ぶんけいが語る、パオパオチャンネル活動休止の真意「どこよりも視聴者さんに支えられていた」

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2019年06月24日 13:21  リアルサウンド

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撮影=伊藤惇

 約130万人のチャンネル登録者数を誇る、男女の人気YouTuber「パオパオチャンネル」(@小豆/ぶんけい)が、5月いっぱいで無期限の活動休止に入った。飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を広げていたさなか、突然の発表にファンは衝撃を受けたが、「それぞれの目標に向かって、新たなスタートを切る」という前向きな姿勢に、応援の声が殺到。そのなかで、会社経営者の顔も持つぶんけいは、そちらの仕事に注力すると、ひとつの具体的な道筋を語っており、新たな“仕掛け”が待望されていた。


 そして、ぶんけいが2017年に設立し、映像作品を中心としたさまざまなクリエイティブを手がけてきた「トウメイモード」は、この機会に「ハクシ」と社名を変更し、新たなステージに向けて動き始めた。リアルサウンド テックでは、そんなぶんけいのいまと未来に迫るべく、ロングインタビューを企画。YouTuberとしての活動を休止するに至った経緯と、パオパオチャンネルやファンへの熱い思い、そして、活動休止後の活動や経営者としての今後の目標まで、前後編の2回にわたって、その言葉を届けたい。(編集部)


(参考:ありがとう、パオパオチャンネルーー人気YouTuberが活動休止前、最後の動画で見せた“信頼と愛情”の輝き


「視聴者さんに不義理はできないぞ、と」


ーーあらためて「パオパオチャンネル」の活動休止を決断した経緯から聞かせてください。


ぶんけい:あーずー(@小豆)とぼくにはそれぞれの思いがあるのですが、大前提として共通しているのは、「自分の限られた人生で、それぞれの夢をしっかり成し遂げたい!」という思いでした。そんななかで、今年1月にチャンネル登録者数が100万人を突破して、次の目標が必要になるタイミングがあって。数字だけで言えば200万人、300万人を目指すのか、あるいはテレビなどへの露出なのか、とさまざまに考えたのですが、それを叶えるためには、また2〜3年はかかってしまう。そして、次の2〜3年をこのままYouTuberとして生きるのか、それとも新たな挑戦をするのかと、ふたりで悩んでいたんです。


 「YouTuberとしてやりきった」とも思っていないし、周りからしたら「もったいない!」という決断だろうし、当然、新しい挑戦にはリスクも伴います。だから悩んだのですが、結果として、ふたりが同時に「それぞれ、自分の人生を優先させよう」と思えたんです。これが1年後だったら、ふたりが同じ気持ちかどうかわからない。奇跡的なタイミングに思えたし、「これは今なのかもしれない」と。それで、自分たちでも少し早いなと思ったのですが、覚悟を決めて活動休止することにしました。


ーー選択肢として、YouTubeでの活動ペースを少し落として、個々の活動に時間を割いていく、という方向性もあったと思います。けれどそれは、パオパオチャンネルを「保険」にするということだったかもしれない。


ぶんけい:そうなんです。ぼくたちにメリットはあっても、視聴者さんのことを考えると、中途半端に腰を据えておくのは失礼だなと。だから、一度「行ってきます」という形で発表させてもらうほうが、ぼくらとしてもケジメになるし、視聴者さんにも応援してもらえるんじゃないかなと思いました。


 ぼくらのチャンネル自体が、他のどのチャンネルよりも視聴者さんに支えられていて、一緒に作り上げるものだったので、そこで不義理は働けないぞと。もちろん、突然の活動休止で悲しませてしまうことは「不義理」かもしれないけれど、休止する前に、きちんと動画を楽しんでもらえるようにと考えました。


ーー活動休止発表後の1週間は、これまでの活動を振り返って各方面に感謝を伝えつつ、ちゃんと面白い動画が投稿されて、ファンにとってはうれしいものでしたね。そもそもぶんけいさんは、YouTuberとしての活動期間中も会社経営者であって、パオパオチャンネルとのシナジーを狙うこともできたはずですが、明確に切り分けていた印象です。誤解を恐れず言えば、「ズルをしない」という感覚があるように見えました。


