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アニメグッズを捨てられ、36年間親を恨み続ける53歳男性… 鴻上尚史が勧めた「恨みを相対化できる唯一の方法」

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2019年06月18日 16:00  AERA dot.

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写真作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
 鴻上尚史の人生相談。高校時代、趣味のアニメグッズを母親に勝手に捨てられた恨みがいまだに消えず、優しくできないという53歳の男性。老い行く両親への怒りをなくしたいという相談者に鴻上尚史が勧めた、恨みを相対化できる唯一の方法。

【相談32】 親への長年の怒りがおさまりません(53歳 男性 薫ラバー)

 僕は小学生ぐらいからアニメが大好きなアニメオタクです。基本は2次元の世界が大好きで、アニメを見ていれば満足。

 貯めたお小遣いで好きなビデオを買ったり、フィギュアを買ったり(あの頃、唯一好きな3次元でした)するのが楽しみでした。

 ですが、母親はそんな僕の趣味を嫌っていました。「そんな趣味、恥ずかしいから捨てなさい」と言われ続けましたが、「お小遣いとバイトで楽しんでいるんだから関係ないだろ」と言い返していました。

 高校2年のある日、家が引っ越すことになりました。僕はフィギュアやビデオを、プチプチを使って、すべて丁寧にくるみ、段ボールに詰めました。

 ところが、新しい家に着いたら、そのビデオやフィギュアたちが段ボールごとなくなっていたのです。母親に問いただすと「来年受験なのに、あんな趣味続けてる場合じゃないでしょ」と開き直っています。父は母に「勝手に捨てることないだろ」と言いながら、「まあ、お前もあの趣味じゃ女にもてないぞ」と。軽くあしらわれました。

 本当にショックで、あの時は、憤りと怒りで狂いそうになりました。そのあと家族と3カ月は口をききませんでした。

 僕は現在53歳です。結婚して妻と二人で暮らしています。やっぱり母の思惑どおりにはアニメ好きはなおらず、妻もアニメ大好きなので、一から買いなおしたアニメとフィギュアを心置きなく部屋に飾っています。

 両親はだいぶ年老いてきて、もうそろそろ介護が必要になるかもしれません。問題は、高校生の時にビデオやフィギュアを捨てられた怒りがまだおさまらないということです。

 いまでも当時を思い出すとあの時の激しい怒りの記憶が蘇るのです。どうしても両親にやさしくできず、実家にもあまり足がむきません。母親からは冷たい息子だとなじられます。自分でも、自分は執念深いのかもしれないと思います。

 恨んでいるのも実は疲れるし、これからの介護を考えると、おきたいです。どうしたら、両親へのこの長年の恨みをなくすことができるでしょうか。鴻上さん、どうかお知恵をお貸しください。

【鴻上さんの答え】

薫ラバーさん。薫ラバーさんは、「いまでも当時を思い出すとあの時の激しい怒りの記憶が蘇る」ということは、母親にちゃんと伝えましたか? 53歳になっても、あなたを許すことはできないんだという気持ちは、正直に話しましたか? 母親の行動を止められなかった父親も、いまだに許してない、ということを伝えましたか?

 捨て台詞でもなく、喧嘩腰でもなく、ちゃんとじっくりと、「あなた達の行動をいまだに許せないんだ。高校生の僕にどうしてそんなことをしたんだ?」「アニメのどこが恥ずかしいんだ?」ということを話し合いましたか。

 もし、とことん話しているのなら、僕にはもう、薫ラバーさんに対するアドバイスはありません。それでも、恨みが晴れないのなら、しょうがないとしか言いようがありません。

 でも、もし、とことん話し合ってないのなら、ただ母親が「あの時はごめんね」だけですませているのなら、そして、それでは薫ラバーさんが納得できないのなら、「どうして高校生の息子を、一人の独立した人格として見られなかったのか?」ということを、徹底的に話し合うべきだと思います。

 まだ、ご両親が元気なら、おそらく最後のチャンスだと思います。介護が必要になったら、ご両親は問いかける対象ではなく、守る対象になってしまって薫ラバーさんの思いは、不完全燃焼で終わるでしょう。

 今、まだご両親の体力がちゃんとあるなら、何時間もとことん話すのです。たまりにたまったものを出すしかないのです。「来年受験なら、何してもいいのか?」「いつまで、子供は親に無条件で従えばいいのか?」「子供のためだと思ったら、何をしてもいいのか?」「ただアニメが嫌いなだけだったんじゃないのか?」「アニメオタクだと世間体が悪いと思っただけなんじゃないのか?」

 薫ラバーさんが、この36年間、ためにためた思いをぶつけるのです。

 ただし、どんなに興奮しても、「両親を責めることが目標」ではなく、「とことん、自分の気持ちを吐き出して、新しい関係を作ることが目標」なのだということは忘れないで下さい。

 母親が元気なら、やがて逆ギレして、「なんで、そんな昔のことを文句言われなきゃいけないんだ。お前はおかしい」とか「アニメオタクは気持ち悪い。捨てて当然」とか言うかもしれません(というか、そういう母親の本音が出た方が健全な話し合いだと思います)。

 どんなに興奮しても、話し合いは続けて下さい。怒って終わったり、決裂したり、飛び出したりしないように。あんまり興奮して話せなくなったら、しばらく時間をおいてもう一度話し合います。

『トーチソング・トリロジー』という映画は見たことがありますか? 1988年の映画ですが、自分がゲイであることをなんとか母親に受け入れてもらおうとする息子と、ゲイを拒否する母親の壮烈な映画です。その議論の徹底した戦いはただ唸ります。

 話して話して、とにかく、薫ラバーさんが納得できるところまでいきましょう。

 母親の意見や態度に最後まで納得できなくても、「これだけ言ったから、まあいいか」となるかもしれません。全然、納得できないと思ったら、納得するまで話し続けましょう。

 僕には、それしか、薫ラバーさんが自分の恨みを相対化できる方法はないと思います。

 薫ラバーさんの怒りが、36年間も続いている理由は、ずっと中途半端に押し殺してきたからだと思います。ずっと気になっていたのに、ちゃんと向き合わなかった結果、心の片隅で怒りは強く頑固に育ったのです。母親と直接話さなければ、自分の記憶と想像力だけが「事件」を大きくするのです。

 薫ラバーさん。どうかこの機会に母親ととことん話してみて下さい。それが、怒りの感情と向き合う唯一の方法だと思います。

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  • どんだけ話しても、忘れたのかとぼけているのか逆切れされて、許せる結果には至っていない。そしていつか介護の果てに最悪の結果になるのだろう。
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