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「参入したら決して逃げない」――エンジニアの誇りを持ち続けるCEOのこだわり

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2019年06月10日 07:02  @IT

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写真「22年たっても最初と同じ問題と格闘している」と笑顔で話すシューマッハ氏
「22年たっても最初と同じ問題と格闘している」と笑顔で話すシューマッハ氏

 世界で活躍するエンジニアの先輩たちにお話を伺う「GoGlobal!」シリーズ。前回に引き続き「Lakeside Software」の創業者兼最高経営責任者(CEO)、Michael Schumacher(マイケル・シューマッハ)氏にお話を伺う。シューマッハ氏が考える「エンジニアリングで大切なもの」とは何なのか。



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●厳しく、理にかなった顧客の要求に鍛えられた



 Lakeside Softwareの名前の通り、湖の対岸にオフィスを借りて業務を始めたシューマッハ氏。皆が悩んでいる課題を解決するため、そしてより便利にするため、とにかくソフトウェアを販売したという。最初の顧客となったGM(ゼネラルモーターズ)からはさまざまなことを学んだと同氏は語る。



シューマッハ氏 GMの要求は大変厳しいものでしたが、どれも非常に理にかなったものでした。われわれは多くのことを学べたと思います。VMwareが仮想化のテクノロジーを発表したのもこのころです。「リソースシェアという大きな問題がこれで解決できる」と感動したことを覚えています。ただ、それから10年たつ今も容量の問題はついてまわります。私は従業員に「この業界で22年間仕事をしているが、いまだに最初のころと同じ問題と格闘している」と話しています(笑)。



 その後Lakeside Softwareは2012年のロンドンオフィスの開設を皮切りに、グローバル展開を開始。当時、ヨーロッパにも顧客がいたが米国とそれ以外の地域ではビジネスの質は全く違うため「とにかく現地に信用できるスタッフがいなければ、どうにもならない」と拠点展開は慎重に行ったという。



●東京にオフィスを設立するために必要だった3つの取り組み



阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 東京にオフィスを設立するか、長い期間悩まれたと聞いています。



シューマッハ氏 理由は3つあります。1つ目はローカライゼーション(地域最適化)です。これが十分でないとサービスが展開できないと考えていました。当社の製品はITエンジニアが顧客ですから、日本のエンジニアとスムーズにコミュニケーションが取れなくてはなりません。翻訳も簡単ではありませんし、1回解決すればそれで終わり、といった種類の問題でもありません。継続して対処できるような方法が必要になります。



 2つ目はチームです。私が経験から学んだ、どの地域においても最も大切なことは「最初のコアチームを作ること」です。最初に3人の「ビジネスの核となる優秀なチーム」を作ることができれば、成功は間違いありません。逆にこれができないと失敗します。



 3つ目は、日本市場は、世界の他の地域に比べて、非常に要求度合いが高いということです。日本の顧客は、全ての面において「サービスが卓越していること、そしてそれを実現するための努力」を求めます。私たちが扱っているようなソフトウェアは、非常に頻繁に製品の機能が変わりますから、ある一定の品質への保証や、エンジニアリングに対するサポート、カスタマーサポートなどについて、顧客の信頼を得るには時間がかかります。



 この3つを全て同時に満たさないと、日本市場では成功できない。幸いなことに当社はこの3つともしっかりそろったので日本オフィスをオープンしました。



●「考えが変わったので日本での仕事はやめます」ということは、決してできない



阿部川 意思決定が早いことは、ある意味で米国企業の良いところではありますが、例えばそれが、市場参入してきた途端に撤退、ということになると、信用できないという評価につながります。だからこそあなたは長い時間をかけて、日本市場への進出を準備して来られたのですね。



シューマッハ氏 はい、決して失敗は許されませんから。当社は米国の企業というよりはグローバル企業だと思っています。私たちの仕事はチームワークですし、何か一つが欠けてもビジネスの成功はあり得ません。世界中のどの地域でビジネスをするにも、その市場に対するコミットメントがないと成功しません。これはとても難しいことですが、日本市場はそれに見合うだけの非常に大きく有望なマーケットです。



阿部川 優秀なチーム構築のためには良い人材を見つける必要がありますが、どのようにしてそういった人材を採用したのですか?



シューマッハ氏 多くの従業員と会っていただきます。一人でも採用に反対する従業員がいたときは採用しません。長く勤めていただく人を雇うのですから、間違うことはできません。ですから能力などで優れていたとしても、採用に至らなかったこともあります。しかしそれでよいと思っています。特定のスキルが優れているからというだけで人を採用するのではなく「人間としてどうか」ということを見たいと思っています。



阿部川 よい人材を、的確なタイミングで見つけることは至難な業ですよね。



シューマッハ氏 おっしゃる通りです。ですが、あなたがわが社で働くことを想像してみてください。頼みの同僚たちは14時間違うタイムゾーンで仕事をしています。母国語は英語ではありません。その市場での製品の知名度は皆無で、メンバーを雇わないといけないし、サービスを売らないといけないし、システムエンジニアリングもやらなければならないし、マーケティングのプランも作らなければならない大変な仕事です。時間をかけてでも優秀な人を見つけるべきだ、ということはご理解いただけるでしょう。



●バグフィックス後の対応が信頼関係を決める



阿部川 シューマッハさんにとって、仕事の魅力とは何ですか?



