「ディオール」メンズ、ダニエル・アーシャムとのアーティストコラボで"今"を提示

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2019年06月22日 18:42  Fashionsnap.com

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ディオール メンズ2020年サマーコレクションのフィナーレ Image by: (c)ADRIEN DIRAND
パリ時間で6月21日、「ディオール(DIOR)」メンズの2020年サマーコレクションが発表された。
(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎)

 会場はパリ左岸の、アラブ世界研究所。このショーのために設置された巨大なテントに足を踏み入れると、やや枯れた色合いのピンクのランウェイが目に飛び込んできた。中央には「D」「I」「O」「R」の巨大なロゴのオブジェが置かれていて、積年の風雨に曝された古代遺跡のように浸食されている。この石像は、現在の考古学を問う作風で知られるアメリカ人アーティスト、ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)が手がけたものだ。

 メンズアーティスティックディレクターのキム・ジョーンズ(Kim Jones)は、ダニエルの「現在は、未来から見た過去である」という考え方に着目。ディオールのヘリテージの要素を引用しつつ、最新の技術と素材をふんだんに使用し、未来でも過去でもない"今"を表現している。
 まず"過去の進化"として目に飛び込んできたのは、フランス語で"斜めのスーツ"を意味をするタイユール オブリークだ。キム・ジョーンズは、ムッシュ ディオールが50年代に作った対角で体を包むようなこのウィメンズ・スーツのディテールを、メンズに引用。今シーズンはスーツはもちろん、コートやブルゾンにも採用している。

 ダニエルとのコラボレーションも見逃せない。透明な素材の上にプリントされた新聞風のデザインは、2000年春夏オートクチュールで発表された「ニュースペーパー」にダニエルが手を加えたもの。ランウェイのオブジェと連動した一部が朽ちかけたベースボールキャップやひび割れたTシャツもある。

 職人の手仕事によるディテールも際立っている。純白のコートやブルゾンにカキ氷シロップをかけたような装飾は、プリーツを施した薄いクレープジョーゼットで、服を飾る花のよう。白地にブルーの筆で描かれたトワル ドゥ ジュイ(18世紀頃の人物や風景をモチーフにした柄)は、京都の職人が手掛けたものだという。

 「アリクス(ALYX)」のマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)が手掛けるバッグは、これまでにも増して魅力的に進化している。ディオールを象徴するサドルバッグは、ボディバッグやウエストバッグに進化。「リモワ(RIMOWA)」との初のコラボレーションもトピックのひとつで、ディオールのオブリークのモチーフが刻まれた特別なバックパックやクラッチバッグは、大きな話題を集めるに違いない。
(c)BRETT LLOYD
 なお、会場には日本からゲストとして岡田健史が来場。J. バルヴィン、ケイト・モス、ニック・ロビンソン、けみお、秋元梢といった、俳優やモデル、アーティストらが顔を揃えた。



ディオール メンズ 2020年サマーコレクション
増田海治郎雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。メンズ、レディースの両方をカバーし、「GQ JAPAN」「OCEANS」「SWAG HOMMES」「毎日新聞」などで健筆をふるう。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。
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