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「CD回収を『仕方ない』って思っちゃう僕らもヤバい」ダースレイダー、電気グルーヴ騒動を斬る!

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2019年06月18日 17:02  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

写真撮影=尾藤能暢
撮影=尾藤能暢

 今年3月、コカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕された電気グルーヴのピエール瀧に、懲役1年6月、執行猶予3年の実刑判決が言い渡された。ミュージシャンとしてのみならず、近年は俳優としても大活躍していただけに、その逮捕は世間に衝撃を与えたが、逮捕の翌日、電気グルーヴの音源の発売元であるレコード会社、ソニー・ミュージックレーベルズは、彼らのCD・映像商品の出荷停止、店頭在庫回収、デジタル配信停止を発表。日本の音楽業界ではもはや通例となっているこの措置だが、電気グルーヴという存在の大きさも相まって、各所で「音楽は誰のものなのか」という議論を呼ぶこととなった。

 そんな中、ネット上ではソニーの対応撤回を求める署名活動も行われ、3月15日から4月10日の27日間で79カ国から6万4,606人の署名が集まった。

 この署名活動の賛同人の一人で、東京大学中退という、ラッパーとしては異色の経歴を持ち、コメンテーターとしても活躍するダースレイダー氏が、世の中にはびこる“思考停止”のヤバさを訴える『ダースレイダー自伝 NO拘束』(ライスプレス社)を上梓した。そんなダースレイダー氏に、自身の病気に対するスタンスと一連の電気グルーヴ騒動について振り返ってもらった。

***

――過去にも多くのラッパーが自伝を出版していますが、ダースレイダーさんの本は毛色が違いますね。

ダースレイダー これは“体調不良本”なんですよ(笑)。もともと、脳梗塞で倒れた時に、自分に何が起きているのかを把握するために書き始めたんです。初体験のことばかりでも、当時の気持ちとか感情とかって、慣れてくると忘れちゃうじゃないですか? 退院後、ライスプレスの編集長に会う機会があって、「本書きませんか?」って声をかけられたので、「実はこういうのを書いていて……」と渡したら本になったという流れです。

――ダースさんは2010年、脳梗塞で倒れ、合併症により左目を失明。1カ月の入院生活を余儀なくされました。ある意味、健康啓発本でもありますね(笑)。

ダースレイダー この本を読んで、健康な人にも病気を追体験してもらえれば、という思いがあります。知っているのと知らないのとでは、構え方も変わってくる。今は自分の健康に問題がなくても、たとえば突然、交通事故に巻き込まれてしまう可能性もある。そういった状況になった時に、どのように受け入れるか。逃げずに受け入れて、前進するマインドを形にしたかったんです。

――ダースさんのトレードマークになっている左目の眼帯も、そういった意思の表れなんですよね。

ダースレイダー 病気を抱えている人への偏見ってあるじゃないですか? パジャマ姿で弱っている的なビジュアルが浮かぶ。でも僕は、派手な眼帯つけて、元気そうにすることで、そういう固定概念を壊したい。病気の人も生きづらくなく、「病気も個性ってことでいいじゃん」みたいなところまで持っていければいいかなって思っています。

――ダースさんが脳梗塞と診断された時、医師から説明を受ける前に、まずは個室で「あなたはもう戻れません。このまま悪化して死にますが、なんとか食い止めましょう」とソラマメ君みたいなキャラが苦渋の表情を浮かべながら朽ちていくビデオを見せられた、というシーンは非常にシュールでしたが、特に序章はHIP HOP的なモノの見方が反映されていますね。