シューマッハ氏 難しい問題を解決することです。「最初は全てが不可能だった」という言葉があります。最初、人間は飛べませんでした。人間は馬より早く走れませんでした。夜の暗闇の中で本を読めませんでした。全ての物事は、最初は不可能なのです。



 私の仕事は、朝起きて、不可能と思われている問題を、素晴らしい仲間と解決することなのです。これ以上素晴らしい仕事があるでしょうか! その上顧客は私にお金を払ってくれるのですから(笑)



阿部川 あなたが楽しんでしている仕事が、顧客からしっかり評価されている証拠ですよね(笑)



シューマッハ氏 私たちは顧客に何かを売っているのでありません。私たちが彼らの不可能な問題を解決するから、顧客はそれを買ってくれているのです。



 もちろん、ソフトウェアですからバグはあり得ます。エンジニアにとっては単なるバグかもしれませんが、顧客にとっては大きな問題です。バグフィックスの後、どのように顧客に説明し、対応するかがとても重要なのです。誠実なこと、責任を持って対処することです。問題が起こったときにどのように対応するかで、顧客との信頼関係は決まります。



●学ぶことそのものが人生を楽しいものにしてくれる



阿部川 若い技術者に対して、これからの20年を見据えてアドバイスをお願いします。



シューマッハ氏 幾つになっても新しいことは学べます。学ぶことそのことが人生を楽しいものにしてくれますから。それを前提に、まずは、自分の好きなことをやってください。人生は長いようで短い。好きなことをやらないといけません。



 2つ目に、これは私がそうなりたいと思ってやってきていることですが、世の中に不可能なことは一つもありません。そして成功するかしないかは、あなたがどのような人々を選ぶかにかかっています。エンジニアリングやプログラミングにかかわらず、企業での仕事であれば、どんな人と仕事をするのかがとても重要です。



 偉そうに言っていますが、私もたくさんの間違いをしてきました。そのたびに学び、少しは賢くなってきたと思います(笑)。毎日、死ぬまで何か新しいことを学ぶことはできるものです。だから人生は楽しいのですよ。



阿部川 エンジニアリングの世界には、まだまだ解決しなければならない困難な問題がたくさんあるとは思いますが、どうやったら、市場に顕在していないそのような問題を、探し当てることができるのでしょうか?



シューマッハ氏 テレビットのときに、当時のモデムの大きさはこれぐらいで、(といって手まねで、どれほど大きいかを示し)それを私たちは、2インチ四方の箱に収めることに成功しました。それはまさに驚くべきエンジニアの技です。



 見た人は「こんなに小さな箱が本当にモデムなの?」とびっくりしました。しかしその次にこう言ったのです。「でも誰もこのモデムを買わないだろうな。だって大きすぎて、出張に持ってはいけない。しかもこの形状だと積み上げることもできない」。当時のエンジニアの技術をつぎ込んだものにもかかわらず、顧客の問題を全く解決することはできない代物だったのです。



 どんなに素晴らしい製品でも、顧客の問題を解決できなければ意味がありません。それが解決できるからこそその製品やサービスが長期にわたってひいきにされるのです。問題を解決するとはそういうことでした。ですからとにかく顧客が直面している問題を聞くのです。



 私が考える一番の顧客というのは、悪いところを素直に言ってくれる顧客なのです。私が会議から出ていった後ではなく、そのことを会議中に言ってくれる顧客が、ベストフレンドだと思っています。



●Go's thinking aloud――インタビューを終えて――



 ミシガン州生まれの、明るく活発で、スポーツ好きだった男の子は、夏の太陽を体いっぱいに受けて大きくなった。数学が得意だった彼は、真っすぐに自分の好きなことを追求し、やがて大学でコンピュータエンジニアリングを修める青年へと成長する。好きなことが仕事になることに、何の迷いもなかった。その時以来今まで、実はずっと自分は一介のエンジニアだと豪語する。



 競合がいないことは「ラッキー」ではない。スタートアップ企業の戦略にとっては「必須事項」だ。シューマッハ氏は、好きなことができたのは「ラッキー」と表現するが、それは競合他社がいない市場を見いだし、そこへ適切な製品を投入し、継続的に成長させてきた、エンジニアとしての技術への揺るぎない自信と、経営者としてのビジネスへの駆け引きのしたたかさだ。



 大きな声で大いに語り、そして大きな声でよく笑う。中西部のエンジニアリングオタクは、その後世界12カ国にオフィスを有する、グローバルなソフトウェア会社のCEOとなった。社員と市場に強くコミットする姿勢は、頼りがいのあるまさに「Big Daddy」だ。参入したら決して逃げない。技術としたたかさの上に、チームに対する信念が積み上げられる。2019年、この企業はどんな不可能に、可能をもたらしてくれるだろう。



阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)



アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、レポーター



コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。


このニュースに関するつぶやき

  • そういえば、ミハエルシューマッハは容態良くなってるのかな?と思ってしまった。
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  • 日本にも会社があるんですね。
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