MLBで輝く日本人選手、ドジャースの前田健太にもっと注目を!

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2019年06月10日 18:54  ベースボールキング

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ベースボールキング

ドジャース・前田健太
◆ 白球つれづれ2019〜第23回・前田健太

 メジャーリーグでエンゼルス・大谷翔平とマリナーズ・菊池雄星の「花巻東対決」が話題を呼んだ。結果は大谷が本塁打を含む2安打で勝利に貢献、一方の菊池は7失点の大炎上だった。この対決はア・リーグ西地区同士であり今後も数多く見られるだろう。次回は菊地の意地の投球を見たいものである。

 大谷に菊池。続いてヤンキースの田中将大とカブスのダルビッシュ有が登場するのが『NHK BS1』のタイトルバックだ。つまり、日本人メジャーリーガーに対する世の中の注目度は、この4選手に集まっているということなのだろう。だが、「もう一人、忘れていませんか?」と言いたい。

 ドジャースの前田健太。ただいま日本人メジャーリーガーの中で最も輝いている選手と言っても過言ではないだろう。

 日本時間10日現在、7勝2敗で防御率は「3.48」と抜群の安定感でチームの首位快走を支える。中でも5月は無傷の4連勝と快進撃を続けた。投球内容の素晴らしさを示す数値に「WHIP」というものがある。1イニングあたりの四球と安打を足した指標で、同月に前田が記録した数値は「0.67」。これはアストロズのサイヤング投手であるJ・バーランダーに次ぐMLB全体の2位であり、いかに打者を圧倒したかを示す数字でもある。


◆ 4年目の成長

 メジャーに挑戦して4年目、初年度こそ16勝をマークしたが成績は下降線をたどり、注目度では大谷や田中の後塵を拝してきた。だが、自身も正念場と位置付けた今季は一味も二味も違う投球術を身に着けて大変身中だ。

 まずは奪三振を大幅に増やしたチェンジアップの完全マスターである。前田の伝家の宝刀と言えばスライダーだが、これだけではメジャーの強者を抑えきれない。特に左打者と対したときに内に曲がるスライダーに加えて外に逃げる変化球があれば効果的。そこで取り組んだのがチェンジアップだった。打者の手元までストレートと同じ軌道を描きながら鋭く曲がり落ちる。昨年の大リーグ公式サイトで発表された球種別の被打率ランキングでは、チェンジアップの項目で最も安打を打たれなかった投手の1位に前田の名前がある。今季も10日現在の投球回67回1/3に対して奪三振は69個。今や、前田は打たせてとる技巧派から奪三振マシンへと変貌を遂げている。

 さらに、心の改革も今季の前田の投球に大きな変化をもたらしている。「逃げの投球」から「勝負のピッチング」への意識改革と言っていい。以前なら際どいコースをついて料理するのが常道だったが、狙いすぎてカウントを悪くする。四球で歩かせてしまい、その後に一発を食らうという場面も見られた。メジャーも4年目となれば、相手球団や打者の研究も進む。前田ならスライダーに狙いを絞ってくる打者も多い。だが、今季は「スライダーを狙っているのはわかったうえで、そこから何ミリかでも外したスライダーで勝負できている」。

 一般的なスライダーは横に滑るもの。これにタテ変化を加えたものと、一度浮き上がってから変化する3種のスライダーを前田は駆使する。もともと、制球力に定評がある上に、決め球のスライダーの精度が増した。そこに三振を奪えるチェンジアップまで相手打者はマークしなければならないのだから、攻略は容易ではない。このペースでいけば20勝だって手が届きそうだ。


◆ 打者・大谷との初対戦へ

 その前田が日本時間の12日にはエンゼルス戦に先発予定だ。菊池が粉砕された大谷に対して、今季好調の右腕がどんな勝負を挑むのか――。

 二刀流と言えば、前田もまた打撃の良さに定評がある男。広島時代には何度も殊勲打を放ち、メジャーに移籍した2016年の初先発したパドレス戦では左越え本塁打も記録して度肝を抜いた。今季も5月のパドレス戦(2−0で勝利)で7回途中まで12奪三振の快投に、打ってもチームの全打点を稼ぎ出す適時打を記録。打点が公式記録となった1920年以降では史上初の投打ワンマンショーと話題になった。

 今回は指名打者制を採用するア・リーグの主催ゲームとあって、打者・前田の可能性は少ないが、いずれかは大谷との打の競演も見たいところだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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