ダースレイダー HIP HOPって、よくHIP HOP GAMEっていうんですが、僕は人生は全部ゲームだと思ってるんです。この本に出てくるいろいろな医者に対しても、“どうやってクリアするか”という感覚でいました。医者と聞くと一概にありがたがってしまいますが、実際には誠実な奴もいれば、うさんくさい奴もいるし、適当な奴もいる。ゲームだったら、冷静に分析できますよね。どんな能力を持っているのか、どんな技を使ってくるのか、といった具合に。権威ある人に自分が知らないことについて一方的に話されると、相手を信じるしかなくなっちゃいますよね? でも、実はそれってすごく怖いことでもある。そうならないためにも、まずは自分のことを知る。たとえば、自分に知識がない場合、人の言うことをどう受け取ってしまうのかっていうことを知っていれば違いますよね。そういう具合に、なるべく一つひとつの状況を自分なりに分析して、ゲーム感覚でクリアしていくのが大事かなと思います。病気も同様で、自分でゲーム的に数値化し、イメージ化してそれをどう乗り越えていくかを考えると、結構楽しくなってくる。重い病気でも、強敵として捉えて、「こいつ強えな〜、なんとかしなきゃ」みたいに乗り越えていく。

 HIP HOP的な考え方で病気を捉えると、自分の中でポジティブに状況をリミックスできるんですよね。しんどかったり、つらかったり、苦しかったりというのは当然なんですけど、経験を経ることによってパワーアップしたり、自分の中でステージが上がるとか、強靭になるという意味での体験ができたと思える。それはHIP HOPを知らない人でも、こういう考え方で病気に向き合えば――というのを記せたと思っています。

――医療に対して思考停止状態になっている人って、実はすごく多いですよね。

ダースレイダー 高校の時、サッカー部の練習で腰を痛めて地元の病院に連れていかれたんですけど、そこがヤブ医者で。「試合出たいか?」って聞かれたので、「出たいです」って答えたら「じゃあ、出ていいよ」って。で、実際に試合に出たら、腰がグキッってなって立てなくなっちゃった(笑)。それで都立の大きな病院へ行ったら、医者に「なんで試合なんか出たんだ‼」って怒られて、「え? だって、前の医者は『出ていい』って言ったよ?」みたいな。その時の思考停止のせいで脊椎分離症になっちゃって、いまだに冬になると腰が悪いし、いろいろな体の機能が停止してしまうオマケがついた。

 セカンドオピニオンの医者でも、みんなそれぞれ言うことが違う。僕は、どんな状況でも、選択肢のある思考方法が重要だと思っています。選択肢は、場合によっては少ない時もあれば、たくさんある時もあると思うけど、選択肢がない状況に自分を置かないっていうのは思考停止を避ける考え方だと思います。

――その思考停止の話に、電気グルーヴ作品の出荷停止、在庫回収、配信停止の撤回を求める署名活動もつながりますよね?

ダースレイダー はい。まず、僕は滝さんや(石野)卓球さんと直接の知り合いではない、 という立場で話しています。瀧さんが犯したことに対して、瀧さんが向き合わなきゃいけないのは、社会の中で生きる人としては当然です。でも、電気グルーヴの作品に関してどう扱うべきなのか? それに対する答えが、回収(出荷停止、在庫回収、配信停止)の一択しかない風潮は思考停止していると思います。本来であれば、売上金全額をダルクのような(薬物依存者の)支援団体に寄付する。もしくは、店頭での販売だけは中止する。プロモーションは行わないなど、ほかにもいろいろな選択肢があったと思うのですが、ソニーは回収一択だった。

 選択肢というのは、プラスとマイナス、それぞれの側面だと思うんです。今回はマイナス面に関しては考えられていて、それで(薬物中毒者の与える悪影響と考えて)回収となった。でも、プラスの面は考えていたのかなって。

 瀧さんに限らず、今後も、不祥事を起こした人を世間から抹殺してしまうのか? 戻ってくるためには償いをするとか治療をするとか、いろいろな方法がありますが、自分の作った作品をを享受するファンがたくさんいるってことは本人のモチベーションになるわけだから、そういう面も検討しましたか? という話です。

――今回の件に限らず、以前からミュージシャンが不祥事を起こすたびに、レコード会社による“自粛”が当然のように行われていますが、なぜ自粛するのか、具体的な理由は明示されません。

