ホーム > mixiニュース > ライフスタイル > 大事な我が子を将来「引きこもり」にさせないための教育方法…他人事ではない時代に

大事な我が子を将来「引きこもり」にさせないための教育方法…他人事ではない時代に

2

2019年06月20日 19:51  Business Journal

  • 限定公開( 2 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

Business Journal

写真「Gettyimages」より
「Gettyimages」より

 5月28日に川崎市でスクールバスを待っていた小学生やその保護者20人が男に刺され、2人が死亡し、18人が重軽傷を負うという、痛ましい事件があった。


 そして、その4日後の6月1日には、元農林水産省事務次官が無職の長男を刺殺するという事件が起こった。川崎市の殺傷事件を意識し、息子が似たようなことを起こすことを恐れたというような供述をしていると報道されている。


 いずれの事件にも引きこもりが絡んでいることから、引きこもりに世間の注目が集まっている。もちろん引きこもりが犯罪につながるというわけではない。だが、引きこもっている本人が、自信をもって社会に出ていけない自分をもてあまし、苦しんでいるのは紛れもない事実であり、できることなら引きこもらないですむようにするのに越したことはない。


●増え続ける引きこもり

 引きこもりに関する相談件数はこのところ増加の一途をたどっており、深刻な社会問題となっている。


 2015年に内閣府が実施した「若者の生活に関する調査報告書」によれば、調査対象となった3000人あまりのうち49人が広義の引きこもりとみなされた。この調査の対象となったのは15歳〜39歳であり、その人口からみて、全国に54.1万人の引きこもりがいると推定された。


 また、2018年に内閣府が実施した「生活状況に関する調査」によれば、調査対象となった3000人あまりのうち47人が広義の引きこもりとみなされた。この調査の対象となったのは40歳〜64歳であり、その人口からみて、全国に61.3万人の引きこもりがいると推定された。


 これらの調査を併せると、全国に100万人以上の人たちが引きこもっていることになる。ただし、引きこもりというと家からまったく出ない状態をイメージする人が多いかもしれないが、ここでいうのは広義の引きこもりである。


 上述の調査では、「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが、家からは出ない」という人だけでなく、「ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」という人や「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」という人も、広義の引きこもりに含めている。


 このように、引きこもりといっても、家に引きこもってまったく外出しないケースだけでなく、ときどき外出することはあっても、家の外で自由に振る舞えない心理を問題にする必要がある。そこでのポイントは、家の外に人間関係をうまく築くことができないことにある。


 社会に出てから引きこもる場合、職場にうまく溶け込めないことがきっかけとしてよくあげられる。だが、職場に溶け込めない人は相当な数に上るのではないだろうか。職場に溶け込めなくても、プライベートな人間関係があれば、引きこもるようなことはないだろう。家の外のどこにも居場所がつくれないから引きこもるしかなくなるのである。


 そこで重要となるのが人間関係力である。


●人間関係の早期教育の提唱
 
 私は、今ほど引きこもりが社会問題として注目されていなかった1990年代から、引きこもり防止のための「人間関係の早期教育」の必要性を唱えてきた(『子どもに生きる力を!』創元社、など)。そして、そうした問題を深刻に受け止める人たちからの依頼で全国各地で「人間関係の早期教育」を推奨する講演をしてきた。


 幼い子どもを育てている最中の多くの親たちは、まさかわが子が将来引きこもることになるとは想像もしない。そのため、「人間関係の早期教育」など必要ないとみなし、早期教育というと知的学習の早期教育や英会話の早期教育に走りがちだ。


 だが、100万人以上が引きこもっているとなると、けっして他人事ではないのである。子育てしている親は、そのことをもっと深刻に受け止める必要がある。いくら学習塾や習い事に通わせても、引きこもってしまったら社会に出てその知識や才能を活かすのが難しい。何よりも社会に堂々と出ていけない当人が、非常に厳しい心理状況に追い込まれる。


 私が「人間関係の早期教育」を提唱したのは、かつてのように人間関係力が自然に身につく時代ではなくなってきたからである。


 近所の遊び集団が機能していた時代であれば、わざわざ人間関係を学ばせようなどと親が考える必要などなかった。近所の遊び集団は、いろんな年齢の子どもたちで形成されていた。年上の子もいれば年下の子もいる。そのなかでいろんな目線で人とかかわる経験を積んで成長していった。しかも、仲の良い子ばかりでなく、とくに仲が良いわけではない子もいれば、いじめっ子など仲が悪い子がいることもあった。それでもなんとかして一緒に遊ぶしかない。それによっていろんな距離感で人とかかわる経験を積むことができた。


 ところが今は、近所の遊び集団は完全に消失し、学習塾や習い事、そしてゲームの普及なども影響し、とくに親しいほんの数人の同級生と遊ぶくらいの経験しかないままに大きくなっていくのがふつうである。これでは人間関係力は磨かれない。なんとか同質性の高い学校生活は乗り切れたとしても、異質な人間たちとのかかわりが欠かせない社会生活の中で躓くのも当然と言える。


●人とかかわる力が自然に身につかない時代になった
 
 人間関係力など自然に身につくというのが、時代遅れの思い込みにすぎないことに気づくこと。子育てをしている人たちには、そのことを強調したい。


 私がカウンセリングをしてきた人間関係が苦手という学生たちも、大きくなって突然人づきあいに苦痛を感じるようになったわけではない。子どもの頃からなんとなく人づきあいがスムーズにいかない感じがあるのがふつうである。そのような人間関係に対する苦手意識を10代後半や20代になってから克服するのは非常に難しい。うまく克服できない場合、生涯にわたって人間関係に苦しむことになる。


 ゆえに、幼い頃から人間関係の世界に慣れさせることが必要であり、それが自然に行われないため、親が意識してわが子を人間関係の世界に馴染ませる努力をする必要があるのである。


 早期教育というと学習塾や習い事を思い浮かべるのがふつうだろうが、幼児期や児童期には人間の心理発達にとってもっと大事なことがあることを忘れてはならない。人間生活の土台となる人とかかわる力をその時期に身につけておかないと、将来において致命的なことになりかねない。


 子育てをしている最中の人には、そういう時代になったのだということを肝に銘じておいていただきたい。
(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)


    あなたにおすすめ

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定