SoundCloud、次の狙いはマネタイズ強化? Repost Network買収の背景に迫る

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2019年06月09日 07:01  リアルサウンド

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 5月23日、SoundCloudがクリエイターの収益化に向けて著作権管理と音楽配給を行なうサービスRepost Networkを買収した。SoundCloudといえば、ユーザーが投稿した音声や音楽を無料で聴くことができる音楽共有サービスだ。気軽に楽曲をアップデートしたり聴くことができる利便性から、多くのミュージシャンが音源の共有に利用し、チャンス・ザ・ラッパーをはじめとしたスターが生まれるケースも多々ある。


 とはいえ、一時期はサイトの閉鎖が噂されるほどの低迷期を迎えたこともあるSoundCloud。本稿では、同サービスが再び軌道にのった経緯からRepost Network買収までの背景に迫るべく、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。


(参考:リアーナやビヨンセが被害に 音楽ストリーミングによる違法アップロードへの解決策は?


「日本では無料の音楽配信サービスとして利用されることが多いSoundCloudですが、実はサブスクリプションにも力を入れています。それは、リスナー向けの音楽聴き放題サービスとは異なり、アーティストやクリエイターに向けられたもの。例えば、マネタイズするためのツールや、プロモーションツールが活用できるようになったり、予約投稿や無制限の楽曲アップロードなどもできます。そういった機能が充実しているため、ラップミュージックやトラップ、ローファイヒップホップ、ダンスミュージックなどを制作しているアーティストを中心に人気が高いサービスになっているんです。


 会社として収益の面で低迷した時期もありましたが、インディーアーティスト向けのツールや機能を増やしていったことで再び軌道に乗り始めました」


 現在はインディーアーティストに向けた機能に注力しているというSoundCloud。では、Repost Networkを買収した背景は何だったのだろうか。


「Repost Networkは2015年に創業した会社です。もともとは、SoundCloudを専門に招待制でアーティストのプロモーションやディストリビューション、マーケティングツールを提供していました。昨今ではSpotifyやApple Musicでもサービスを提供していましたが、やはり彼らの強みはSoundCloud内でのマーケティングツールです。


 現在、音楽配信サービス全体が、インディペンデントなアーティストのマーケティングやマネタイズの向上に力を入れている状況です。SoundCloudも同様に、クリエイターやインディーアーティストに向けた機能を揃えている段階といえるでしょう。おそらくさらなる発展を目指すため、Repost Networkを買収したのだと思います。Repost Networkが提供していたサービスを、SoundCloudのクリエイターがアクセスできるようにする狙いがあるのではないでしょうか。


 今回の買収によって、SoundCloudでのマネタイズ方法の選択肢が広がると思います。例えば、プレイリストを活用して楽曲の再生回数を増やしたり、広告を付けたり。アーティストやレーベルが収益をあげられるような仕組みを作り、SoundCloud内でマネタイズのできるアーティスト活動ができるようになっていくでしょう。日本では、まだまだアーティスト活動の軸としてSoundCloudの活用が普及していない状況ですが、日本のインディペンデントなアーティストもSoundCloudに抵抗感を抱かずマネタイズを目指して試していけば、活動の選択肢が広がるのではないでしょうか」


 SoundCloudは、インディーアーティスト/クリエイター向けのマネタイズにのりだしている一方、Appleも音楽スタートアップ会社・Platoonを買収して新人発掘/育成に注力し始めている。音楽業界全体として、インディーアーティスト向けの機能導入に注目が集まっているようだ。また、マネタイズ、マーケティング、発掘/育成など……どこにフォーカスしたサービスを展開するかが、各サービスにおいて新規ユーザー獲得の重要な鍵を握ることになるかもしれない。


(北村奈都樹)


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