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少しでも細く…「日本はやせることへのプレッシャーが強すぎる」 10人の食と身体の物語、写真集に

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2019年06月18日 07:00  ウィズニュース

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写真日本のカラフルな食べ物の写真もおさめられているカトリーヌの写真集=To tell my real intentions, I want to eat only haze like a hermit
日本のカラフルな食べ物の写真もおさめられているカトリーヌの写真集=To tell my real intentions, I want to eat only haze like a hermit

日本にゆかりのある10人に使い捨てカメラを渡して、「食や身体」をテーマに好きなように撮ってもらう――。そんなアートプロジェクトに取り組んだベルギー人アーティストがいます。インタビューを重ね、10人の物語を1冊の本にまとめました。「日本は『やせる』ことへのプレッシャーが強すぎる」と語る彼女に、外国人から見た「やせたい国 ニッポン」の側面を聞きました。

【写真集はこちら】タイトルは「本心を言うと、私は仙人のように霞(かすみ)だけ食べていたい」

「ダイエット」の英語の記事、舞台は日本
アーティストの名前はカトリーヌ・ロングリーさん。小さな頃はぽっちゃりしていて、「身体と食べ物の関係」にずっと興味があったといいます。

作品のテーマを考えていたとき、自然と「食と身体」というテーマが浮かんできました。ネットで「食べ物」「ダイエット」「健康」といった記事を検索していると、英語のニュースなのに、舞台が日本である記事が目立つことに気づきました。

特にカトリーヌの目にとまったのが沖縄の記事でした。ファストフードといったアメリカ式の食生活の影響で、脂質の多い食事が増え、長寿ランキングが下がっていることが紹介されていました。ほかにも、「メタボ」という言葉を知って驚きました。健康診断などでウエストのサイズを測り、食事や生活指導をしているなんて、自分の周りでは聞いたことがありませんでした。

さらに調べていくと、10代の女の子向けの雑誌の切り抜きを見つけました。「155cmのまひろちゃんのリアルスタイル」という女の子の写真とイラストで、ページには「今よりも少しでも細くかわいくなりたいから」というあおり文句が踊ります。モデルの女の子は35kgと紹介され、バストやおなか、腕や太もものサイズも詳細に示しています。

カトリーヌは「これが理想で、このサイズを目指しなさい」というメッセージのように感じました。「体形へのここまでの強いプレッシャーはベルギーでは見たことがありませんでした。なぜだろう?と思ったんです」

3年前、初めて日本にやってくると、まず「どこにでもおいしそうな食べ物だらけ」ということに驚きました。都心の駅の周辺には食べ歩きのできるお店がたくさんあり、思わず立ち寄りたくなる匂いもします。「新しくオープンしたお店」「注目のグルメ」「インスタ映えするスイーツ」など、食べ物の情報もたくさん目にしました。

一方で、テレビや雑誌、ネット記事は頻繁にダイエットや健康的な食事を取り上げています。プリクラには、腕や足を細く見せる機能がありました。
さらに、日本人の20代女性の5人に1人は「やせすぎ」という統計も知りました。食べられなくなったり、食べ過ぎて吐いてしまったりする「摂食障害(拒食症や過食症)」の当事者にもインタビューして、多くの人が食と自身の身体との関係に悩んでいると感じました。

10人の食べ物と身体の物語 手作りの写真集に
この状況を、アーティストとしてどんな風に表現できるのか。6回以上来日してインタビューや調査を重ね、10人に使い捨てカメラを渡し、「食と身体」をテーマに写真を撮るように依頼しようと考えました。

使い捨てカメラを選んだのは、SNSにアップされるデジタル写真やプリクラのように加工や修正ができないからです。

撮ってもらった写真は、現像するまで何が写っているか分かりません。作品にできるかどうか不安もあったといいますが、ふたを開ければ、それぞれの環境や思いによって全く違った写真になりました。それを手作りの本にまとめることにしました。

カロリーゼロ・メタボ・拒食や過食……
この作品の本に登場するのは20代から60代の、日本人や日本に住む外国人の男女10人です。自分の食事に悩んでいたり、お菓子を我慢したり、ヨガに出会って食との向き合い方を変えたり……。さまざまなシーンや思いが切り取られていました。

14歳のときに拒食症となったYukiは、カロリーを測り始めて肉を食べなくなり、だんだんと白米も避けるようになっていきました。
「今では軽度になった」といいますが、「食べられそうにないな」と感じる時にはランチの誘いを断っているそうです。送ってきた写真はいつも同じ色合いのメニューばかりでした。カロリーゼロのコーラ、お茶、スケール…カロリーのあるものが写っていない写真もありました。

ウエストを測られて「メタボ」と分類された56歳のKenichiも、食事指導を受けてだんだんと体重を減らしたことを振り返ります。連日のようにスムージーの写真を撮っていました。

20年にわたり摂食障害に悩んだRikaは、夫と出会ったことで「食」が変わっていったことを打ち明けました。いまは料理上手な夫が彩り豊かな食卓を用意してくれるといいます。
Rikaがつぶやいた「本心を言うと、私は仙人のように霞(かすみ)だけ食べていたい(To tell my real intentions, I want to eat only haze like a hermit)」という言葉が印象的で、カトリーヌは、それを作品のタイトルにしました。

あふれる食と「やせ」の情報、距離の取り方は
今回の作品づくりを通して、小さな頃に体重に悩んでいたカトリーヌは、「食事と身体の関係に不安を抱いているのは、自分だけじゃない」と感じたといいます。そして日本を訪れるたびに、カトリーヌは食べ物そっくりのキーホルダーを買い集めました。その数は600にもなるそうです。

街中やテレビ、ネット、SNSに食べ物の情報があふれ、一方で「やせたい」と思わせるプレッシャーの強いニッポン。食べられそうなほどリアルだけれど、食べられない、食品のミニチュアのキーホルダーが、「その解決策です」と笑います。

カトリーヌの写真集の内容は、一部をホームページで見ることができます。

「太るのが怖くて食べられない」「誰かと一緒に食事をしたくない」と悩む摂食障害の人たちにインタビューしてきた記者自身にとっても、カトリーヌの本は、自分や日本社会の「食と身体の関係」について考えさせるものでした。

「○○ダイエット」「シンデレラ体重」といった「やせ」への情報や、「話題のお店」「SNS映えするよ」と誘惑してくるグルメ情報に対して、どう自分の距離を置いていくのか。
10人の物語を通して、自分と似た境遇を見つけたり新しい考え方に気づいたりして、それぞれが「自分なりの距離のとり方」を模索できればいいなと感じました。

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