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終身雇用崩壊時代の「働き方のグラデーション」

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2019年06月21日 07:12  @IT

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 先日、日本経済団体連合会(経団連)の会長やトヨタ自動車の社長などが「終身雇用は難しい」と発言したというニュースが飛び込んできました。経済界の重鎮の発言は影響力が大きく、ショッキングな話題でした。



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 「終身雇用」はこれまで、サラリーマンが安心して働ける「源」の一つでした。定年までの給与が毎月保証される。その結果、安心、安定した生活ができる。だからこそ、余計な心配はせずに、仕事に打ち込めました。



 でも、「終身雇用は難しい」という発言は、これまで抱いてきた「安心、安定した生活ができる。だからこそ、仕事に打ち込める」の根底を揺るがすものです。それだけに、「この先、安定した暮らしができるのだろうか」と不安になった方も多いのではないでしょうか。特に終身雇用が当たり前だった40代以上の方にとっては。



 また、最近では「老後は2000万円足りない」なんて、さらに不安になる情報も出ています。政府は火消しに躍起です。



 私は今、「ある働き方」をしているのですが、この働き方をするようになってから、「もし、終身雇用が崩壊しても、何とか生きていけるだろう」と思っています。



 そこで今回は、終身雇用が崩壊する前に考えたい「これからの働き方」を見ていきます。



●「収入源が複数」という働き方



 改めて、私の今の働き方についてお話しします。私は現在、しごとのみらいというNPO法人を運営しながら、サイボウズというIT企業でも働いています。しごとのみらいが週3日、サイボウズが週2日です。



 それぞれの収入は「1つの企業で、フルタイムで働く」人より少ないのですが(労働時間が少ないですしね)、合計すると平均ぐらいです。



 収入源が複数あるので、もし何らかの原因でどれかの収入が絶たれても、いきなり「ゼロ」にはなりません。半分程度は確保できます。



 このような働き方は、「将来を見据えて」やってきたわけではありません。どちらかといえば、「行き当たりばったり」。その時々で「必要だ」と思うことや、「やりたい」と思うことをやってきたら、こうなっていたのが実情で、いわば「結果論」です。



 それだけに、「オレはこんな働き方を目指してきたぜ」「これが絶対いい方法だ」などと、声高に言うつもりはありません。



 でも、「終身雇用が崩壊する」「老後はお金が足りない」といわれる今、改めて自分の働き方を振り返って「このような働き方なら、1つの会社に依存しているよりもリスクが少なくなるな」「これから目指す働き方の一つとしても、アリなのかもしれない」と思うようになりました。



●今は無理でも、将来のために



 とはいえ、この働き方が一般的ではないことは承知しています。



 実際は1つの会社でフルタイム働くのが一般的ですし、2017年に政府が事実上副業を解禁し、推進するようになったとはいえ、副業を認めている会社はまだ、それほど多くありません。



 また、メインの本業に対してサブがある「副業」ではなく、私のような、複数の本業がある「複業」という働き方を、「やりたい」とは思っても、「どうしたら、その環境が作れるのか分からない」と思っている人も多いでしょう。



 一方で、働く環境を変えようとしても、明日からすぐに「じゃあ、働き方を変えます」というのは、複業にかかわらず難しい。このような働き方を目指すためには、今から、「終身雇用が崩壊しても大丈夫な働き方をしよう」「複数の収入を得られるような働き方を目指そう」と決めて、何らかの準備を始めた方がいいし、「始めること」ならできると思うのです。



 少子高齢化や労働力人口減少という、今までとは違う日本の社会構造の中、人材不足や長時間労働などの問題が起こっています。さまざまな知識や経験を持った人たちが協力することによって、問題を解決していく必要がある今、働き方の常識が、かつてとは変わってくるのは必然です。



 複業に限らず、働き方の多様化が広がることはあっても、「今までのまま」ということは、まずないでしょう。



●今は特別でも、かつてはみんな「複業」していた



 今でこそ「複業」は特別に見えるかもしれませんが、かつては「多くの日本人が複業家だった」と、私は思っています。



 例えば、「兼業農家」がそうです。私は新潟県妙高市という、中山間地に住んでいます。60世帯ほどの小さな集落ですが、かつては多くの世帯が兼業農家でした。



 なぜかと考えてみるに、「自分の食いぶちは自分で作る」というマインドがどこかしらにあったのではないかと思うのです。



 けれども、現在はサラリーマン世帯が増え、米を作っているのはわが家だけです。周りの人は「米作りなんて大変」「買った方が安い」と言います。労力を思えば、確かに買った方が安いのかもしれません。



 でも、私は父親から米作りを引き継ごうと思っています。その理由は、「作った方が安い」からではありません。「自分の食いぶちは自分で作る」というマインドでいたいからです。



 複業とはたぶん、こういうことなんだろうと思います。



●終身雇用が崩壊しても大丈夫な働き方を目指すには?



