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20年以上Yahoo! JAPANを運営するヤフーは「モダナイゼーション」にどう取り組んでいるのか?

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2019年06月04日 15:32  @IT

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@IT

写真ヤフー テクノロジーグループ グループCTO 服部典弘氏
ヤフー テクノロジーグループ グループCTO 服部典弘氏

 @ITは、2019年4月16日に「果たせアプリケーション維新! 〜コンテナ型仮想化基盤が実現するアプリ・モダナイゼーション〜」セミナーを開催した。本稿では、セミナーの内容をダイジェストでお届けする。



【画像:3つの軸で進められたモダナイゼーション】



●ヤフーがプラットフォームのモダナイゼーションを推進した「2つの理由」



 1996年にサービス提供を開始し、月間ページビュー約700億を超え、1日当たり9302万ユニークブラウザのサイトへと成長した「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフー。基調講演に登壇したテクノロジーグループ グループCTO(最高技術責任者)の服部典弘氏は「プラットフォーム改善事例に見る、ニーズが激変する中でYahoo! JAPANが顧客の支持を獲得し続けられる理由」と題して、コンテナ技術やPaaSなどのクラウドネイティブ技術を活用しながら、同社がどのようにプライベートクラウド基盤を構築し、プラットフォームのモダナイゼーションを進めているのかを紹介した。



 服部氏は、2008年にヤフーに入社し、「Yahoo!地図」の技術ディレクター、情報システム部門責任者、開発基盤部門責任者を経て、2018年から現職。ヤフーにおけるインフラ、開発基盤、データ基盤の技術責任者として、最先端技術の追求や大規模組織への最新技術の導入、エンジニア育成などに取り組んでいる。



 服部氏はまず、ヤフーのビジネス動向について「メディア、コマース、金融といった事業ドメインで、100を超えるサービスを展開しています。グループ会社も多く、それぞれの企業が持つさまざまな種類のデータセットを掛け合わせたサービスを提供できることが強みの一つです。グループとして、マルチビッグデータカンパニーを目指すことを掲げています」と解説した。



 服部氏によると、これからの「データ時代」を生き抜くためには、サービスやプラットフォームを時代に合ったものにしていくことが求められる。ヤフーでは、そこに向けたシステム対応をモダナイゼーションと呼び、約3年前から優先度の高い全社プロジェクトとして推進している。服部氏はモダナイゼーションに取り組む背景は大きく2つあると説明する。



 「1つ目は、データの活用を進めビジネスの競争力を強化することです。それには、ユーザーからのフィードバックを受けてプロダクト素早くリリースし続けることが求められます。このサイクルを高速で回すために重要になるのが開発競争力の向上です。2つ目はレガシーからの脱却です。創業から20年を迎え、さまざまな資産がレガシー化していました。これからの20年に向けてヤフーのサービスを使い続けてもらうためにはモダナイゼーションは欠かせないものでした」(服部氏)



スクラムを促進して、文化と仕事の進め方を変えていった



 ヤフーが全社的に取り組むモダナイゼーションには、大きくサービスそのもののモダナイゼーションと、それを支えるプラットフォームのモダナイゼーションがある。服部氏が担当しているのはこのうちのプラットフォームのモダナイゼーションであり、大きく3つの軸で進められた。



 「カルチャー、プロセス、テクノロジーを3つの軸にしてプラットフォームのモダナイゼーションを進めています。プラットフォームのモダナイゼーションというと技術にフォーカスされがちです。ただ、それだけでは不十分で、カルチャーやプロセスを合わせてモダナイズしていくことが重要です」(服部氏)



 カルチャーにおける取り組みのポイントは「スピーディーな改善サイクル」ことだ。その背景について服部氏は、技術トレンドの変化が速い上に、プラットフォーム領域が専門領域で複雑であることを指摘する。



 「流行の技術が1年後には廃れるということがよく起こります。また、プラットフォーム領域では、作っているうちに要件が変わることもあり、エンジニアの戦力になるのは3年後ということも多い。DevOpsによるスピーディーな改善サイクルが必須なのです」(服部氏)



