマたちと花見をする」というもの。まあ正味、キツい。



【画像】「リラックマとカオルさん」のカオルさん



 あらためて説明しておくと、「リラックマとカオルさん」はタイトルの通り、サンエックスのキャラクターであるリラックマが出てくるストップモーションアニメである。1話10分ちょっととコンパクトで見やすく、なるほどこれは仕事帰りとかに大人が見る癒やしアニメ的な内容なのかな……と思いきや、内容はかなりハードかつソリッド。落ち着いた雰囲気の中にギラリと悪意が光る内容は、脚本の荻上直子(「めがね」とか「かもめ食堂」とかの人ですね)の面目躍如だ。制作期間は2年、撮影期間は7カ月とのことで、そんなに時間をかけてこんなアニメを……という恐怖すら感じる。



 このアニメ、主人公カオルさんまわりのディテールの詰まり方が邪悪である。細部が生々しい。まずカオルさんの見た目の問題というのがある。おれはあのカオルさんの撮影用パペットの顔を見たときに衝撃を受けた。具体的にいうと、口の左右から顔の横にかけての凹凸である。ほうれい線というほどはっきりしたものはまだ発生していないけど、頬の肉が確実に重力に負けつつあるあの凹凸……。正確かつ邪悪、職人芸的命中精度である。



 さらに言えば、カオルさんの性格というのもいささか露悪的だ。基本的には真面目で勤めもマトモ、他人に対してそこまで強く出ることはしないものの、頭の中ではけっこういろいろ辛辣で、いざ幽霊に襲われそうになればリラックマを身代わりに差し出す多少の自分勝手さがあり、そして意外と性欲が強い……。なんとすさまじい人物設計だろうかと、おれは舌を巻いた。いや〜、いるんでしょうね、こういう人。とにかく露悪の力で視聴者に爪痕を残してやろうという、強い意志を感じる。



 でもまあ、だいたい誰だって人間はこんなもんでしょ……と、おれはかねがねそう思って見ていた。そもそも、カオルさんのやることといえばかわいいものである。ちょっと突飛(とっぴ)なことをやろうとしてリラックマから生えてきたキノコを食べようとしたり(ここでいきなり炭と七輪が出てくるのがカオルさんのカオルさんたるゆえんである)、いきなり結婚を決めた後輩がハワイ土産に買ってきたマカダミアナッツのチョコレートに文句を言ったりと、まあこの年の人間だったらそんなもんだわな、という範ちゅうに収まっていると思う。



 それに、ストーリー的にはちゃんと因果応報というか、調子に乗ったカオルさんにバチが当たるという作りになっている。性欲が暴走した結果68万円も借金を作ったり(それにしても生々しい額である)、マカダミアナッツのチョコレートに文句を言ったら結果的に自分だけハワイに行けなくなったりと、ちゃんとお灸を据えられている。カオルさんはいわばアラサー女性版野比のび太であり、「リラックマとカオルさん」はちょっぴりビターでシビアな「ドラえもん」と言えるだろう。



●カオルさんに石を投げられる人、果たしてどれほどいるのか



 しかし、しかしである。Twitterで「リラックマとカオルさん」と検索したおれは驚いた。なんせ続いてサジェストされた単語が「闇」である。「リラックマとカオルさん 闇」で素直に検索をかけたおれが見たものは、カオルさんの性格のネクラな部分や作品内の微妙にエグい部分を指摘するツイートだった。闇、闇かあ……。そんなにダークな内容だったかなこれ……。正直な話、ちょっと闇闇言い過ぎじゃないの……という気もする。



 多分なんだけど、カオルさんの人物造形は「あるあるネタ」的ラインを狙っている気がする。「30歳を回って特に恋人もいなくて、一応仕事はしてるけど、自分はこの先どうなっちゃうんだろう……」という感じで、まあそういう状況だとクサクサした気持ちになることもあるよね、という線だと思う。まあ確かに、リラックマから生えたキノコを食べようとしたりいきなりUFOが飛来したりとピーキーな内容の回もあるにはあったが、基本的には「アラサーあるある」みたいなコンテンツだろう。



 かわいいリラックマが出てくる人形アニメを見に行ったら妙齢の女性の意外に強い性欲が出てきちゃった……ということで、だまし討ちされたような気分になる人もいるかもしれない。「OLをやっているカオルさん」というキャラクター自体はリラックマの絵本などに登場しているとは言え、いきなりあそこまでディテールを盛り込んだ人物が登場すると思っていた人は多くないだろう。



 でも、そんなに寄ってたかって「闇だ」「闇だ」っていうほどのもんですかね、と思わんでもないのである。確かにカオルさんは合コンに誘ってはもらえない。「合コンで戦うモード」に入っていない人間を合コンに連れてきてしまったら幹事の責任問題になるだろうから。それはもう需要と供給の話なんだから、仕方ないと思う。しかしだからと言って、カオルさんの性格まで否定しなくてもいいのでは……。



 思うに、カオルさんは社会的な規範意識を一応インストールしたものの、その内容とカオルさん個人の意識の間にギャップが発生している人だ。規範意識サイドに身を置いている(と思っている)人からすると、石を投げやすいところがあるのかな、と思う。しかし、まあそういう社会的なあれこれとはリラックマと一緒に適当に折り合いをつけていけたらいいよね、とボンヤリ主張しているコンテンツに向かって「カオルさんの闇だ!」とか言っちゃうのは、そっちの方が闇が深くないですかという感じがする。というか、カオルさんに石を投げられるほどキレイな人間なんていないんじゃないの……と思うのだ。人間誰しも、けっこうあんなもんではないのだろうか。



 そういう意味で、カオルさんは半分以上おれである。実際、あのシチュエーションでマカダミアナッツのチョコレートをもらったら、おれだって陰口を叩く可能性が高い。宅配便のお兄さん目当てで通販を使いまくったことはないけれど、家の一番近所のコンビニでちょっとかわいい人が働いていたので「なるほど、この曜日のこの時間にはシフトに入っているのか……」と意識してしまったことはある。自宅にリラックマがいるかどうかくらいしか差がないような気がしてきた。



 そんなふうに心にカオルさんを宿した状態でTwitterを検索すると、カオルさんの性格の悪さを指摘するツイートを見るたびに「や、やめて! 石を投げないで!」という気持ちになる。いや、ひょっとしたら石を投げている彼らも、内なるカオルさん部分をあのアニメによって逆撫でされたのかもしれない。さながらどちらも傷ついたキツネリス、今おれたちに必要なのは「怖くないよ」と言ってくれるナウシカである。



 まあもちろん、かわいいリラックマだけを見たかったのにものすごいノイズが入っててビビった、という気持ちもわかる。しかし、繰り返しになるけど「性格が悪い」「闇」とまでいうほどでもない気がどうしてもしてしまうのだ。この辺の潔癖さは最近のインターネットのよくないところなのかな……とも思うのだが、おれはカオルさん的いじけ根性もけっこうわかるので、「そんなに言わないでくれよ〜」と思ってしまう。カオルさんに石を投げてもいいのは「猫を飼いたいな〜」という現実逃避の妄想を一度もしたことがない人だけなのである。



(ねとらぼGirlSide/しげる)


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