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医師から見た「発達障害」のリアル 7割超が「診断基準の精度」、5割が「過剰診断」を懸念

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2019年06月24日 08:00  AERA dot.

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写真診断する上での、課題や問題点は?(AERA 2019年6月24日号より)
診断する上での、課題や問題点は?(AERA 2019年6月24日号より)
 医療からみた「発達障害」とはなにか。診療経験のある医師100人へのアンケートからは、発達障害について、現状の課題も見えてきた。

【発達障害とは何か?医師100人へのアンケート結果はこちら】

*  *  *
 2008年、国内初の「大人の発達障害」専門外来を開設した昭和大学附属烏山病院(東京都世田谷区)には、いまも全国から受診者が殺到している。

 来院する理由は、大学の学業や研究室でつまずく、就職後仕事のミスや人間関係で悩むなどして、「発達障害だからでは」と本人や家族が疑うケースが多い。

 発達障害とは、先天的な脳機能の特性によって起きる精神的な発達の障害のこと。「自閉症スペクトラム(ASD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」などがあり、重複する場合もある。

 だが、同外来を開設した昭和大学発達障害医療研究所長の加藤進昌医師はこう明かす。

「実際に発達障害と診断するのは、来院者の4割程度です」

 そのほか、精神障害(パーソナリティー障害・適応障害・不安障害など)が4割ほどを占め、「診断なし」となるケースもある。別の医療機関で発達障害と診断された患者が、違っていたというケースも少なくない。発達障害をめぐる医療現場では、近年このような「過剰診断」が問題視されているという。

 AERAが医師専用コミュニティーサイトMedPeerの協力のもと、発達障害の診療経験がある医師100人に行ったアンケートでも、「過剰診断」を問題・課題とした割合は48%に上る。さらに77%が「診断基準の精度」を問題視していた。

 加藤医師も、過剰診断の要因のひとつに、診断基準の不明瞭さがあると考えている。

 国際的な診断基準である米国精神医学会のDSM‐5でも、ASDはスペクトラム(連続性)の概念とされ、障害の境界は線引きされていない。症状は、人の気持ちを理解しにくい、特定の物事にこだわりが強い、感覚刺激に過敏などが挙げられる。

 このASDに含まれる「アスペルガー症候群」は、1980年代に世界的に認知された。知的な遅れを伴わず、社会に出てから症状が顕在化することもあり、大人の発達障害としても高い関心を集めている。

「ASDの主症状であるコミュニケーションの障害は、『人間関係の悩み』など一般的な心の葛藤と混同されがちです。患者は『発達障害』と診断され納得したくなる心理が働き、医師によっては症状の訴えに引っ張られ、過剰診断に拍車をかけていると考えられます」(加藤医師)

 ADHDに過剰診断が多いとの指摘もある。特別支援教育の専門家で医学博士の竹田契一・大阪教育大学名誉教授は言う。

「一部の症状を緩和させる薬があるため、過剰診断に流れやすいとの指摘が近年アメリカで注目されています。日本で明確なデータはありませんが、ADHDの診断例はここ10年でかなり増えている実感があります」

 子どもの場合、LDが隠れていて授業の内容が理解できずにつまらないから立ち歩いているのに、安易にADHDと決めつけてしまうケースもあるという。

 加藤医師はこう助言する。

「受診者の急増に医療現場が追いついていない部分はある。まずは各地の発達障害者支援センターなどで専門の医療機関に問い合わせてほしい」

 アンケートでは、58%の医師が診断後の「治療法・ソリューション」も課題と答えた。「診断そのものは重要でなく、特性にどう対応すればいいかを考える必要がある」(小児科・50代女性)といった医師の声も少なくなかった。発達障害は、根本的に「治る」ものではない。

「医療にできるのは、本人にあわせた環境調整や、社会スキルを身につけるなど生活療法の提案です。成人向けのプログラムの確立は課題でした」(加藤医師)

 烏山病院ではASDを対象にデイケアを10年以上行ってきた。中断率1割以下、3年以内の就職率55%という実績をもとにショートケアプログラムを開発。18年から診療報酬化され、全国の施設で実施されつつある。

 成人・小児の発達障害と25年以上向き合ってきた、横浜市中部地域療育センター所長の高木一江医師も、特性にどう対応するかが重要と考えている。診断後の保護者の反応は「早くわかってよかった」「診断名だけは聞きたくなかった」とさまざま。高木医師は無理に納得させることはせず、保護者の気持ちをくみ取り、育て方や支援の受け方についてアドバイスしてきた。

「診断以上に大切なのは、周囲の人間がその特性により本人が生活上どんなふうに困るかを見極めること、正しい対処スキルを身につけるために必要な手立てをどう伝えるのがよいかを知ることです。本人が自分の特性を知る『自己理解』と、教育機関や職場で自分の特性に合わせた『合理的配慮』を得るための『相談力』を身につけていけば、特性による生きづらさを軽減していけます」(高木医師)

 幼少期から安心できる生活環境で自己理解が進めば、スムーズに助けを求められるようになる。だからこそ、子どもたちにとって最初の社会となる教育現場での支援が欠かせない。

「各地の先生たちと勉強会や情報交換も行っていますが、有効な支援ができるかは『生徒を理解して真剣に向き合う先生の存在』によるところも大きいようです。地方や地域の文化によって差があるのも事実です」(同)

 必要とされる理解と協力とはどんなものだろうか。

「たとえば英語が苦手な人は、現地で辞書ツールを手に『意思疎通の困難さ』を軽減させようとします。現地の人も、片言の英語から理解しようと歩み寄ってくれます。これを発達障害のある人に置き換えてみてください。彼らも不具合な特性を抱えながら、生きづらさを軽減させる手段やスキルを身につけようとしています。社会全体に発達障害とその特性に対する正しい理解と配慮が広がることが大切です。私たち医師も含め、啓発と連携に努めていかなければいけないと痛感しています」

(ライター・豊浦美紀)

※AERA 2019年6月24日号

このニュースに関するつぶやき

  • 職場の50代女性でアスペルガーかな?と思う人がいる。色々当てはまるのが、本人はそれを気付いてない。近くで仕事してるので、言動にイラッとする事がある。 https://mixi.at/aa4ZqjO
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  • 「健常者だって得手不得手あるし同じだよ」とか言う奴に限って当事者を前にすると空気読めないとか簡単なことも出来ないとか文句多いんですよ。勝手なもんだよねー。 https://mixi.at/aa4ZqjO
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