 DevOpsを推進するためにヤフーが採用したのがスクラムだ。スクラムは反復的かつ漸進的にプロセスを含め現状や問題を把握するための、アジャイル開発のフレームワークだが、「ヤフーではこのフレームワークを促進することで、組織の文化を変えていくというアプローチを採用しました」と服部氏。



 プロセスのモダナイゼーションにおいてもスクラムを活用した。スクラムに即した組織作りとして「組織としてのバックログ作成」「プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発マネジャーの役割の明確化」「1プロダクト1チーム体制」「組織横断のスクラムマスター育成」などを進めた。またCI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)を促進し、自動テストや自動デプロイでサイクルをスピーディーに回し、リードタイムの短縮と生産性向上を図った。スクラムがうまく回るように開発組織の仕事の進め方も変えていったという。



Kubernetesを採用し、IaaSからFaaSまでをニーズに応じて提供



 テクノロジーのモダナイゼーションでは、新たにコンテナとKubernetesの採用を進め、IaaS(Infrastructure as a Service)、CaaS(Container as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、FaaS(Function as a Service)といった開発環境を整備し、サービスの要件に沿って最適な環境を利用できるようにした。現在、コンテナは100超サービスのうち約50について何らかのかたちで採用されているという。



 またテクノロジーの採用では「Make(作る)」と「Use(使う)」で使い分けている。



 Makeは、いまだ世の中にないモノや既存資産を生かすもので、オープンソースソフトウェア(OSS)をベースに構築した。「PULSAR」「ATHENZ」「Screwdriver.cd」などヤフーが開発協力したプロダクトをOSSとして公開し、コミュニティーにも貢献している。OSSはヤフーのような大規模環境で利用すると、未知のバグや障害を踏むリスクもあるため、OSS利用ガイドラインを設け、OSSライセンスの教育も徹底しているという。



 Useは、世の中にあるモノでいち早く価値を届けられる場合に採用した。商用プロダクトとしては「Pivotal Cloud Foundry」「Splunk」「IBM Cloud」「IBM Spectrum」などだ。



 こうしたモダナイゼーションの取り組みの結果、ヤフーはどんな成果を得たのか。服部氏はまず「デプロイ頻度が月1〜2回や週1回のものが、月4回や週2〜3回へと改善しました」とし、「変更リードタイムが1日から1時間」といった数字を挙げた。



 このように、サービス開発エンジニアが新機能開発に割ける時間も増え、これまではシステム改善や運用保守などにかかっていた時間も、モダナイゼーションの中で新機能開発にかける時間に充てられるようになり、「サービス開発エンジニアがより磨かれたサービスをお客さまに届けられるようになりました」とした。



 服部氏は最後に「モダナイゼーションに対する理解が進まないといった課題もありましたが、プラットフォームのアーキテクチャ図やサービスカタログ、クックブックを見せながら納得してもらう活動を行いました。現在はスクラムに加えて『Lean XP』を、技術面ではマイクロサービスやサービスメッシュの取り組みを進めています。モダナイゼーションには終わりがありません。これからもカルチャー、プロセス、テクノロジーの観点から常に追い続けていきます」と述べ、講演を締めくくった。



●IBMが提案する3つのモダナイゼーションパターン



 続いて、日本IBM クラウド事業本部 クラウドテクニカルセールス エグゼクティブITスペシャリストの樽澤広亨氏が登壇。「基礎から理解するアプリケーション・モダナイゼーション」と題して、アプリケーションモダナイゼーションの手法や進め方、最新動向を解説した。



 樽澤氏はまず、アプリケーションモダナイゼーションでは、クラウドネイティブコンピューティングの要素技術であるマイクロサービス、コンテナ、動的オーケストレーションが重要だと指摘。特にマイクロサービスは、クラウドネイティブアプリケーション開発・運用のベストプラクティスであり、アプリケーション個別の保守を可能にする柔軟なモジュラー構造(サービス)を実現する重要な要素だとした。



 その上で「アプリケーションモダナイゼーションには大きく3つのパターンがあります。アプリのコンテナ対応が適したもの、アプリのマイクロサービス化が適したもの、アプリとデータベースのマイクロサービス化が適したものです。アプリとデータベースを、順を追って段階的に変えていくことがポイントです」(樽澤氏)とアドバイスした。



