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バブル状態のマンション等、値下がり始める時期の“見極め方”…すでに水面下で値下げ始まる

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2019年06月20日 06:41  Business Journal

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Business Journal

写真「gettyimages」より
「gettyimages」より

 先日、かなり有名なドキュメンタリー番組の局員ディレクターが取材にやってきた。


「マンションが高くなって、私たちには買えません。どうしてこんなに高くなったのか、局内で打ち合わせをしていても誰もよくわかっていません。なぜ、こんなに高くなっているのですか?」


 以上のような内容の質問を受けた。かなり直球だけれども、業界内でもこれについてわかっていない人が多いので、改めておさらいをしてみたい。


 まず、起点を2008年9月の米リーマンブラザーズの倒産時に置く。あの時、日本国内のエコノミストの多くは「日本経済への影響は軽微だ」的な発言を行っていた。しかし、それは大きな間違いだった。2009年には世界中が不況に突入しているのが明らかになった。「百年に一度の大不況」などという言われ方をした。


 日本では2000年代の半ばごろから始まった不動産ミニバブル(ファンドバブル)で新築分譲マンションの販売価格が高騰していたが、売れ行きは急速に落ち込んでいた。それに世界同時不況が追い打ちをかけたのだ。2009年は春先から独立系の専業デベロッパーが、バタバタと倒産。上場企業だけでその数は2ケタに達した。


 その年の9月、自民党は総選挙で大敗。当時の野党だった民主党が政権についた。そこから後に「悪夢の3年」と呼ばれる民主党時代が始まる。


 一方、中国やアメリカでは不況脱出のために大規模な金融緩和を始めた。民主党政権は、そういう国外の動きを理解できずに円安と株安を放置。日本国内の不況色は強まり、マンションをはじめとした不動産価格はなだらかな下落基調を続けた。経済はずっとデフレ状態。2012年12月、民主党政権は総選挙に敗れた。今に至る安倍政権の始まりである。


 2013年の3月、日本銀行の総裁が交代。中途半端な金融緩和しかしなかった白川方明氏から今の黒田東彦氏に替わった。黒田氏は間髪を入れず「異次元金融緩和」を宣言。アメリカや中国には周回遅れであったが、それまでにない規模の金融緩和を始めたのだ。


 2013年9月、東京五輪開催が決定。明るいニュースに日本中が沸きたった。同時に、五輪開催地の中心である湾岸エリアでは、それまで販売が滞っていたタワーマンションが一気に売れだした。


「東京五輪までは不動産価格が上がる」


 そういった根拠のない都市伝説が囁かれ出したのもこの頃だった。ただ、景気というものは多分に人々の気分である。五輪開催の決定はアベノミクスの進展とも相まって、日本全体の空気を明るくした。そして、日本経済は回復しかけたかに見えた。


●積み上がる不動産担保融資残高


 ところが翌2014年4月、消費税が5%から8%に上がった。これによって、日本経済は再び失速した。すると黒田総裁は10月に「異次元金融緩和第2弾(黒田バズーカ2)」を宣言。さらなる金融緩和を行った。


 具体的には長期金利をゼロに据え置き、市中銀行から国債を大量に買い上げる。さらにETF(上場投資信託)を購入して株価を下支えする。これにより、発行された国債残高の半分は日銀が保有。主な上場企業の筆頭株主は日本銀行となった。さらに、優良企業やリート(不動産投資信託)は0.1%とか0.2%程度の金利で融資が受けられるようになった。普通の人が借りる住宅ローンでさえ、最安は0.4%程度になった。


 日銀はこのように市場に大量のお金を流し込むことで、経済的なデフレから脱却して「年2%程度のインフレに導く」という目標を掲げた。当初この目標は「2年程度」で達成できるとされていたが、6年たった現在も未達である。


 一方、銀行の金庫には利子を生み出さないお金が積み上げられた。一般企業が設備投資を行うため銀行融資を受けやすい状態である。しかし少子高齢化と人口減少でほんの少ししか経済成長が見込めないこの国では、企業の設備投資意欲が盛り上がらない。


 唯一、景気よくお金を借りてくれる相手は、不動産投資を行う人々。あるいはそういう投資家がつくった法人。そんな彼らにお金を貸すことで急速に業績を高めたのが、スルガ銀行だった。そのスルガ銀行のビジネスモデルをときの金融庁の長官が絶賛。不動産担保融資は急速に融資残高を伸ばした。