ぶんけい:本当にそのとおりで、周りの人にも「もっとYouTubeを仕事に活用しなよ」と言われたのですが、たぶん、それをしていたらいまのぼくたちはいなかったと思うんです。視聴者のみなさんは、そういう打算のないぼくたちの動画を楽しみに見てくれていたので、個人の活動は最初から切り分けていました。今後もその方向性を変えることはまったく考えていないし、みんなが好きでいてくれたパオパオチャンネルをそのまま、冷凍保存したかったんですよね。プリザーブドフラワーみたいに、きれいな形で。


ーーなるほど。気が早い質問で答えづらいかもしれませんが、活動再開を考えると、冷凍保存された、これまでの魅力を失わないパオパオチャンネルでありながら、ふたりが活動を休止した意味=個々の成長も伝えなければいけないという、なかなか大変なことになりそうです。


ぶんけい:そうですね。復活のことはまだまったく考えていないのですが、基本的には外での活動と切り分けるというスタンスは変わらないと思います。ただ、おっしゃるようにぼくらふたりとも新しい経験をして、できることは増えていると思うので、そのあたりは活きてくるんじゃないかなって。例えば、ぼくが休止期間に俳優としてのお仕事をするとしたら、パオパオチャンネルでも演技を使ったネタが入れられるかもしれませんし(笑)。まだまったく考えられないけれど、逆に言うと、すぐに復活してしまっていいくらい、ふたりが早く、それぞれに成功できればいいな、と思いますね。


ーー例えば、新たな区切りとして、これが実現できたら活動休止の目的が果たせる、というゴールのようなものはありますか?


ぶんけい:ぼくとしては、こういう会社にしたい、という理想と、個人の作家としてこういう事ができるようになりたい、というふたつのゴールはある程度、決めています。会社としては、大枠として「人の心をくすぐるクリエイターたちが集まるアトリエ」にしたい。さらに面白いクリエイターに集まってもらうためにも、いい仕事をして、きちんと結果を出さなければいけません。また個人としては、いろいろな軸を持ったからこそ、生み出せるものをつくれる作家になりたいと考えています。例えば、YouTubeはぼくのひとつの軸になりました。それを捨てるわけではまったくなくて、トークの仕事ならラジオとか、文字の仕事なら小説とか、ほかの軸があるからこそつくれるものが生み出せたとき、一段落になるかなと。


ーーなるほど。一つのことを突き詰めるというより、異なるジャンルを高いレベルで横断して、その掛け合わせでいいものをつくると。


ぶんけい:そうですね。マルチな方が活躍している時代の影響もあるかもしれませんが、ぼく個人としては、そういう戦い方をしたいと考えています。ぼくは菅田将暉さんの歌手としての姿がとても好きで、そこに俳優をしているからこその表現力を感じるんです。これも、マルチな活動をしているからこそ生まれる魅力だと考えていて。


ーー確かに、歌を追求して、ボイストレーニングを重ねた結果、身につく魅力ではないのかもしれません。


ぶんけい:そうなんです。それは歌の先生からは教わることができない技術だと思うので。


ーーそうすると今後は、YouTuberとしての活動で培ったものを、まったく別のクリエーションに活かしていく、ということがありそうですね。


ぶんけい:本当に多くのことに活かせると信じています。会社の「人の心をくすぐる」というコンセプトで言うと、YouTubeはまさに「人の心をくすぐり続ける」仕事だと思うんです。しかも、今日アップしたものが、明日には結果が出る/反響がもらえる、というスピード感で。これが映画だったら、1年、2年と時間をかけなければ結果が出ないので、経験値を得るのは難しいのではと。


「絶対に成功しなきゃな、という気持ちになりました」


ーーYouTubeで重ねた目まぐるしいトライ&エラーは、クリエイターとしての大きな財産になりそうですね。活動休止を発表した動画のなかで、「社員も増えてきたなかで、何もしてあげられないことが経営者としてもどかしかった」とおっしゃっているのが印象的でしたが、会社のホームページ等で制作の実績を見れば、けっしてないがしろにしていたわけではにように思えます。この二足のわらじは、ぶんけいさんにとってどんなものでしたか?


