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LIXIL経営権争奪戦、議決権行使助言会社が株主を“ミスリード”の懸念

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2019年06月20日 07:41  Business Journal

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写真LIXIL前CEOの瀬戸欣哉氏(写真:日刊現代/アフロ)
LIXIL前CEOの瀬戸欣哉氏(写真:日刊現代/アフロ)

 6月25日の定時株主総会を控え、LIXILグループ(以下、LIXIL)の次期取締役構成をめぐって、潮田洋一郎会長兼CEO(最高経営責任者)の意向を受ける会社側と、瀬戸欣哉前CEOを旗頭に立てた株主側が、水面下でつばぜり合いを激化させている。海外機関投資家が推す瀬戸氏は取締役の一部や旧INAX (LIXILの前身)の企業城下町である常滑市、上級執行役など多くの利害関係者から支持を得ており、会社側よりも多くの信任を得ているように見えるが、議決の行方を左右する波乱要因も浮上している。


 LIXILが株主に送付した株主総会の招集通知に記載された第1〜3号議案を見ると、第1号議案が会社提案の取締役候補8人を選任、第2号議案は会社と株主が共通して推す取締役2人を選任、第3号議案は株主提案の候補6人の選任――となっている。潮田氏対瀬戸・株主連合の相克という構図がはっきりとした議案の構成だ。


●議決権行使助言会社が混迷に拍車をかける


 これに対し、首を傾げたくなるような意見を表明したのは、議決権行使助言会社だ。グラスルイスの意見は、LIXILが提案した取締役候補を推奨し、株主提案からは3人だけを推奨。その理由は「取締役の90%を社外取締役で占めているLIXILの提案のほうが優れている」とごく表面的な理由を挙げている。


 LIXIL提案の候補は全員新任であるため、同社に関する知識がないうえに経営の継続性がない――という株主側の主張に対しては、グラスルイスは「LIXILが提案した候補はすでに社内取締役と意見交換を始めているうえに、社内取締役は定時株主総会後にアドバイザーになる者もおり問題はない」と説明している。


 妙な理屈だ。「臨時株主総会で解任請求を受けた潮田氏らと、それを支持した取締役が影響力を残すとして懸念している」との株主側の言い分を待つまでもなく、会社を私物視する経営者を排除することを目的に潮田氏の解任請求がなされたという経緯を忘れてしまっているかのようだ。利害関係者がそっぽを向いている潮田体制を継承すれば、LIXILが社の内外で求心力を保てるのかどうかも不透明だろう。


 そもそも議決権行使助言会社の情報収集能力には問題があるのではないか。瀬戸氏と協調している伊奈啓一郎取締役について、グラスルイスは「取締役会の内容を外部に漏らすのは守秘義務違反」として問題視しているが、その言い分は腹話術の人形のようにLIXILの立場を代弁しているにすぎない。


 実はLIXILも伊奈氏の振る舞いを守秘義務違反とみて「何らかの法律違反を犯しているとして伊奈氏を排除できないか」と東京証券取引所に相談を持ち掛けたようだ(LIXILはこれを否定している)。これに対し東証は「違反を告発できるような定めはない」としてはねつけたといい、グラスルイスがこうした情報をつかんでいれば、今回のような推奨は出てこないだろう。


 同じく議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、2015年度の株主総会でLIXILの社外取締役だった数土文夫JFEホールディングス特別顧問の社外取締役再任に反対している。「JFEはLIXILの取引先であり、社外取締役としての独立性に問題がある」というのが理由だったが、LIXILは取引関係を否定。念のために筆者も信用調査会社に照会してみたところ「両社の間に取引はない」とのことだった。議決権行使助言会社にはすでに、誤った情報を発信して顧客の判断を誤らせた過去があるのだ。


 企業法務に詳しい香川大学法学部法学研究科の溝渕彰教授は「議決権行使助言会社は世界の議決権の2割を動かす力を持つと言われるが、その情報収集力や意見には問題も多い」と指摘している。


●難しい銀行・生保分の票読み


 波乱要因はそれだけではない。一般の個人株主の場合、議決権行使書には会社側提案に「○」をつけて返送する投資家が多く、これもまさかの結果を招きかねない波乱要因になりうる。しかも委任状に添えられている注意書きがやや紛らわしく、委任状と議決権行使書の返送の仕方によっては、株主の考えとは逆の票としてカウントされてしまう恐れがある。委任状と議決権行使書の送り方について理解があやふやだと、株主提案に賛同したつもりが会社提案に乗ったことになってしまうわけだ。6月11日に瀬戸氏と伊奈氏が「株主提案に賛成する株主の方への注意喚起のお知らせ」と題するプレスリリースを出したのはそのためだ。


 銀行や生命保険会社などの票読みも難しい。これまで企業内で深刻な問題が発生し社内で解決できないケースでは、事業資金の貸し手であり、株式を持ち合ってきた銀行がガバナンスを利かせることも少なくなかった。しかしLIXILのケースでは「銀行に特段の動きはない。銀行から社外取締役を迎えておらず、取締役会で銀行の意見が出るわけでもない」(関係筋)という。


 生保も株式を保有しており、こうした場合は通常、(瀬戸氏を支援する海外機関投資家のような)株主提案ではなく、(潮田氏側の)会社提案に賛同することが多い。「今は瀬戸氏が海外を含めた金融機関を回って、現状や瀬戸氏がCEOに復帰したらどうするのかを話しており、好印象を持ってもらっている」(伊奈取締役)という。


 しかし一般的には、企業が団体保険の解約をちらつかせて、株主総会での支持を要求するケースも少なくないことから、LIXILのケースでも生保の賛同を取り付けられるかどうか予断を許さないとの見方もある。生保は保険契約者の代理人として、契約者の利益を最優先しなければならないが、一方で団体保険を解約されれば保険会社としては収益面でマイナスになるため、苦しい判断を迫られることになるからだ。


 瀬戸氏側は旧INAXの創業家を味方につけ、株主総会の検査役選任を東京地裁に申し立てた。株主総会招集の手続きや決議の方法が適切かどうか、創業家株主を中心とした“選挙管理委員会”に目を光らせてもらおうというのだ。


 LIXILの騒動は、日本の企業統治上のさまざまな問題をあぶり出している。
(文=山口義正/ジャーナリスト)


●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)


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