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金魚すくいの「ポイ」はなぜすぐ破れるのか? 小4が執念で重ねた4カ月間の大実験

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2019年06月14日 16:00  AERA dot.

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写真ポイの枠に様々な種類の紙を張って実験。最も強かったのは?(写真/筆者提供)
ポイの枠に様々な種類の紙を張って実験。最も強かったのは?(写真/筆者提供)
 探究堂には自分が興味・関心のあることをテーマに設定し、個人プロジェクトとしてそのテーマをとことん追究する授業が存在します。

「マイプロジェクト」を略して「まいぷろ」と名付けたこのクラスは昨年秋に実験的にスタートしました。

 既にいくつものプロジェクトが実施されてきましたが、今回はこれまでで最も思い出深かったものをご紹介したいと思います。

「なぜポイの紙は水に濡れるとぐじゅぐじゅになるのか?」

 お祭りの金魚すくいやスーパーボールすくいで使う「ポイ」。ポイに張られた紙がもう少し破れにくければ、もっとたくさんの金魚やスーパーボールを持って帰れるのに。小学4年生のK君が選んだテーマは以前よりずっと気になっていた疑問から生まれました。

「実際にスーパーボールすくいをして、ポイの様子をじっくり観察してみいひん?」

 最初のアクションについて、私から一つ提案してみました。まずは手を動かしてみることで、何か気づくことがあるかもと考えたからです。

【写真】その調子!スーパーボールすくいでポイの様子を大観察!

「うん、やってみたい!そしたら、実験で使うポイが要るね」

 遊びながら実験できるということで、気分はノリノリのようです。

 彼は自分の家の近所にある大型の100円ショップやおもちゃ屋さんを巡り、何とかポイを入手することに成功。いよいよ準備万端整いました。

 実験用に購入したポイは、枠の部分を外してスペア紙を入れ替えることで繰り返し使える仕様になっていました。

 ポイを半分だけ濡らすやり方だと長持ちする?

 一旦ポイ全体を水につけてみた方が破れにくいかな?

 ポイを水に入れる角度は斜めが良い? それとも平行の方が良い?

 普段のお祭りの時とは異なりポイが使い放題なため、心置きなくいろいろなパターンを試すことができます。

 実験を重ねるうちに、彼のスーパーボールすくいの技術がみるみる上達していくのを見て、何とも愉快な気持ちになったことを今でも覚えています。

 ある日、私の知人がわざわざ授業を見学にいらっしゃいました。せっかくなので、K君がこれまで取り組んできたことを自分の言葉で説明してもらうことにしました。

「なるほど、他の紙で試してみても面白そうだね」

 実験の話を興味深く聞いていた見学者の方がおっしゃった一言に、2人とも思わずハッとさせられます。

(たしかにポイ以外の紙の強さはどれくらいなんだろう……)

 気になることは試してみようということで、教室内にあったポケットティッシュとトイレットペーパーを使って早速実験を開始しました。

 見た目が似ている両者ですが、結果は大きく異なりました。

 トイレットペーパーは一瞬のうちに跡形もなく水に溶けてしまったのに対し、ポケットティッシュは300個以上もスーパーボールをすくうことができたのです。

「こんなに差がつくとは思ってへんかったわ。ティッシュをトイレに流したら絶対詰まってしまうやん」

 ティッシュペーパーをトイレに流してはいけないことは情報として知っていたものの、その強度を目の当たりにすることで、私たちは言葉の意味を肌で実感することになったのです。

 この実験をきっかけに、さらに様々な種類の紙を調べてみようということになりました。もしかしたらポイに近い材質の紙を見つけられるかもしれません。

 箱ティッシュ、コピー用紙、トレーシングペーパー、ペーパータオル……。

 私たちは普段の生活で目に留まったものを次々に調査対象に加えていきました。その中でもペーパータオルの検証が特に印象に残っています。

 ペーパータオルは手触りがざらざらで、実験前はすぐ破れてしまうに違いないという予想を立てていました。

 K君はすっかり慣れた手付きで、スーパーボールを次々にすくい上げていきます。

「全然破れそうにないなあ」

 予想に反し、実験を開始してから30分を過ぎてもポイには全く変化が見られません。

 もしかしたら新記録が出るかも……淡い期待が頭をよぎります。

 順調に増え続ける記録と、近づいてくる授業の終了時刻。親御さんがお迎えにくる時間ぎりぎりまですくい続けたスーパーボールの数はなんとまさかの”1千個”に到達しました。

「すげーーーーー!!」

 予想外の結果に驚きと喜びを爆発させていました。

 実はこのペーパータオル実験には後日談があります。

 記録を樹立したことは嬉しいものの、彼は実験が時間切れに終わってしまったことがずっと心に引っかかっていたそうです。しかし、探究堂の授業時間内ではどうにも終わりそうにありません。

「やっぱり結果が気になるから、また今後、家で試してくるわ!」

 ペーパータオルの限界をどうしても知りたくなり、K君は週末の時間を使って自主的に実験の続きを行うことにしました。

 そして検証の結果、2時間かけて“1995個”のスーパーボールをすくうことができたと翌週の授業で報告してくれたのです。

 まさに彼の執念と粘り強さがもたらした成果と言えるでしょう。その後、K君はインターネットでポイの紙の材質と作り方を調査し、自分なりに納得する形でプロジェクトを終えました。

 素朴な疑問からスタートした小さな取り組みが約4カ月間に及ぶ壮大なマイプロジェクトへと発展を遂げました。

 ちなみにポイには和紙が張られているそうです。和紙と聞くと手漉きのイメージが強いですが、ポイの和紙は工場で生産されているとのこと。

 奈良県のとあるメーカーが自社ブランドとしてポイを製造販売し、そのメーカー分だけで国内シェアの約6割に達しているところまで突き止めることができました。

 もしかしたら早い段階で本やインターネットを用いていたら、自分が知りたかった情報にすぐにたどり着けたのかもしれません。しかし、彼は一見回り道にも見えるプロセスの中で、身の回りに存在するさまざまな紙の材質にまで興味を広げ、最終的にはポイの強度の絶妙さを実感することとなりました。

 体験知を積み重ねたからこそ得られた学びなのだと私は考えています。

(文/山田洋文)

※AERAオンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • 「テキヤが儲けるため」と言えば簡単だがポイが弱すぎたら客が怒って帰ってしまい、強すぎたら全部掬われる。商売のためには客の挑戦心を刺激する程度の絶妙な強度が必要な訳だ。
    • イイネ!2
    • コメント 1件
  • 商売にならんからだよ。
    • イイネ!77
    • コメント 0件

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