原巨人よ、どこへ行く?〜悩み深き指揮官〜

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2019年06月07日 11:20  ベースボールキング

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ベースボールキング

6回、勝ち越しソロを放ち、桜井(35)らに迎えられる巨人・岡本=楽天生命パーク © KyodoNews
「和と動」。4年ぶりに巨人の監督に復帰した原辰徳は今シーズンのチームスローガンをこう掲げた。父である亡き原貢氏が東海相模高時代に部訓とした精神を受け継いだものだ。

 「和」はチームワーク、「動」はアクションやパフォーマンス。ともに機能したときにチームは生まれ変わる。だが、開幕直後は好調な滑り出しを見せたものの、現在は首位・広島に大きく水をあけられて阪神と2位争いの最中。交流戦の6月はチームの正念場でもある。今なお、試行錯誤を続ける名門球団の現状と課題を4回の連載で迫ってみる。


◆ 打順変更が奏功?!

 荒療治と言うべきか? 交流戦のスタートとなった4日の楽天戦、原監督が打線を大幅に変更した。今季は「不動の4番」と指揮官自らが公言してきた岡本を4番から外して6番に。代わって坂本を代役に抜擢した。翌日の同カードでは坂本を3番に戻して今度は40歳の阿部を4番に起用、さらに6日はゲレーロを4番に置いて岡本を5番に。この3試合で岡本は、いずれもマルチ安打を記録し、カード最終戦では決勝ソロを放ったのだから、一定の効果はあったと言える。

 「やや、ビッグベイビー(岡本)が困っているというところで、助けてあげようと。少し、精神的に楽なところで打席に立たせたいと言うところもあった」と原監督は打順変更の狙いを語る。

 昨年は22歳の若さで3割30本塁打100打点を記録した岡本。今季は更なる飛躍を期待されたが、現状は物足りない。交流戦前まで、打率は2割5分台を行ったり来たり、自慢の長打力も9本塁打では及第点とはいかない。首脳陣もしびれを切らした末の決断だった。

 原監督が好んで使ったフレーズに「打線のフロントページ」という言葉がある。1番に俊足の成長株である吉川尚をすえて、2番に坂本、3番に広島から移籍の丸を起用する超攻撃型オーダー。確かに開幕からしばらくは機能したが、吉川尚の故障離脱で計算は狂いだす。上位打線爆発でなおも好機なら4番の岡本の負担も少なかったが、坂本と丸を塁上に置いて4番勝負が増えると結果を出せなければ岡本の責任。それが4番に課された宿命だ。


◆ 指揮官の試行錯誤は続く

 加えて、岡本にとって気の毒だったのは5番打者の不振もあげられる。陽、亀井、ビヤヌエバ、ゲレーロら、頼みの大砲候補がほとんど機能せずに、今では開幕前に第三捕手だった大城を起用する苦肉の策が続いている。

 近年、巨人の外国人野手の獲得策はことごとく失敗が続いている。かつてはラミレス(現DeNA監督)らが期待に応えてきたが、FAで獲得した丸が働いてもそれをサポートする助っ人が機能しなくては打線の破壊力も増してこない。広島が最下位から急浮上した一因に、バティスタの存在が挙げられる。こちらはドミニカに作ったカープアカデミー出身の27歳、推定年俸は4000万円に満たない。そろそろ、抜本的に強力な獲得ルートを確立しなければならない時期にきている。

 岡本の打順降格というカンフル注射は当面、効果があったようだが、それだけでチームの現状は好転しない。5日の楽天戦では、同点で迎えた終盤8回に毎度おなじみの「投壊」を露呈する。ピンチでマウンドに送った吉川光がストレートの四球で傷口を広げた挙句に、代わった鍬原まで2つの押し出し四死球で敗戦を喫した。

 指揮官は4、5月をチーム整備のテスト期間と位置づけ、この交流戦からメンバーを固定して戦う青写真を描いていた。しかし、現実はひとつの治療を施しても、また新たな場所から病巣が発見されるという惨状が続いている。現場だけでなく、チーム編成まですべてを任される全権監督は、どこで浮上のきっかけをつかみ、どう反転攻勢を仕掛けていくのか? 名将の悩みはまだまだ晴れそうにない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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  • 『悩み多き者よ、時代は変わっていく』か。
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