 こうした段階的な移行は「ストラングラーパターン」と呼ばれており、IBMでもストラングラーを生かしたステップ・バイ・ステップのモダナイゼーションを推進している。樽澤氏は、同社のソリューションの一つとして「IBM Cloud」「IBM Cloud Private」を紹介し、「製品、サービスの両面から全局面でシステムモダナイゼーションを支援できます」とアピールした。



●600社超が採用するIBMのプライベートKubernetes基盤



 続く日本IBMのセッション「モダナイゼーションを加速するIBMのプライベートKubernetes基盤」では、日本IBM クラウド事業本部 クラウド・ソフトウェア テクニカルセールス アドバイザリーITスペシャリストの岩品友徳氏が、IBM Cloud Privateの特徴を紹介した。



 IBM Cloud Privateは、Kubernetesをベースにしており、既存アプリケーションのモダナイゼーションを支援するツールから、モニタリング、ログ管理、セキュリティ、高可用性など企業システムに求められるさまざまな機能を統合して利用できることが特徴だ。岩品氏は「IBMでは、オープンな技術を用いることでベンダーロックインされない世界を実現することを目指しています。IBMのデータ&AIプラットフォームもハイブリッド、マルチクラウドに対応したオープンなプラットフォームであり、次世代システム基盤に必要となる技術を包括的に提供します」とした。



 その上で、具体的な機能やサービスとして、マルチクラスタ管理を担うマルチクラウド管理ツール「IBM Multicloud Manager」や、モダナイゼーションを支援する「トランスフォーメーションアドバイザー」、統合開発環境「Microclimate」などを紹介。



 「IBM Cloud Privateは、2017年6月のリリース以来1年半で600社超が採用しました。国内でも地銀グループや大手都銀、大手保険会社に採用されています」と国内でも活用が進んでいることを紹介した。



●日本の企業はデジタルトランスフォーメーションにどう関わるべきか



 最後のパネルディスカッション「『2025年の崖』問題に日本の企業はどう立ち向かうべきか、ヤフーと日本IBMに聞く」では、ヤフーの服部氏と日本IBMの樽澤氏がパネリスト、アイティメディア 統括編集長 @IT編集部の内野宏信がモデレーターとなり、「日本企業がどうデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むべきか」の議論が交わされた。



 最初の議題は、DXと企業の関わり方について。服部氏は「DXは今のビジネスの必要条件だと思っています。ヤフーでも以前は企画を練り込んで期間をかけてサービスを作り上げていました。それがデータの時代になって、とにかく速くサービスを出して改善していくことが重要になった。サービスの作り方が変わっています」とヤフーのDXに対する考え方を紹介。新興のWeb企業と違い、20年を超える歴史の中でレガシー資産も多いことが変革の必要性を痛感する背景にあることも補足した。



 これに対し樽澤氏はベンダーの立場から「DXは近年のバズワードになっているが、危機感自体は企業の間に以前からあったと感じています。本業がうまくいっていない企業が変革への危機感を強く抱く一方、本業がうまくいっている企業の間でも既存の事業を見直してモダナイズしていかなければならないという危機感があります」と現状を分析した。



 「具体的に、どうモダナイゼーションを進めるか」について服部氏は「モダナイゼーションについては『どうコンテナ化するか』といった技術側の話にフォーカスされがちです。技術側が言っているからやるのではなく、ビジネスを回復させるためにやるのがモダナイゼーション。アジャイルやDevOpsの考え方を取り入れ、テクノロジーとカルチャー、プロセスをセットでモダナイズすることが重要です」とした。



 すると、ビジネス部門を巻き込むことが必要になり、取り組みの難易度は上がり、テクノロジーだけでは解決できない課題も増えてくる。それに対し服部氏は「テクノロジーはビジネスのためにあるということを言い続けました。徐々にモダナイゼーションを進め、アジリティーを持って取り組むことで実績ができ、社内から理解を得ていくことができました」とヤフーでの取り組みを振り返った。