 終身雇用が崩壊しても大丈夫な働き方を目指すには、幾つかの「要素」があります。



依存しないマインド



 1つ目は、「依存しないマインド」です。



 ここでいう、「依存しないマインド」とは、「会社に所属しない」ということではありません。いきなり独立するのは大変ですし、「自立が大切」とはいえ、人と人とが協力し合うからこそ、私たちは生きていけます。



 働き方の問題ではありません。「気持ちの問題」です。



 「会社が何とかしてくれる」「国が何とかしてくれる」のような、誰かや何かが変えてくれるのを「待つ」のではなく、「目の前の課題は自分で何とかする」というマインドです。



 私は36歳でフリーランスになったとき、「少子高齢化になったとき年金は期待できないだろうから、自分の食いぶちは自分で稼げるようになろう」と決めて、今まで取り組んできました。



 だからといって、すぐに結果が出たわけではありませんが(後述しますが、他の人より長くかかっていると思います)、「マインド」はその時から変わっていません。



 マインドなら、今からでも持つことができます。



一生懸命仕事に取り組む



 2つ目は、「今の仕事に一生懸命取り組むこと」です。



 私の周りには、複業をしている人やエンジニアが何人かいます。彼らには幾つかのパターンがあることが分かります。



 1つは、それが今の仕事か否かに関係なく、「好きなこと、得意なことを複業にしているタイプ」、もう1つは、「今の仕事で評価され、その延長で複業をしているタイプ」。



 好きなこと、得意なことなら、自然と一生懸命になるでしょうし、今の仕事に一生懸命に取り組んでいるからこそ、周りから評価されて、「一緒に仕事しませんか?」と声が掛かるようです。



 ちなみに私の場合は、サイボウズが「複業採用を始める」というタイミングで申し込みました。仕事内容は「得意なこと」でした。



 国も今後、副業、兼業を推進する方向ですし、複業の機会は今後増えてくると思います。気になる仕事や会社が複業をスタートしていないか、常日ごろからウォッチしておくことも大切かもしれません。



コミュニティーに所属する



 3つ目は、「コミュニティーに所属すること」です。



 ここでいう「コミュニティー」とは、「人とのつながり」のこと。最近、改めて「仕事というのは、人とのつながりの中で生まれるんだな」と実感しています。



 というのも、かつての私は、Webを中心に仕事を作ろうとしてきました。自分の考えや意見、スキル、経験などをネット上に書いて、知ってもらう。そして、仕事につなげる……このような行動で、仕事につながった数は少なくありません。この連載だってそうです。



 その反面、「人とのつながり」を軽く見てきました。ひょっとしたらIT業界には、私と同じようなタイプが意外と多いかもしれません。「人付き合いはあまり得意ではない」と。



 けれども最近、いろんな人との交流する中で、「今度、○○やりません?」とか、「今度、××をお願いしたい」などの話につながることが増えてきました。それで、「Webで知ってもらうことも大切だけれど、身近な人に知ってもらうことも大事だな」と思うようになってきたのです。



 この「人とのつながり」は、仕事に絡んだものだけではありません。地域の活動やPTAなどの活動に「めんどうくさい」と参加しない人が多いと聞きます。実は、私も去年までそうでした。



 でも参加してみると、そういう場所こそ「人とのつながりの宝庫」だということに気付きました。もちろん、「ITとか、得意なんでしょ?」と、何でもかんでもやらせようとする人も中にはいるので、付き合い方は気を付ける必要はあるかもしれません。でも、地域活動に限らず、そういう人はどこにでもいますよね。



 大切なのは、「出会いの機会を制限しない」こと。今は、できる範囲で顔を出すようにしています。



 スキルを身に付けることも大事ですが、それ以上に「人の縁」って意外と大事ですよ。



●理想の働き方の構築は数年かかる。だから、今から始めよう



 私が終身雇用の環境から離れた(つまり、会社を辞めた)のは2007年。今の働き方に落ち着き、複数のコミュニティーに所属するまでに、おおよそ10年かかりました。



 私は自分を知ってもらう手段としてWebしか使ってこなかったり、人を巻き込むのが苦手だったりで、ここまで来るのに10年かかってしまいましたが、ビジネスの勘がいい人だったり、人付き合いが得意な人だったら、2〜3年で実現できる人も多いのではないかと思います。



 「いや、自分にはとても……」という人もいるかもしれません。でも新潟の中山間地で始めた私よりも、「仕事」や「縁」を作る環境という意味では、多くの人が条件の良いところにいると思います。



 ひと昔前は、このような働き方は、会社をイチかバチかで辞めてからでないとできませんでした。でも、複業が推進されはじめている今なら、そんな、イチかバチかのリスクを冒さなくても、経験を試験的に重ねることができます。今、複業できる環境が少なくても、いずれそうなります。



 終身雇用が崩壊したとき、会社「だけ」に依存していると、命綱である収入を「パツン」と切られることがあるかもしれません。だからといって、恐れているだけではいい気分で働けません。



 緩やかに着地しつつ、自分らしく働くためには、理想と現実の間を埋めるグラデーションが必要。その選択肢の一つが複業だと思います。



●筆者プロフィール



しごとのみらい理事長 竹内義晴



「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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