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葬儀業界のプロに聞く「最期に後悔のない別れ方」ができる家族の共通点

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2019年06月16日 12:02  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真最期の別れを悔いのないものにするには?
最期の別れを悔いのないものにするには?

 みなさん、死ぬ準備はできていますか?



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 たぶんNOだと思います。筆者もそうです。まあ、ふつうに生きていて死を意識する機会ってそうそうないですからね。しかし、いつかは向き合わなくてはいけない現実であるのもまた事実です。



 かつて葬儀業界に身を置き、数多の遺族の方々からお話を伺って記事化する、というお仕事を続けていたライターのIさんに取材しました。人の数だけ人生があり、悔いや悲しみの形も人それぞれ。一度きりの人生を悔いなく送りたい人すべてに読んでほしいです。



●やらなかった後悔はいつまでも残る



――これまでたくさんの遺族を見届けてきた中で、印象に残っていることはありますか?



 「やった後悔よりも、やらなかった後悔は大きい」っていうじゃないですか。あれは本当で、故人に対してやり残した、やってあげられなかったって後悔はずっと残るものです。



 行きたがっていた場所に連れて行ってあげなかった、食べたがっていた好物を食べさせてあげられなかった、ペットに会いたがっていたのにそうしてあげなかった……とか。



――親孝行、したいときには親はなし……ですね。遺族の「してあげなかった後悔」でもっとも多いのは何ですか?



 「感謝の言葉を伝えなかった」です。生きているうちに伝えられなかった、ありがとうって言葉を掛けないまま死なせてしまった、という後悔は非常に多いです。



――伝えない理由ってのは、照れとか恥ずかしさのせいなんでしょうか。



 日本人特有の奥ゆかしさ、ですかね。欧米人のように親愛の情を大っぴらに表さないのがふつうじゃないですか。以心伝心というか、言わなくても愛情は伝わっているはずって解釈して、言葉にしない人がものすごく多い。だから、死後に後悔の念を昇華させるまでに時間を要しますね。



――具体的に、どう昇華させるんでしょう?



 例えば、いろんな品々を棺(ひつぎ)に入れる、とか。故人の好きだった食べ物、大切にしていた服、感謝の言葉をつづった手紙、思い出の写真を切り貼りしたコラージュ、飾り絵などです。



――手紙というのは……歓送迎会の色紙のようにみんなでメッセージを書くとか?



 いえ、一対一のプライベートな手紙ですので封をして誰にも見せません。人に見せるような性格のものではないんです。



――そうやって個々人で故人と向き合っているんですね。悲しさの中に、はかない美しさというか、ピュアな愛情を感じます。



 まあ、現実的な話をすると、「恨みつらみをぶちまけられなかった」ってタイプの悔いもありますよ。例えばきょうだいでえこひいきを受けて育った被害者の方の子どもは、死ぬ前にひとこと言ってやりたかったって恨んでいることもありまして。



――あー、そういうパターンもあるのか……きれい事だけじゃないんですね。そういう場合はどうするんです?



 私の経験したケースですと、荼毘に付すとき、布団に寝かされた状態の故人と恨みのあるお子さんが枕を並べて、一晩一緒に過ごした……というのがありました。で、お子さんが遺体に向かって「なんで父さんはあのとき私にこんなひどいことを言ったんだ」「すごく傷ついたし、腹が立った」って言葉を浴びせ続けるという……。



――それで心は癒されたんでしょうか。



 完全とはいかないまでも、ある程度はご納得いただけましたね。必ずしも涙涙の別れ……ばかりではないということです。



●「後悔のない別れ方」ができる家族の共通項



――後悔のない、幸せな別れ方ができる家族に共通していることってなんでしょう?



 「家族の仲が良い」に尽きます。仲が良い=言いたいことが言える関係性がある=想いは伝わるし、してほしいことも伝わる、というわけです。つまり、日頃の関係性の良し悪しがそのまま死に際に反映されると思ってもらえばOKです。



――家族の仲が悪いと……?



 わりと悲惨。葬式の打ち合わせの最中に遺産相続の話を平気でするとか。「葬儀代はかけずに金を残せ」vs「しっかり弔って見送るのがスジだろう」という言い争いに発展するのはあるあるです。そういう場面に幾度も立ち会っていると、「死に様ってのは生き様そのものだなー」だとつくづく思います。



――100%後悔のない生き方、死に方は無理だとしても、個々人でできる心掛けってありますか?