オーナーシップを意識することが重要



 ヤフーでは、アジャイル開発のフレームワークとしてスクラムを採用したが、ビジネス側だけではなく、エンジニアの間で、そうしたフレームワークの採用に抵抗した者はいなかったのか。その問いに対し、服部氏は「落ち着いて開発したいという反発はありました。また、プラットフォームの場合は、ヤフー独自にアレンジやカスタマイズを施すケースも多かったのですが、独自習得していたスクラムから正式なスクラムを推進したことに対して、現状の開発の仕方などから変化が生じてしまうことへの反発はありました」と明かす。



 反発に対しては「ヤフーのサービスはユーザーのためにあり、ユーザーにフォーカスすることが重要」と言い続けたという。「WebやITは変化が激しく、お客さまの要件も激しく変わりますから迅速に対応していくことが求められます。といったことを言い続け、納得してもらいました」(服部氏)



 モダナイゼーションの進め方について樽澤氏は「現場から始めるとさまざまな利害関係が障害となることが多い。そのため理想はCEOが決断してトップダウンで進めることです。とはいえ、日本の企業文化としては、説得や社内勉強会などを行いつつ既成事実を作り、ボトムアップで取り組んでいくのが次善の策ではないでしょうか」とした。



 DXやモダナイゼーションの取り組み方では、デジタル推進室やCCoE(Cloud Center of Excellence)のような専門組織を作ってPoC(概念実証)を実施していくアプローチもよく採用されている。ただ、そうした専門組織とIT部門との連携が取れずに「PoC止まり」になってしまうケースも見られる。これについて樽澤氏は「自分ごととして考える」「オーナーシップを意識する」ことをポイントに挙げた。



 「サービスを誰が利用するのか、利用部門やビジネス部門がオーナーシップを持ってプロジェクトに積極的に関与できるようにすること。専門組織を作ってもそこで全ての要件を作り込むようなことをせず、オーナーシップを意識しながら、チームとしてアジャイルを実践していくことが重要です」(樽澤氏)



 服部氏もこれに同調し、「ヤフーでもプラットフォーム部門だけでメンバーは300人を超え、どうアジャイルを回すかは常に試行錯誤している状況です。スクラムを導入するときも、プロダクトオーナーに一定の権限を与えて、メンバーそれぞれが責任を持って取り組むことを心掛けましたが、しばらくは成果が出ませんでした。それでも、ぐっと我慢して口を出さずにいると、次第に立ち上がってきて、大きな組織でも動くようになりました」と自社の経験を紹介した。



「全てはビジネスのためにある」「失敗してみることが大事」



 アプリケーションモダナイゼーションについて、技術面からIBMに寄せられる相談にはどのようなものがあるのだろうか。樽澤氏によると、さまざまあるが、特に近年はコンテナ化に関するものが多いという。



 特に、エンタープライズ領域では、既存のレガシーシステムを運用しながら、新しい技術を活用していく難しさがある。それらをコンテナ化していく場合も、既存のプロセスやセキュリティ、ガバナンスを考慮していく必要がある。服部氏は「歴史のある会社ほど、そうした既存のプロセスを省略しにくく、省略すれば速くなるわけではありません。一つ一つ手順を踏みながら、技術を活用してプロセスを新しいものに置き換えていきました」とヤフーの事例を紹介した。



 開発者や運用担当者に求められるスキルや方向性については、樽澤氏が「開発や基盤それぞれに求められる役割を全て経験しておくことが理想だと思います。ビジネスのスキルセットも身に付けておきたい。そうすることで、業務の人が何を考えているか想像しやすくなると思います」とした。



 「開発も運用を分けていた時期もありましたが、現在は、両者を1つのチームとして分けずに考えています。重要なのはユーザーにフォーカスすることであり、そのためにはステークホルダーとのコミュニケーションなど新しいスキルも求められます。また、ヤフーでは新規のサービスを開発することよりも、既存サービスをいかにグロースさせるかも重要です」(服部氏)



 最後にメッセージを求められた服部氏は「DXで重要なことは技術起点にしないこと。全てはビジネスのためにあるという意識で取り組んでいくことが大切です」と強調。また樽澤氏は「フェイルファーストでチャレンジし、失敗してみることが大事。現場レベルで何か変えてみて、そうした動きを全社に広げていってほしいと思います」とアドバイスした。


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