 一方、住宅ローンが0.5%程度で借りられることになったので、新築マンションの購入予算は2.5%の時代と比べれば2割程度かさ上げされた。


●タワマン爆買い、そして終焉


 折しも、日本はインバウンドが急増する時代を迎えていた。ホテルの稼働率は以前には考えられないくらいに高まった。また「五輪に向けて宿泊施設が足りない」という問題も浮上。首都圏ではホテル建設のブームが始まった。都心ではマンションデベとホテル業者が土地を奪い合う現象も見られ始めた。


 2015年1月、相続税の控除率が変更された。23区内で普通に持家があるレベルの人まで、相続税の心配をしなければいけなくなったのだ。また、多くの富裕層の高齢者が相続税対策を考えるようになった。彼らは基本的に不動産好きである。


「タワーマンションの上層階を購入すれば相続税対策に効果的」


 当時は、実際にその通りだった。タワマンの上層階を1億円で購入しても、相続税の評価額は2000万円程度だった。だから相続税を心配した富裕層が、売り出し中のタワマン上層階をせっせと買い始めたのだ。


 さらに「日本の不動産はまだまだ安い」ということを聞きつけた東アジア系の外国人が、都心エリアのマンションを買い漁り始めた。2016年頃の爆買いは、その対象が化粧品や医薬品だけではなく、マンション市場でも起こっていたのだ。


 こういった要因も加わって2015年と16年は都心エリアを中心とした局地バブルが燃え盛ったといっていい状況だった。


 その後、国税庁が相続税の評価方法を変更する通達を出したり、チャイナショックで危機感を強めた中国当局が外貨の持ち出しを厳しく制限したり、といったこともあって相続税対策と外国人の爆買いは市場から消えた。


 しかし、都心エリアの土地価格は上昇を続けて今に至っている。都心につられて土地の価格が上った城南エリアでも、新築マンションの価格が高騰。しかし消費者が付いてこれず、軒並み完成在庫化する現象が2017年頃から見られ始めた。


 2018年、それでも高くなった新築マンションはそれなりに売れていた。8000万円前後の新築マンションを購入しているのは、パワーカップルと呼ばれる人々。夫婦合わせての世帯所得が1400万円以上。彼らがペアローンを組んで8000万円前後のマンションを買うのだ。低金利の今だからこそ可能な購入方法だ。


 2019年、新築マンション市場の主役は実需層だ。つまり「住むため」にマンションを買う人々。しかし、山手線の内側なら最低でも1億円くらいの予算を用意しないと、家族4人でそれなりに住めるマンションは買えない。山手線の外側の23区内だと、予算は6000万円前後になる。


 6000万円のマンションを独力で購入するためには年収が900万円程度は必要だ。2017年 国税庁「民間給与実態統計調査」によると年収900万円以上は給与所得者の6.35%。ほとんどの人は新築マンションが買えない状態なのだ。だから、市場を見ていても「売れていない」と思える状態。


 つまり需給バランス的には完全な供給過剰。いつ市場価格が下落に転じてもおかしくない。しかし、実際には下がらない。理由はハッキリしている。


 供給側がおおっぴらには価格を下げないからだ。ただ、水面下では値引きをしている様子が窺える。市場を見ていると、値引きに躊躇しないデベロッパーの物件は比較的短期間で完売に至っている。値引きを頑なに拒むデベロッパーの物件は、いつまでも完売しない。


●山高ければ谷深し


 さて、この局地バブルはいつ終わるのだろうか。またマンションを始めとした不動産の価格はいつ下がり始めるのか。


 もっともわかりやすいのは、日銀の金融政策が緩和から引締めに転じた時だろう。かつての平成大バブルは、当時の三重野日銀総裁が「バブル退治」と称して急激な金融引締めを行った結果、見事に弾けてしまった。しかし、日銀が金融政策を引締めに転じる気配は今のところ皆無だ。黒田総裁の任期もあと4年ある。最長4年は今の異次元「緩和」が続くと考えるべきだ。


 前回の不動産ミニバブル(ファンドバブル)はリーマンショックによる世界同時不況の発生で急速に萎んだ。今、中国経済が喘いでいる。アメリカとの貿易摩擦や国内のバブル対策でかなり苦しそうだ。中国がわかりやすいかたちで経済不振になれば、その影響は世界的なものとなるだろう。もちろん、日本経済にも少なからぬ打撃となるはずだ。


 不動産担保融資の残高は、すでに平成大バブルの規模を大きく超えている。不動産価格がハッキリと下落に転じた場合、そのうちの何割かが不良債権化する。無理をして組んだ住宅ローンも、資産価値がローン残高を下回るケースが多発するはずだ。売るに売れない状態。


 山高ければ谷深し。本来の需給関係以外の要因で膨らんだ今回の局地バブル。のちのちの傷を深くしないために、そろそろ緩やかな下降線に入ってもらいたいのだが――。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)


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