ダースレイダー 最初はL’Arc〜en〜Cielっていわれているんですが(筆者注:1997年にドラムのsakuraが覚せい剤取締法違反の現行犯で逮捕。これを受けて、バンドの活動およびシングルの発売中止、旧譜も一時的に回収された)、何か不祥事があった時に作品を回収する動きって、さまざまな選択肢の中から選んだってわけじゃないですよね。「不祥事を起こした人を放っておくとソニーの株価に影響が出る」と言う人もいますが、僕は逆に、こういう時にきちんと選択肢を検討して「弊社は、その選択肢の中から〇〇を選びました」っていうことをアピールできる会社こそ信用に値する会社で、株価も上がるべきなんじゃないかなって思う。そうならないのであれば、日本の社会の問題でもある。世間が会社のそういった行動を評価しないから、会社もマイナスばかりを見てしまう。それは僕らの責任だと思うので、今回声を上げました。回収を「仕方ないよね」って思っちゃう僕らもヤバいよ! っていう。こういう時にきちんと考える会社を評価して、そこの製品を買おうと思わないと、会社側もマイナスばかりを考えてしまう。今回の話は独立した話じゃなくて、社会全体に連動しているんです。

――そういう意味でも、一連のマスコミ報道をどのように見ていましたか?

ダースレイダー マスコミの報道は「何をみんなが見たいか」という写し鏡でもある。瀧さんが釈放された瞬間、ヘリコプターで追っかけたり、髪形の話したり、謝り方がどうとか。そういった報道を「くだらねえ」と言っている人がいるのと同じ数だけ、それを見ている人もいる。そのことを考えなきゃいけなくて、そういう人たちにそうじゃない選択肢を提示しなきゃいけない。

 いろいろな報道があった中から、「俺は瀧の髪形が気になる」っていうのを積極的に選んでいる人がいるなら、「あなたはそういうセンスの人ですね」でいい。でも、今は選択肢を与えられていないし、それにすら気づいてないことが本当に多い。

ダースレイダー 今回、卓球さんがTwitterで世間が「何言ってんだコイツ」っていうような選択肢をどんどん出したことはすごく重要だったと思う。釈放された瀧さんと笑顔のツーショットを出したツイートは決定打で、あの写真をいいと思う人と不謹慎だと怒る人がいる。その時点で選択肢が生じて、健全な状態に近づいている。どちらを選ぶのかは、その人の生き方や考え方ですよね。友達と話をしている時に、「あの写真はないわ」「いい写真だったじゃん」っていう会話が生まれてくる。そういった意味で、卓球さんのツイートは大きな功績を残したと思う。

――メンバーが不祥事を起こしたら連帯責任で謝罪するのが当然、という風潮にも一石を投じました。

ダースレイダー 卓球さんはTwitterで絡んでくる奴らをクランケって呼んでいるんですが、彼らに対して「お前ら、友達いねーんだろ?」「“知り合い”と“友達”は違うよ」ってツイートしていて、瀧さんみたいな境遇になった時に友達がいかに大切かということを教えてくれた。みんな、何かをやらかす可能性ってあると思うんですよ。事故を起こしてしまうとか、意図せず巻き込まれてしまうこともあるし。そういった状況に自分が置かれた時に、支えてくれる友達がいるかいないかで、まったく変わる。「自分に卓球さんみたいな友達がいるのといないのと、どっちがいいの?」「自分が困った時に、叩かれようが何しようが言いたいことを言ってくれる人がそばにいるのといないのとどっちがいい?」という話。僕は「友達いらないよ」って絶対に言えないし、そういう人のほうが多いんじゃないかな。

 卓球さんが笑顔の写真を載せるまでは、「売り上げが、生活が、賠償金が」っていう話ばかりだったけど、そんなことよりも、それらと引き換えられないものを卓球さんは見せてくれたと思う。

後編へ続く/取材・文=石井紘人@targma_fbrj)

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