ぶんけい:会社に対しては正直、自分の中では「ないがしろにしてしまっていた」という悔しさが強いんです。それはぼく自身、社員に支えられているという実感があったからで。YouTubeだけの活動だったら、もしかすると疲れてしまうこともあったかもしれませんが、そんなときに、社員のみんなが「動画面白かったね!」と褒めてくれたり、悩みがあれば第三者として相談に乗ってくれたりするのが、本当にありがたくて。もちろん、逆もまたしかりで、会社のことで悩んでいるとき、あーずーや仲間のYouTuberに救われたことも何度もあります。どちらも「ありがたい」ぶん、力を注げていない会社に対して、「もっと何かしなければ」というもどかしさが強かったということですね。


ーーそんななかで活動休止を発表したとき、社員のみなさんはどんな反応でしたか?


ぶんけい:驚きつつ、最初に言ってもらった言葉が「おめでとう!」だったんですよ。それは「しんどそうな活動から解放されるね」という意味ではなくて、自分のなかで悩んでいたことが整理できて、答えを出せたことに対しての言葉で。「おつかれさま」でも、「残念だね」でもなく、「おめでとう」という言葉が出てくるのは会社の人だけだろうし、とてもうれしかったです。


ーー一方で、YouTuberの仲間からの反応はどうだったでしょうか。


ぶんけい:やっぱり多かったのは「もっと一緒にやりたかった」ということでしたが、「悔しい」と言ってくれる人もいれば、「ふたりで決めたんだから、頑張ってこい!」と背中を押してくれる人もいて、本当にさまざまでした。こんなに分かれるのか!というのが面白かったですし(笑)、どれも本音だと思うので、本当にうれしかったですね。視聴者のみなさんもそうですけど、これだけ真剣に向き合ってくれた仲間のクリエイターのみんなのためにも、絶対に成功しなきゃな、という気持ちになりました。自分のことだからゆっくりでもいいか、という気持ちもあったんですけどね(笑)。


ーーそして、忘れてはいけないファンの反応ですが、こちらも温かいものでしたね。


ぶんけい:そうですね。正直、どう受け止められるのかと心配していたところもあったのですが、公開して一時間くらい経った時点で温かい言葉がいっぱいだったので、本当によかったです。視聴者さんも、仲のいいクリエイターと同じような距離で見てくれてたんだな、と実感しました。距離が遠いと「なんでやめちゃうの?」になると思いますし、距離が近いからこそ、「頑張ってこいよ!」と言ってもらえたというか。「夢をあきらめていたけど、自分も頑張ってみようかな」と言ってくれる人もいて、それもうれしかったです。


ーー勇気が必要な決断だったからこそ、ファンを励ますメッセージにもなっていたんでしょうね。


ぶんけい:そうだといいなって。みんなにより勇気を与えるためにも、やっぱり早く成功しなくちゃですね(笑)。


ーー活動休止後は、もう翌日からガッツリ会社に、という感じだったのでしょうか?


ぶんけい:そのとおりで、次の日からまったく違う生活でしたね。もちろん、最後の動画を上げたばかりなので、職業病として視聴者さんの反応は気になりましたけど(笑)、動いている手と頭は、仕事に向かっていました。


 スケジュールはまっさらで、まずはBtoBのお仕事ではなく、社内の環境を整えることから始めたんです。社名の見直し、社員の採用、あとはオフィスをどうするかーーと、会社を整理するのが最初の課題で、いまみんながしている仕事を以前より細かく見ていったり、話を聞いたり、まずはそこに時間をかけようと。応援して送り出してもらった身なので、何か進んでいることを早く見てもらいたい、という気持ちで動いています。


ーー飛躍を期して、まずは土台を固めていたということですね。後編では、社名も新たに動き出していく会社の成り立ちや現在の取り組みについて、じっくり伺っていきたいと思います。


※後編は近日中に公開予定です。


(橋川良寛)


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