 ふだんから「思ったことはなんでも伝える」こと。夫婦といえど、しょせんは他人同士がつながったわけで、価値観、文化、習慣、好き嫌い……すべて違います。それを踏まえて夫婦で洗いざらい打ち明けて、話し合って物事を決めていくと、死に際での後悔は少ないです。



――なるほど……死ぬ間際になって慌てて努力するって類のものではなく、日頃からそうしてないとダメですね。



 理想の状態は「I'm OK、You are OK」と言い合えるスタンス。片方だけが我慢するってのではなく、両方が互いに認め合って生きる。



 ちなみに、長年抑圧されていた奥さんって怖いですよ。自己犠牲を重ねて己の感情を殺して旦那さんに尽くしてきたけれど、感謝されることもなく死なれた女性って、悲しみと怒りの感情が同時に押し寄せてくるみたいで……。「死んでせいせいした」って言ってのける方もいますしね。



――怖い……というか、悲しい。



 とくに恨みが残るのが、初期段階の育児を旦那さんが手伝ったかどうか。育児をすべて押し付けていた旦那さんの奥さんって、恨みがずっと続くものです。なので若いパパさんは積極的に育児に関わったほうがいいと思います(笑)。



 近年増加中なのは「死後離婚」(※)する女性。相手の家との関係性を切りたい、従属から解放されたい、同じ墓に入るなんてもってのほか……という気持ちの表れだと思います。



※死後離婚とは:配偶者の死後に「姻族関係終了届」を提出し、義理の両親や義理の兄弟姉妹など「姻族」との関係を絶つことを指す。



●死を意識すると優先順位が変わる



――無数の別れと後悔を目撃してきたIさんが、後悔しないために個人的に心掛けていることはありますか?



 「やると決めたことはさっさとやる」と「ムダなことはしない」の2つです。



 子どもや家族には伝えたいことは伝えています。いつか言おうではなく今日言う。あと、生活面では保険を時々見直す、携帯や通帳やハンコの場所とか、契約書の類の保管場所をメモに残して「私の身に何かあったらここを見ろ」と教えてあります。私がいつ死んでも家族が困らないようにしておきたいので。



――突然事故とかで亡くなると、故人の遺産や所有物がどこにどれだけあるのかが分からなくて、家族がものすごく困るって話は聞いたことがあります。では「ムダなことをしない」というのは?



 薄い付き合いしかしない人間関係の断捨離です。さほど大切ではない人との付き合いは最低限に留めて八方美人にならない。明日死ぬとして、その人と過ごすことが本当にしたいことなのか? って自問自答して、NOであればお断りするようにしています。



――やりたいことはいつかやろうではなく、すぐやる。重要じゃない関係性はほどほどにしておく、ってことですね。



 あと、見た目を気にしなくなりました。女性としていかがなものかって思うこともありますが(笑)。不特定多数に良く見られようとする努力は減りましたね。最低限のマナーとか、TPOに合わせた身なりはもちろんしますが、過剰な化粧とか高価な衣服、貴金属類への興味はありません。そこにエネルギーを使っても仕方ないかなって。



――物事の優先順位が変わってきたってことですか?



 だと思います。それと、うじうじ時間をかけて悩むこともしなくなりました。スパッと決断して進める。ちなみにですが、離婚しようかどうかで悩んでいるなら、サッサとやってしまったほうがいいというのが私の考えです。しようかしまいかで悩み続けて伴侶に先立たれ、こんなことなら別れておけばよかった……って後悔している遺族は多く見てきました。



●口癖は「自殺はするな。勝手に死ぬな。まず親に一言相談しろ」



――人の生き死にには慣れてらっしゃるIさんでも、「さすがにこれはつらかった」ってご経験はありますか?



