新しい地図はいつだって新人のようなピュアさが漂う 3人が語った“アイドル論”から感じたこと

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2019年06月10日 09:51  リアルサウンド

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 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が新しい地図を広げてから、およそ1年半。3人はSNS、インターネットテレビ『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)など、新たな遊び場を次々と開拓していった。40代にして、ゼロからの出発――。そう聞くと、多くの人が「無謀な冒険だ」と思うかもしれない。しかし、彼らは「必死だ」と言いながらも、その表情は生き生きとしていて、私たちはその姿に元気をもらった。


(関連:稲垣&草なぎ&香取 新しい地図と過ごした、“誰かを喜ばせたい”の想いが連鎖するハッピーな時間


 次は何を見せてくれるのか、一体どこまで突き進むのか、とワクワクしている私たちを見て、彼らはさらに歩みを進めていく。そんな“人の気“の連鎖を生み出せる人を、私たちは“アイドル“と呼ぶのかもしれない。


 6月4日に発売された雑誌『日経エンタテインメント!』(2019年7月号)は、3人が揃って登場。アイドルの最前線を走り続けてきた彼らのアイドル論が語られた。18ページにも渡る、まさに新しい地図のマイルストーンとも言える充実の特集だ。


応援してくださる方の希望の光に
 昭和、平成、そして令和へ。時代が移りゆく中で、アイドルという概念そのものも変化していった。若さが輝く「一瞬の花」だったアイドルが、年齢制限のない存在になっていったのは、間違いなく彼らの活躍によるものだろう。


 稲垣はこうした変化を「時代の先端を行っていたのは僕らじゃなく、ファンの皆さんなんじゃないかな…“新しいコがでてきたからそっちに行こう“じゃなく、“この人の行先をちゃんと見届けたい“みたいな長期戦(笑)」と頬を緩ませる。


 そんな言葉を聞いて、改めてそんなファンの「見届けたい」という期待に応え続けている彼らの力量を再認識する。シンガー、ダンサー、コメディアン、俳優、声優、司会者……そのどれでもあり、どれかだけではないアイドルの仕事。どんなジャンルにも挑戦していくという気概そのものが、アイドルという職業の本質なのだろう。


 時代を超えてアイドルの概念を築いてきた彼らが、次に見据えているのは「いかにちゃんと、応援してくださる方の希望の光になれるか」。自分たちが認められたり、愛されたりする承認欲求を満たす時期を経て、もっと人を喜ばせたいという貢献欲求に変わっているという。


正解がない世界でオンリーワンに
 新しい地図を広げると同時にSNSをスタートした3人。多くの声をダイレクトに受け取ることができる道具を手にしたことで、彼らの活動はよりファンを喜ばせる形へと進化してきた。彼らと同じ時間を過ごすことのできるファンミーティングが実施されたのも、そのひとつ。また、“ななにー“こと『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)も、生放送中に視聴者の声を拾ってコメントを返す風景も見慣れてきた。


 もちろん反響が見えるようになった分、これまで届かなかった声に驚くこともあるようだ。ネタだと思ってした発言を真面目に返されてしまった、というスレ違いもあったと振り返る。しかし彼らのすごいところは、その距離感がすぐにつかめるところ。


 エンターテインメントの世界は正解がない。だからこそ、誰もが戸惑い、迷う中で、彼らはその自由度を楽しんでいる。「ラクはしていられない」(稲垣)、「軽い気持ちじゃダメ」(香取)と厳しい気持ちをベースに持ちながら、「思わぬところに、ちょっとした奇跡が起こる」(草なぎ)と、時々やってくるラッキーに感謝していく。その積み重ねが、彼らをオンリーワンのアイドルにしているのだと伝わってくる。


生きていること自体が冒険
 「ちょっとした奇跡」きっと多くの人が感じているように、彼らの作品はいつも「今だからこそ」というタイミングで巡り合う。『72時間ホンネテレビ』(AbemaTV)のテーマソング「72」では、〈アップするよ〉の歌詞が、彼らのキャリアがアップデートされた瞬間をとらえていたし、〈どうしようもないとこから僕らは始まったんだ〉と歌った映画『クソ野郎と美しき世界』の劇中歌「新しい詩」も、「必死だ」と言いながら泥くさく歩み始めた彼らにピッタリだった。そして最新曲「星のファンファーレ」は、『星のドラゴンクエスト』の応援ソングだが、彼ら自身の生き様を示しているようにも感じられる歌詞に注目が集まっている。


 「考えてみたら“生きている“そのこと自体が冒険じゃないですか。いくつになっても、その時その時、燃えられるものがあるのは幸せだなと思います。僕らは特に、役や歌とのめぐり合わせが、次の表現につながっていくことが多いから」(草なぎ)切り取った時代の気分を、挑戦を続ける彼らにこそ歌ってほしい。演じてほしい。体現してほしい……と、気鋭のクリエイターたちが思うのも納得だ。


 偶然かもしれない。でも振り返ると、必然だったとしか思えない出来事が、彼らの周りには溢れている。香取も、そんな運命的な出会いを実感しているようで「エンタテインメントとしてのつながりやストーリーが僕には結構重要なんです」と語る。


 「#SINGING」についても「配信という音楽の新しいあり方を知らない人にも知ってもらうAmazonMusicのCM曲。作ってくれたのが15歳の、CDを知らない世代のSASUKEくん。歌うのはCDと共に時代を歩んだ僕ら。曲のタイトルも含めて、カンペキだな!って(笑)」。


 「1人だったら途中でくじけてやめちゃってたかもしれないけど、長く続けてきて、今はこれが自分の運命だったのかなって思う」(稲垣)。常に旬を更新するアイドルでいる秘訣は、人、作品、好きなこととの出会いに敏感にいること。そして、何よりもその出会いに感謝し続けることなのだろう。30年もの実績を誇る国民的スターでありながら、いつだって新人アイドルのようなピュアさが漂う3人。新しい時代も、彼らの開拓する力に、それを楽しむ姿に、私たちは元気をもらい続ける。(文=佐藤結衣)


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