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理不尽な労働契約でも結んでしまったら文句を言えない? 労働基準法を満たさない契約も就業規則も無効!

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2019年06月05日 15:40  リテラ

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リテラ

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 ある日の夕方、女性(Aさん)が相談にやって来た。聞くと、「残業代をきちんと支払ってもらってない」ということだった。残業代の計算の基礎になる1時間あたりの給与が低く計算されているというのだ。



 そこで、雇用契約書を見せてもらうと、給与の欄には「基本給●万年+職務給●万円」とあるが、残業代の欄には、「職務給を除く基準内給与を基準額とする」との記載があった。



「つまり、残業代の計算の基礎に職務給が入ってない、それで残業代の金額が安くなってしまっているということですね。」私がそう聞くと、そうだという。



 残業代(割増賃金)の計算をする際には、まず1時間あたりの給与がいくらになるのかを計算する。この1時間あたりの給与を「1時間あたりの基礎賃金」というのだが、この「基礎賃金」の計算にあたって、基本給の他に手当などの支給がある場に、どれを除外できるのかについては、労働基準法に明確な決まりがある。



 労働基準法によると、この「基礎賃金」の計算から除外できるのは_搬下蠹、通勤手当、J無鐚蠹、せ匳教育手当、ソ斬霄蠹、ξ彁に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金となっている(労基法37条第5項、労基法施行規則第21条)。これらは、例として挙げられているのではなく、これしか除外してはいけないという意味で挙げられている。



 つまり、ここに挙がっていないものは除外できないということだ。Aさんの会社で支給される「職務給」は、毎月支給されるのでΝГ任覆い海箸鰐世蕕だし、無論 銑イ任發覆ぁ



 したがって、法律によって基礎賃金の計算から除外できる項目にはなっていないということになる。つまり「除外はできない」ということになるのだ。



 また、Aさんは既に退職しているのだが、退職金規定で計算するよりも低い額の退職金しかもらっていないという。



 Aさんによれば、その会社には退職金規定が存在するとのことであった。確認すると確かに計算式まできちんと規定した退職金規定があり、計算してみると支給された退職金の額よりも、退職金規定によって計算した方が高額になった。

そこで会社に残業代と退職金の請求書を送ったところ、会社から退職金について、以下のような回答があった。



――会社には特に決まった退職金規定はなく、Aさんとの間の労働契約でも退職金には「特に定めがない」旨の合意をしている――



 ここでは、このように、個々の労働者との間で取り交わした労働契約と就業規則の内容が違った場合、どちらが優先になるのかを確認しておきたい。



 労働契約法7条には、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」という規定がある。これを見ると、個別の労働契約の内容が優先されそうだ。しかし労働契約法7条には続けて「ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。」とある。



 そこで、第12条を見てみると、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」とある。



 つまり、就業規則よりも個別の労働契約の方が優先されるのは、個別の労働契約の方が労働者にとって有利な場合ということになる。なお、就業規則も労働基準法などの法令や労働組合と会社の間で結ばれる労働協約に反している場合には、その就業規則も無効になる(労働契約法13条)。



●個々の労働者の立場は弱くても、「集団の力」で対抗できる!



 個々の労働者は立場が弱く交渉力もないので、どうしても不利な条件で労働契約を結んでしまう。そこで、まずは国の力で最低条件を定めて、これを下回る条件を無効にすることとしたのである。さらに労働組合など集団の力を用いることによって会社とより対等な関係で結んだ内容は個々人が結ぶ労働契約よりも労働者に有利であろうから、個々の労働契約よりも優先させた。



 そうすることによって、労働者が弱い立場で不利な労働条件で働かされることを防ごうとしているのである。



 例えばAさんの場合、退職金については、個別の労働契約で退職金を支給しない旨合意していると考えた場合、退職金規定(これは就業規則の一部ということになる)の方が、Aさんと会社が結んだ個別の労働契約よりもAさんにとって有利な内容となる。そうすると、個別の労働契約の中の「退職金については特に定めない」という部分は無効になり、退職金規定の内容が労働契約の内容として適用されることになるであろう。



 なおこの会社、先に挙げた「職務給」については、賃金規定(これも就業規則の一部となる)に、職務給は固定残業代であるかのような規定を置いていた。しかしAさんとの間の個別の労働契約書にはそのような内容はない。

この場合、職務給が固定残業代となると、Aさんつまり労働者に不利な内容となってしまうので、労働者にとってより有利な内容を定めている労働契約の職務給部分は無効にならず、賃金規定よりも優先されることになるであろう。



 さてこの問題で改めて考えさせられるのは、労働問題における「集団の力」である。



 個々の労働者が個別に会社と労働契約を結んだのでは、低賃金、長時間、劣悪な環境など労働者にとって不利な条件で働かされてしまうという問題は大昔からある。これに対して労働者は、労働組合などの「集団の力」、またその集団の力による法令の整備という手段で対抗してきたのである。



 いまブラック企業で働いているというあなた、対抗するためのキーワードは「集団の力」である一人で悩まずに、仲間を作って頑張ってみてほしい!





【関連条文】

就業規則違反の労働契約 労働契約法12条 





(弁護士 前田 牧/はかた法律事務所 https://www.hakatalawoffice.jp)



* ****

ブラック企業被害対策弁護団

http://black-taisaku-bengodan.jp



長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。

この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。


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