 自殺で家族を失ったケースです。残された家族は後悔し続け、癒やされない傷を背負ったまま生涯を終えます。自殺された遺族ほど救われない方々はいらっしゃらないんじゃないでしょうか。



――親が子を自殺で失うってニュースは時々見ますけど、親としてこれほど苦しいことはないだろうなって思います。



 発狂したかのように泣き叫ぶ人もいれば、糸の切れた人形のように、食べることも寝ることも服を着ることもできなくなってしまう人もいます。子の後を追って自殺してしまうのではないか心配になることもあるので、かける言葉は細心の注意が必要。なので自殺者の葬儀の場合はベテランが担当することがほとんど。



 私にも子どもがいますが、「何があっても自殺はするな。勝手に死ぬな。どうしてもしたくなったら母(=私)にまず連絡しなさい」と口酸っぱく伝えています。あと、以前とは考え方が変わりました。例えば子どもがイジメとかで不登校になったら、昔は「そんなことでくよくよせずに行きなさい」ってけしかけていたと思うんですが、今はそうはしないと思います。



――ご自身の宗教観の変化ってありますか?



 宗教の良し悪しとか、善悪っていうんでしょうか……そういうのを意識しなくなりました。どの宗教も結局は神聖なものを崇拝するっていう気持ちに変わりはなく、何を信じたっていいんじゃないかと。



――宗教に関しても寛容な気持ちなんですか?



 人に宗教を押し付けるのも、押し付けられるのも不毛な気がします。私は宗教で争うとか議論もしません。「あなたはあなたの信じるものを信じればいいし、それはあなたにとって大切なものなのでしょうね」というスタンスです。



●「人生観がちょっと変わる」イベント



――死を意識して生きるのが大事なことは分かりましたが、現実にはなかなか難しいですよね。



 最近は、「納棺体験イベント」というのがありまして。



――納棺体験イベントですか……そういうのが行われているのは知ってますが、まだ自分事としては考えにくいので行く気にはならないですね。



 人生観がちょっと変わりますよ。棺おけに入って蓋を締め、小窓から外を見ると家族や大切な人に何をしてあげたいか、残りの人生で自分は何をなすべきか……が鮮明にイメージできるものです。



――棺おけから出たあとはどうするんです?



 エンディングノートを書きます。遺言書ではなくってもっと生活に密着したToDoリスト的なもの。水道・ガス・電気・通信の手続き、保険内容や契約書の保管場所、預金通帳と印鑑、断捨離を含めた物の整理、鍵の数と置き場所、家電製品の取扱説明書の整理……自分がいつ死んでも家族が困らないための具体的なタスクを書き出すんです。



――納棺体験イベントって、どんな方が参加するんでしょう?



 女性の方が多いですね。1人ではなく友人同士でいらっしゃることがほとんど。男性は「奥さんに連れてこられた」って人がちらほら。男性自ら進んで「納棺体験イベントに行こう」と考えることは稀なようです。葬儀業界の営業方法の一種でもあるんですが、それはそれとして貴重な体験になるのは間違いないです。無料でやっていることが多いので、ぜひトライしてみてください。ちなみに私もやったことはありますよ。



●印象に残っている故人の見送り方



――これは良かったなとか、印象に残っていることはありますか?



 故人が大好きだった食べ物を通夜の場に大量に持ち込んで、遺族が故人をしのびながらそれを食べて談笑するってのは印象的でしたね。もうひとつ、「何もしない」という見送り方も心に残っています。



――何もしない? それはいったいどういう……?



 そのご家族は一家で病院を経営していて、そこの院長であるご主人が亡くなったのですが、夫婦も親子も日々の忙しさですれ違いばかり。何かを家族そろって一緒にやるってことが全くなかったそうです。旅行はおろか、三度の食事すらすれ違っていたという。



 ご主人が亡くなって「どんな送り方をしたいですか?」とお聞きしたときに、「特別なことはしなくていい。ただ一緒に過ごしたい」とおっしゃったので、あえて何もせず、ご遺体を囲んで家族が普通に食事したり、おしゃべりしたりして一日過ごすってことをしました。



 プランナーは「ようやく家族そろって過ごすことができました。ちゃんと涙を流して見送ることができました」って感謝されたそうです。経験の浅いコーディネーターだと、ついあれをしましょう、これはどうですか、と趣向を凝らしてしまいたくなるものなんですが、こういうやり方もあるということです。



――そんなやり方もあるんですね……。それはそれで落ち着いた、家族だけで過ごすささやかなひとときのような気もします。私はまだ死にたくないですが、いつ何があってもいいようにToDoリスト作成から始めてみようと思います。ありがとうございました!


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  • 歳をとったら道具や洋服を増やさないでほしいですね。
    • イイネ!9
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